墓埋法(墓地、埋葬等に関する法律)のお話

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4fe78a2b57370ff4e6d9e43ecfea8e98_s今回は法律のお話です。
日本などの法治国家では、生活している人はすべてのタイミングで法律の管理下に置かれることになっています。……なんて堅い言い方をするのはどうかと思いますけど、たとえば生まれた時には出生届、結婚するときには婚姻届、亡くなった時には死亡届を出さなければいけません。これらはすべて法律で定められており、届け出を怠った場合は罰則や明らかな不利益を受けることがあります。
その中でも、亡くなった方を埋葬することに関する法律が墓埋法(正式名称は「墓地、埋葬などに関する法律」)です。

墓地への埋葬は、日本では宗教的な意味合いが強い儀式でした。明治維新までは、各地のお寺が現代では地方自治体が行っている住民管理に近いことを代行しており、人は亡くなるとそのお寺が管理しているお墓に葬られる、というケースがほとんどでした(江戸や大阪などの都市部の場合。農村などの地方では埋葬にはさまざまなバリエーションがありました)。その一方で、身寄りがないご遺体はお寺の境内に投げ込んで始末してしまう(このようなお寺を「投げ込み寺」といいました)といった、今では考えられないような乱暴なこともありました。
明治時代に入るとお寺は行政機構から切り離され、墓地や埋葬の手続きもお寺の専任ではなくなります。またこの時期になると、ご遺体の埋葬は宗教的なものに加えて伝染病の蔓延を防ぐための衛生的な観点からも推進されるようになっていきます。明治17年(1884年)には、「墓地及埋葬取締規則」「墓地及埋葬取締規則施行方法細目標準」「墓地及埋葬取締規則に違背する者処分方」という法律が制定されます。これは墓地や埋葬についての問題を公衆衛生と治安維持という二つの観点から法律に落とし込んだものです。ここでいう治安維持とは、「誰がいつ、どこで亡くなってどこに埋葬されたか」をきちんと記録に残すということです。これをしっかり決めておかないと、明治時代に制定された民法では、お墓は「先祖崇拝の対象であり、一家の長男がその祭祀を継承する」と決められました。これによって、それまで個人墓だった日本のお墓に家族墓という概念があらわれ、普及していきます。また、衛生面の要請から、土葬ではなく火葬が増えるようになっていきます。
pixta_17547986_S昭和23年に墓埋法が制定された時点では火葬と土葬の比率は五分五分ほどでした。なので法律上は「火葬」と「埋葬」が併記されており、書類上も「火葬許可証」と「埋葬許可証」が並立していますが、現在では99.8%が火葬ですから、ほぼすべての場合に「火葬許可証」が交付されます。

火葬許可証は、医師による死亡診断書を自治体の役所に持っていくことで発行されます。このような手続きは、一般的には葬儀業者が葬儀の一環として代行してくれます。火葬許可証は、実際の火葬だけではなく生命保険の支払いや納骨時の証明書類としても使用します。火葬の後に返却されますから、大切に持っておきましょう。

墓埋法は日常生活の中で触れる法律ではありませんが、葬儀や火葬、埋葬、納骨や建墓の際には必要になってくる場合もあります。その道のプロである葬儀業者や石材店のスタッフに、必要に応じて問い合わせながら法律に沿った形で進めましょう。

墓埋法(墓地、埋葬等に関する法律)のお話

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4fe78a2b57370ff4e6d9e43ecfea8e98_s今回は法律のお話です。
日本などの法治国家では、生活している人はすべてのタイミングで法律の管理下に置かれることになっています。……なんて堅い言い方をするのはどうかと思いますけど、たとえば生まれた時には出生届、結婚するときには婚姻届、亡くなった時には死亡届を出さなければいけません。これらはすべて法律で定められており、届け出を怠った場合は罰則や明らかな不利益を受けることがあります。
その中でも、亡くなった方を埋葬することに関する法律が墓埋法(正式名称は「墓地、埋葬などに関する法律」)です。

墓地への埋葬は、日本では宗教的な意味合いが強い儀式でした。明治維新までは、各地のお寺が現代では地方自治体が行っている住民管理に近いことを代行しており、人は亡くなるとそのお寺が管理しているお墓に葬られる、というケースがほとんどでした(江戸や大阪などの都市部の場合。農村などの地方では埋葬にはさまざまなバリエーションがありました)。その一方で、身寄りがないご遺体はお寺の境内に投げ込んで始末してしまう(このようなお寺を「投げ込み寺」といいました)といった、今では考えられないような乱暴なこともありました。
明治時代に入るとお寺は行政機構から切り離され、墓地や埋葬の手続きもお寺の専任ではなくなります。またこの時期になると、ご遺体の埋葬は宗教的なものに加えて伝染病の蔓延を防ぐための衛生的な観点からも推進されるようになっていきます。明治17年(1884年)には、「墓地及埋葬取締規則」「墓地及埋葬取締規則施行方法細目標準」「墓地及埋葬取締規則に違背する者処分方」という法律が制定されます。これは墓地や埋葬についての問題を公衆衛生と治安維持という二つの観点から法律に落とし込んだものです。ここでいう治安維持とは、「誰がいつ、どこで亡くなってどこに埋葬されたか」をきちんと記録に残すということです。これをしっかり決めておかないと、明治時代に制定された民法では、お墓は「先祖崇拝の対象であり、一家の長男がその祭祀を継承する」と決められました。これによって、それまで個人墓だった日本のお墓に家族墓という概念があらわれ、普及していきます。また、衛生面の要請から、土葬ではなく火葬が増えるようになっていきます。
pixta_17547986_S昭和23年に墓埋法が制定された時点では火葬と土葬の比率は五分五分ほどでした。なので法律上は「火葬」と「埋葬」が併記されており、書類上も「火葬許可証」と「埋葬許可証」が並立していますが、現在では99.8%が火葬ですから、ほぼすべての場合に「火葬許可証」が交付されます。

火葬許可証は、医師による死亡診断書を自治体の役所に持っていくことで発行されます。このような手続きは、一般的には葬儀業者が葬儀の一環として代行してくれます。火葬許可証は、実際の火葬だけではなく生命保険の支払いや納骨時の証明書類としても使用します。火葬の後に返却されますから、大切に持っておきましょう。

墓埋法は日常生活の中で触れる法律ではありませんが、葬儀や火葬、埋葬、納骨や建墓の際には必要になってくる場合もあります。その道のプロである葬儀業者や石材店のスタッフに、必要に応じて問い合わせながら法律に沿った形で進めましょう。