墓石の種類について

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444b12e5919a3de5eb30e7d2c7ed2ad1_s 墓石の種類、といっても、常日頃目にするものではありませんからすぐイメージできる人は少ないのではないでしょうか。とはいえ、墓石のウィンドウショッピング……というわけにもいきません。一番は霊園を見に行くのがいいのですが、やはり人様のお墓を物見高い気分で見物にいくというのは気が引けます。

現在、日本の墓石の種類を分類すると、大きく「和型」と「洋型」にわかれます。和型は皆さんがイメージするような、切石を段々に積み上げたタイプのお墓。「◯◯家代々の墓」と書いてあるタイプですね。洋型はそれ以外の、近年増えてきたさまざまなタイプの墓石です。洋画によく出てくるキリスト教のお墓は、カマボコを切ったような緩やかなカーブを持ったものや、長方形の石を直接芝生に埋め込んだものですが、日本で言う洋型墓石はちょっとちがいます。というより、伝統的な和型墓石の枠に入らないものはすべて洋型、というと大げさですが、和洋で区別するというよりは新旧という区分のほうがしっくり来ますね。洋型であっても日本人がお墓参りに来るものですから、日本のお墓参りの習慣……供花やお線香を上げられるように、花立や香炉を置くスペースがあるのです。

では、それぞれの形式を詳しく見ていきましょう。

和型墓石

さて、和型墓石です。この墓石は日本伝統の……といいたいところですが、このタイプの墓石が一般的になってきたのはせいぜい江戸時代になってから。江戸時代以前は、土饅頭に戒名を書いた木の柱を立てておいたり、石を積んでおく、というスタイルが一般的でした。まだ明確な「墓地」がなかった時代のことですね。
時が下って江戸時代、お寺が住民の戸籍管理を務めることになり、檀家制度(寺請制度)ができてほとんどの人々が地元のお寺と紐づく形になりました。これによって、寺院墓地という形式が登場していきます。

そんな中で登場した、和型墓石の類型を見ていきましょう。

  • 1)和型三段墓

  • 和型三段墓

    和型で最もポピュラーで、今でも現役ナンバーワンなのが、「和型三段墓」です。上台、中台、芝台という三つの台の上に竿石(「~家之墓」などと刻んである大きな石)が載せられているものです。芝台の上には花立や香炉が置かれています。和型三段墓は、お寺に建てられている仏舎利塔や五輪塔をモデルにしているといわれています。仏舎利塔とは、仏様の骨(仏舎利)を安置した塔のこと。ちなみに仏舎利を収めた仏舎利塔は日本のみならず世界中にたくさんあるのですが、はたしてどれくらい本物の「仏舎利」があるのかということになると……ま、それは野暮ということでしょうかね。


  • 2)五輪塔

  • 五輪塔
    五輪塔は仏舎利塔から派生したものです。
    「五輪」とは地・水・火・風・空の、世界を構成する五つの要素を現した塔のことです。日本だと、この言葉は宮本武蔵が著した『五輪書』が有名でしょうか。これの思想は「五重塔」として仏教建築に取り入れられました。京都や東京の古寺でよく見かける五重塔も、仏舎利塔や五輪塔の仲間です。その後、五輪塔は墓石としても使われるようになりました。これは鎌倉時代からですから、和型三段墓よりも歴史がありますね。
    五輪塔の「五輪」は、それぞれ石の形であらわされています。
    一番下が「地輪」。四角い直方体です。次の「水輪」は球形。「火輪」は宝形屋根型という、五重塔の屋根のような形です。その上に半球形の「風輪」、一番上には橋の欄干の擬宝珠(ぎぼし)のような、玉ねぎ型の「空輪」が乗って完成です。寺院に建立されるものは石の表面に「南無妙法蓮華経」「南無阿弥陀仏」「地水火風空」と刻みますが、墓石として使う場合は行わない場合もあります。
    また、関東で一般的な木製の「卒塔婆」ですが、あれは五輪の塔を簡略化したものだといいます。本来ならば五輪の塔を建立してお納めするところを、代わって卒塔婆を納めるというわけですね。

  • 3)大名墓

  • 大名墓 大名墓は、一般的な和型三段墓の上に立派な屋根を載せたものです。その名の通り身分の高い大名専用の墓石でしたが、現代では、誰でも使うことができます。和型三段墓の豪華版、という感じですね。そうそう、「大名墓」という名前だからといって、現存している江戸時代の大名の墓が全てこの形式というわけではありません。最近では著名人のお墓を巡り歩くことを趣味にしている方もいらっしゃいますが、お墓の形式にも目を留めてくださるとよいですね。なお、あくまでも大名家のお墓も文化財ではなく現役の「お墓」。今もご子孫の方が守っていらっしゃることもありますし、お寺もきちんとお守りしているわけですから、くれぐれも失礼のないように気をつけましょう。


  • 4)宝篋印塔

  • 宝篋印塔宝篋印塔(ほうきょういんとう)は、もともとは宝篋印心咒経(ほうきょういんしんじゅきょう)という尊いお経を収めるための宝塔でした。五輪の塔が仏舎利を守るのに対して、宝篋印塔はお経をお守りするための等なのですね。今から千年ほど昔の中国の王様が長寿を祈願したのが始まりで、その後日本にも伝来しました。基部・塔身・笠・相輪で構成され、笠の四隅には隅飾りの突起があります。五輪塔と同じようにお墓としても建てられていますが、庶民から貴族まであらゆる階層の人々に用いられていた五輪塔に比べ、宝篋印塔はより身分の高い人々が建立していたといいます。

    ここまでは仏教ベースのお墓です。日本には仏教に加えて古く神代の時代から信仰の対象になってきた神社、そして神道という教えがあります。神道では、どのようなお墓があるのでしょうか。


  • 5)神道墓

  • 神道式の墓石
    墓石は、外見上は仏教型と大きく変わるところはありません。しかし、竿石の頭が「トキン型(兜巾型)」とよばれる四角錐型になっているところがポイント。兜巾とは、山々を巡る修行者=山伏のかぶる頭巾。その形をかたどったものです。山伏は「修験道」という現在でいう山岳宗教を信じる人々です。神道と仏教、さらに日本古来の山岳信仰が混淆した修験道は山から山を渡り歩き、厳しい自然を踏破すること自体が修行という考え方でした。それだけに、全国のどこを歩いていても怪しまれることはありませんでした。だからこそ、歌舞伎『勧進帳』で義経・弁慶一行は素性を隠すために山伏の扮装をしていたのです。山形県の羽黒山、鳥取県の大山、吉野の大峰山などが礼状とされていました。

    洋型墓石

    洋型墓石_オルガン型さて、問題の洋型墓石です。これは、上記に挙げた伝統的な和型墓石の枠にはまらないもの、すべてです。……といってしまうと話が終わってしまうので、いくつか例を挙げていきましょう。

    寺院墓地が多かった時代から公園型の霊園が増えてきた近年、洋風の墓石も急激に増えてきました。特に、一部の寺院墓地では洋型墓石が建てられない場合もありますから、宗教や宗派を問わない霊園が増えてきた背景には、自分らしい墓石を建てたい、という要望も関係しているかもしれません。
    洋型の墓石には、和型のような宗教的な背景がないので、自由な設計が可能です(キリスト教の場合は、十字架をモチーフに使う場合も多いですね)。もっとも多いのが、竿石を横長の長方形にあつらえるスタイルのもの。碑文を彫り込む正面の部分を斜めにしたアップライト型のものはオルガン型と呼ばれます。竿石を縦長にすれば、和洋折衷スタイルにすることも。竿石の上部をかまぼこ型に丸くすることで柔らかい印象を与えたり、さらに竿石自体を球形にしたり、二種類の色が違う竿石を組み合わせることで、両家墓や夫婦墓をシンボリックに表現することも。イマジネーションに応じて、自由な形の墓石を建てることができます。加工によって費用が変わりますので、石材店にご相談されることをおすすめいたします。

墓石の種類について

投稿日:

444b12e5919a3de5eb30e7d2c7ed2ad1_s 墓石の種類、といっても、常日頃目にするものではありませんからすぐイメージできる人は少ないのではないでしょうか。とはいえ、墓石のウィンドウショッピング……というわけにもいきません。一番は霊園を見に行くのがいいのですが、やはり人様のお墓を物見高い気分で見物にいくというのは気が引けます。

現在、日本の墓石の種類を分類すると、大きく「和型」と「洋型」にわかれます。和型は皆さんがイメージするような、切石を段々に積み上げたタイプのお墓。「◯◯家代々の墓」と書いてあるタイプですね。洋型はそれ以外の、近年増えてきたさまざまなタイプの墓石です。洋画によく出てくるキリスト教のお墓は、カマボコを切ったような緩やかなカーブを持ったものや、長方形の石を直接芝生に埋め込んだものですが、日本で言う洋型墓石はちょっとちがいます。というより、伝統的な和型墓石の枠に入らないものはすべて洋型、というと大げさですが、和洋で区別するというよりは新旧という区分のほうがしっくり来ますね。洋型であっても日本人がお墓参りに来るものですから、日本のお墓参りの習慣……供花やお線香を上げられるように、花立や香炉を置くスペースがあるのです。

では、それぞれの形式を詳しく見ていきましょう。

和型墓石

さて、和型墓石です。この墓石は日本伝統の……といいたいところですが、このタイプの墓石が一般的になってきたのはせいぜい江戸時代になってから。江戸時代以前は、土饅頭に戒名を書いた木の柱を立てておいたり、石を積んでおく、というスタイルが一般的でした。まだ明確な「墓地」がなかった時代のことですね。
時が下って江戸時代、お寺が住民の戸籍管理を務めることになり、檀家制度(寺請制度)ができてほとんどの人々が地元のお寺と紐づく形になりました。これによって、寺院墓地という形式が登場していきます。

そんな中で登場した、和型墓石の類型を見ていきましょう。

  • 1)和型三段墓

  • 和型三段墓

    和型で最もポピュラーで、今でも現役ナンバーワンなのが、「和型三段墓」です。上台、中台、芝台という三つの台の上に竿石(「~家之墓」などと刻んである大きな石)が載せられているものです。芝台の上には花立や香炉が置かれています。和型三段墓は、お寺に建てられている仏舎利塔や五輪塔をモデルにしているといわれています。仏舎利塔とは、仏様の骨(仏舎利)を安置した塔のこと。ちなみに仏舎利を収めた仏舎利塔は日本のみならず世界中にたくさんあるのですが、はたしてどれくらい本物の「仏舎利」があるのかということになると……ま、それは野暮ということでしょうかね。


  • 2)五輪塔

  • 五輪塔
    五輪塔は仏舎利塔から派生したものです。
    「五輪」とは地・水・火・風・空の、世界を構成する五つの要素を現した塔のことです。日本だと、この言葉は宮本武蔵が著した『五輪書』が有名でしょうか。これの思想は「五重塔」として仏教建築に取り入れられました。京都や東京の古寺でよく見かける五重塔も、仏舎利塔や五輪塔の仲間です。その後、五輪塔は墓石としても使われるようになりました。これは鎌倉時代からですから、和型三段墓よりも歴史がありますね。
    五輪塔の「五輪」は、それぞれ石の形であらわされています。
    一番下が「地輪」。四角い直方体です。次の「水輪」は球形。「火輪」は宝形屋根型という、五重塔の屋根のような形です。その上に半球形の「風輪」、一番上には橋の欄干の擬宝珠(ぎぼし)のような、玉ねぎ型の「空輪」が乗って完成です。寺院に建立されるものは石の表面に「南無妙法蓮華経」「南無阿弥陀仏」「地水火風空」と刻みますが、墓石として使う場合は行わない場合もあります。
    また、関東で一般的な木製の「卒塔婆」ですが、あれは五輪の塔を簡略化したものだといいます。本来ならば五輪の塔を建立してお納めするところを、代わって卒塔婆を納めるというわけですね。

  • 3)大名墓

  • 大名墓 大名墓は、一般的な和型三段墓の上に立派な屋根を載せたものです。その名の通り身分の高い大名専用の墓石でしたが、現代では、誰でも使うことができます。和型三段墓の豪華版、という感じですね。そうそう、「大名墓」という名前だからといって、現存している江戸時代の大名の墓が全てこの形式というわけではありません。最近では著名人のお墓を巡り歩くことを趣味にしている方もいらっしゃいますが、お墓の形式にも目を留めてくださるとよいですね。なお、あくまでも大名家のお墓も文化財ではなく現役の「お墓」。今もご子孫の方が守っていらっしゃることもありますし、お寺もきちんとお守りしているわけですから、くれぐれも失礼のないように気をつけましょう。


  • 4)宝篋印塔

  • 宝篋印塔宝篋印塔(ほうきょういんとう)は、もともとは宝篋印心咒経(ほうきょういんしんじゅきょう)という尊いお経を収めるための宝塔でした。五輪の塔が仏舎利を守るのに対して、宝篋印塔はお経をお守りするための等なのですね。今から千年ほど昔の中国の王様が長寿を祈願したのが始まりで、その後日本にも伝来しました。基部・塔身・笠・相輪で構成され、笠の四隅には隅飾りの突起があります。五輪塔と同じようにお墓としても建てられていますが、庶民から貴族まであらゆる階層の人々に用いられていた五輪塔に比べ、宝篋印塔はより身分の高い人々が建立していたといいます。

    ここまでは仏教ベースのお墓です。日本には仏教に加えて古く神代の時代から信仰の対象になってきた神社、そして神道という教えがあります。神道では、どのようなお墓があるのでしょうか。


  • 5)神道墓

  • 神道式の墓石
    墓石は、外見上は仏教型と大きく変わるところはありません。しかし、竿石の頭が「トキン型(兜巾型)」とよばれる四角錐型になっているところがポイント。兜巾とは、山々を巡る修行者=山伏のかぶる頭巾。その形をかたどったものです。山伏は「修験道」という現在でいう山岳宗教を信じる人々です。神道と仏教、さらに日本古来の山岳信仰が混淆した修験道は山から山を渡り歩き、厳しい自然を踏破すること自体が修行という考え方でした。それだけに、全国のどこを歩いていても怪しまれることはありませんでした。だからこそ、歌舞伎『勧進帳』で義経・弁慶一行は素性を隠すために山伏の扮装をしていたのです。山形県の羽黒山、鳥取県の大山、吉野の大峰山などが礼状とされていました。

    洋型墓石

    洋型墓石_オルガン型さて、問題の洋型墓石です。これは、上記に挙げた伝統的な和型墓石の枠にはまらないもの、すべてです。……といってしまうと話が終わってしまうので、いくつか例を挙げていきましょう。

    寺院墓地が多かった時代から公園型の霊園が増えてきた近年、洋風の墓石も急激に増えてきました。特に、一部の寺院墓地では洋型墓石が建てられない場合もありますから、宗教や宗派を問わない霊園が増えてきた背景には、自分らしい墓石を建てたい、という要望も関係しているかもしれません。
    洋型の墓石には、和型のような宗教的な背景がないので、自由な設計が可能です(キリスト教の場合は、十字架をモチーフに使う場合も多いですね)。もっとも多いのが、竿石を横長の長方形にあつらえるスタイルのもの。碑文を彫り込む正面の部分を斜めにしたアップライト型のものはオルガン型と呼ばれます。竿石を縦長にすれば、和洋折衷スタイルにすることも。竿石の上部をかまぼこ型に丸くすることで柔らかい印象を与えたり、さらに竿石自体を球形にしたり、二種類の色が違う竿石を組み合わせることで、両家墓や夫婦墓をシンボリックに表現することも。イマジネーションに応じて、自由な形の墓石を建てることができます。加工によって費用が変わりますので、石材店にご相談されることをおすすめいたします。