墓石のデザインについて

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大別すれば和型と洋型

日本の墓石は、大きく分けると「和型」と「洋型」に分かれます。宗教別にすると、和型は仏教、神道系、洋型はキリスト教系、無宗派というところでしょうか。日本人の宗教観と同様に、以前はほとんどが和型でしたが、近年は洋型を建てる方が増えてきていますね。さて、ではまず和型の墓石から見ていきましょう。

和型_基本型和型墓石

  1. 和型三段墓:和型で最もポピュラーなのが、「和型三段墓」です。上台、中台、芝台という三つの台の上に竿石(「~家之墓」などと刻んである大きな石)が載せられているものです。芝台の上には花立や香炉が置かれています。和型三段墓は、仏舎利塔や五輪塔をモデルにしているといわれています。仏舎利塔とは、仏様の骨(仏舎利)を安置した塔のこと。五輪塔は仏舎利塔から派生したものです。
  2. 五輪塔:「五輪」とは地・水・火・風・空の、世界を構成する五つの要素を現した塔のことです。五つの石を縦に積み重ねた形をしており、お寺でよく見ることができます。京都や東京の古寺でよく見かける五重塔も、仏舎利塔や五輪塔の仲間です。五輪塔が墓石として使われるようになったのは鎌倉時代からですから、和型三段墓よりも歴史がありますね。
    五輪塔の「五輪」は、それぞれ石の形であらわされています。
    一番下が「地輪」。四角い直方体です。次の「水輪」は球形。「火輪」は宝形屋根型という、五重塔の屋根のような形です。その上に半球形の「風輪」、一番上には橋の欄干の擬宝珠(ぎぼし)のような、玉ねぎ型の「空輪」が乗って完成です。
  3. 大名墓:大名墓は、その名の通り身分の高い大名専用の墓石でした。現代では、誰でも使うことができます。和型の竿石の上に笠塔婆を載せることで権威を表しています。和型三段墓の豪華版、という感じですね。
  4. 宝篋印塔:宝篋印塔(ほうきょういんとう)は、もともとは宝篋印心咒経(ほうきょういんしんじゅきょう)という尊いお経を収めるための宝塔でした。今から千年ほど昔の中国の王様が長寿を祈願して建てたもので、その後日本にも伝来しました。基部・塔身・笠・相輪で構成され、笠の四隅には隅飾りの突起があります。五輪塔と同じようにお墓としても建てられていますが、庶民から貴族まであらゆる階層の人々に用いられていた五輪塔に比べ、宝篋印塔はより身分の高い人々が建立していたといいます。
  5. 神道墓:神道の墓石は、仏教型と大きく変わるところはありません。竿石の頭が「トキン型(兜巾型)」とよばれる四角錐型になっているところがポイント。兜巾とは、神道の行者=山伏のかぶる頭巾。その形をかたどったものです。

洋型墓石_オルガン型洋型墓石

さて、洋風の墓石というと、どういうイメージがあるでしょうか? 海外の映画やテレビドラマに出てくるキリスト教のお墓ですか? となると、立方体やかまぼこ型の墓石や十字架が霊園一面に並んで……というものや、緑の芝生の中に白い長方形の墓石が埋め込まれているものになるでしょうか。
日本でいう「洋型墓石」は、ちょっと違います。洋型といっても日本のお墓参りの習慣に合わせるものですから、お線香やお花を上げられるように、花立や香炉を置くスペースが必要です。つまり、基礎部分は和型墓石とあまりかわらず、竿石にあたる部分が違うのです。

寺院墓地が多かった時代から公園型の霊園が増えてきた近年、洋風の墓石も急激に増えてきました。特に、一部の寺院墓地では洋型墓石が建てられない場合もありますから、宗教や宗派を問わない霊園が増えてきた背景には、自分らしい墓石を建てたい、という要望も関係しているかもしれません。
洋型の墓石には、和型のような宗教的な背景がないので、自由な設計が可能です。(キリスト教の場合は、十字架をモチーフに使う場合も多いですね。)もっとも多いのが、竿石を横長の長方形にあつらえるスタイルのもの。碑文を彫り込む正面の部分を斜めにしたアップライト型のものはオルガン型と呼ばれます。竿石を縦長にすれば、和洋折衷スタイルにすることも。竿石の上部をかまぼこ型に丸くすることで柔らかい印象を与えたり、さらに竿石自体を球形にしたり、二種類の色が違う竿石を組み合わせることで、両家墓や夫婦墓をシンボリックに表現することも。イマジネーションに応じて、自由な形の墓石を建てることができます。加工によって費用が変わりますので、石材店にご相談されることをおすすめいたします。

彫刻技術の進歩で、新しい表現を

近年の石工技術は大きく進歩し、これまでの墓石では考えられなかったような彫刻を施すことができるようになりました。特にデザインに制約が少ない洋型墓石では、さまざまな彫刻で自由なデザインを行う例が増えています。
さまざまな手法がありますが、なかでもインパクトが強いのが「影彫」でしょう。中国福建省の職人が編み出した、手仕事による彫刻です。黒御影石などの色の濃い石に、先端にダイヤモンドを装着したペンで少しずつ傷をつけ、石の表面の反射を落としていきます。その濃淡で、絵柄や人物の写真を表現します。レーザーを用いた写真彫刻もありますが、元の写真そのままを転写するレーザー写真彫刻に比べて、影彫は人の目と手を経ることで高い表現力を得ることができます。影彫に加えて彩色することもできますから、モノクロだけではなくカラーの図柄も可能です。
立体彫刻には、平面から図柄を彫り起こして浮き出すように表現する「浮彫」、素材の石の塊から像の全体を彫り出す「丸彫」の二種類があります。浮彫は、一般的な石像やお地蔵さんなどの石仏は丸彫ですね。個人のお墓で丸彫を使うケースはあまりありませんが、海外のお墓では効果的に使われていることも多いとか。今後は日本でも増えてくるかもしれません。
「象嵌」も、よく使われる手法です。ひとつの素材に別の素材で作った図柄をはめ込む装飾法です。さまざまな素材を用いますが、屋外に置かれて風雨にさらされる墓石の場合は、別の色合いの石をはめ込みます。たとえば白い御影石に赤い花崗岩で作った花びらをはめ込んで、鮮やかな花を表現することができます。

墓石の形にもさまざまなバリエーションがありますが、施す装飾によってさらに個性を出すことができます。墓石は価格としても、人生に持つ意味としても大きな買い物。よく考え、ご家族でご相談のうえで、「自分たちだけの墓石」を建立することをおススメします。

おすすめのサイト:
全区画デザイン墓地を建てられる埼玉の墓地・霊園 サンモリッツ・リバティ所沢

墓石のデザインについて

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大別すれば和型と洋型

日本の墓石は、大きく分けると「和型」と「洋型」に分かれます。宗教別にすると、和型は仏教、神道系、洋型はキリスト教系、無宗派というところでしょうか。日本人の宗教観と同様に、以前はほとんどが和型でしたが、近年は洋型を建てる方が増えてきていますね。さて、ではまず和型の墓石から見ていきましょう。

和型_基本型和型墓石

  1. 和型三段墓:和型で最もポピュラーなのが、「和型三段墓」です。上台、中台、芝台という三つの台の上に竿石(「~家之墓」などと刻んである大きな石)が載せられているものです。芝台の上には花立や香炉が置かれています。和型三段墓は、仏舎利塔や五輪塔をモデルにしているといわれています。仏舎利塔とは、仏様の骨(仏舎利)を安置した塔のこと。五輪塔は仏舎利塔から派生したものです。
  2. 五輪塔:「五輪」とは地・水・火・風・空の、世界を構成する五つの要素を現した塔のことです。五つの石を縦に積み重ねた形をしており、お寺でよく見ることができます。京都や東京の古寺でよく見かける五重塔も、仏舎利塔や五輪塔の仲間です。五輪塔が墓石として使われるようになったのは鎌倉時代からですから、和型三段墓よりも歴史がありますね。
    五輪塔の「五輪」は、それぞれ石の形であらわされています。
    一番下が「地輪」。四角い直方体です。次の「水輪」は球形。「火輪」は宝形屋根型という、五重塔の屋根のような形です。その上に半球形の「風輪」、一番上には橋の欄干の擬宝珠(ぎぼし)のような、玉ねぎ型の「空輪」が乗って完成です。
  3. 大名墓:大名墓は、その名の通り身分の高い大名専用の墓石でした。現代では、誰でも使うことができます。和型の竿石の上に笠塔婆を載せることで権威を表しています。和型三段墓の豪華版、という感じですね。
  4. 宝篋印塔:宝篋印塔(ほうきょういんとう)は、もともとは宝篋印心咒経(ほうきょういんしんじゅきょう)という尊いお経を収めるための宝塔でした。今から千年ほど昔の中国の王様が長寿を祈願して建てたもので、その後日本にも伝来しました。基部・塔身・笠・相輪で構成され、笠の四隅には隅飾りの突起があります。五輪塔と同じようにお墓としても建てられていますが、庶民から貴族まであらゆる階層の人々に用いられていた五輪塔に比べ、宝篋印塔はより身分の高い人々が建立していたといいます。
  5. 神道墓:神道の墓石は、仏教型と大きく変わるところはありません。竿石の頭が「トキン型(兜巾型)」とよばれる四角錐型になっているところがポイント。兜巾とは、神道の行者=山伏のかぶる頭巾。その形をかたどったものです。

洋型墓石_オルガン型洋型墓石

さて、洋風の墓石というと、どういうイメージがあるでしょうか? 海外の映画やテレビドラマに出てくるキリスト教のお墓ですか? となると、立方体やかまぼこ型の墓石や十字架が霊園一面に並んで……というものや、緑の芝生の中に白い長方形の墓石が埋め込まれているものになるでしょうか。
日本でいう「洋型墓石」は、ちょっと違います。洋型といっても日本のお墓参りの習慣に合わせるものですから、お線香やお花を上げられるように、花立や香炉を置くスペースが必要です。つまり、基礎部分は和型墓石とあまりかわらず、竿石にあたる部分が違うのです。

寺院墓地が多かった時代から公園型の霊園が増えてきた近年、洋風の墓石も急激に増えてきました。特に、一部の寺院墓地では洋型墓石が建てられない場合もありますから、宗教や宗派を問わない霊園が増えてきた背景には、自分らしい墓石を建てたい、という要望も関係しているかもしれません。
洋型の墓石には、和型のような宗教的な背景がないので、自由な設計が可能です。(キリスト教の場合は、十字架をモチーフに使う場合も多いですね。)もっとも多いのが、竿石を横長の長方形にあつらえるスタイルのもの。碑文を彫り込む正面の部分を斜めにしたアップライト型のものはオルガン型と呼ばれます。竿石を縦長にすれば、和洋折衷スタイルにすることも。竿石の上部をかまぼこ型に丸くすることで柔らかい印象を与えたり、さらに竿石自体を球形にしたり、二種類の色が違う竿石を組み合わせることで、両家墓や夫婦墓をシンボリックに表現することも。イマジネーションに応じて、自由な形の墓石を建てることができます。加工によって費用が変わりますので、石材店にご相談されることをおすすめいたします。

彫刻技術の進歩で、新しい表現を

近年の石工技術は大きく進歩し、これまでの墓石では考えられなかったような彫刻を施すことができるようになりました。特にデザインに制約が少ない洋型墓石では、さまざまな彫刻で自由なデザインを行う例が増えています。
さまざまな手法がありますが、なかでもインパクトが強いのが「影彫」でしょう。中国福建省の職人が編み出した、手仕事による彫刻です。黒御影石などの色の濃い石に、先端にダイヤモンドを装着したペンで少しずつ傷をつけ、石の表面の反射を落としていきます。その濃淡で、絵柄や人物の写真を表現します。レーザーを用いた写真彫刻もありますが、元の写真そのままを転写するレーザー写真彫刻に比べて、影彫は人の目と手を経ることで高い表現力を得ることができます。影彫に加えて彩色することもできますから、モノクロだけではなくカラーの図柄も可能です。
立体彫刻には、平面から図柄を彫り起こして浮き出すように表現する「浮彫」、素材の石の塊から像の全体を彫り出す「丸彫」の二種類があります。浮彫は、一般的な石像やお地蔵さんなどの石仏は丸彫ですね。個人のお墓で丸彫を使うケースはあまりありませんが、海外のお墓では効果的に使われていることも多いとか。今後は日本でも増えてくるかもしれません。
「象嵌」も、よく使われる手法です。ひとつの素材に別の素材で作った図柄をはめ込む装飾法です。さまざまな素材を用いますが、屋外に置かれて風雨にさらされる墓石の場合は、別の色合いの石をはめ込みます。たとえば白い御影石に赤い花崗岩で作った花びらをはめ込んで、鮮やかな花を表現することができます。

墓石の形にもさまざまなバリエーションがありますが、施す装飾によってさらに個性を出すことができます。墓石は価格としても、人生に持つ意味としても大きな買い物。よく考え、ご家族でご相談のうえで、「自分たちだけの墓石」を建立することをおススメします。

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全区画デザイン墓地を建てられる埼玉の墓地・霊園 サンモリッツ・リバティ所沢