元気なうちにお墓を建てよう〜寿陵〜

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お墓はいつまでに建てるもの?

198d895e836dec537d6658e2643d21d6_s お墓を建てるのは、いつがいいのでしょうか。これには、明確な決まりはありません。納骨の目安としては「四十九日まで」と言われますが、まったくお墓の準備がない状態でお亡くなりになった方のために、四十九日の法要までにお祀りするお墓を準備するのは正直言って無理難題ではないでしょうか。もし霊園や墓石の手配がついたとしても、墓地の基礎工事や墓石の準備など、やはり1〜2ヶ月はかかるもの。すでにあるご家族のお墓にお骨をお納めするとしても、墓石や墓碑に戒名や命日を刻む準備や、法要の準備などを考えるとギリギリでしょう。そんなことから、最近では「一周忌までに納骨できればいいのではないか」という考え方が一般的になりつつあります。

では、先にお墓を立ててしまえばいいのではないか。ということで、最近増えているのが「寿陵」です。もともとは中国の風習で、長寿を願うために生前に自分が入るお墓を建てることをいいます。そういえば、始皇帝陵など中国の皇帝のお墓や、遠くエジプトのピラミッド、そして我が国の古墳に至るまで、かつては権力者の長寿を願うため、として多くの巨大墓が築かれてきました。まあこのような歴史上の巨大な墓は、どちらかといえば権力を誇示するための一大土木事業という側面が大きく、現代のわたしたちが真摯な思いを込めて築くお墓とはかなり趣が違うのですが。

さて、近年増加している寿陵。その大きな理由としては、「自分が亡くなったあとに、お墓のことで子供たちに苦労をかけたくない」という、ご両親の切な願いがあるようです。現在年金を受給しているリタイア世代と、デフレ下でなかなか昇給が見込めない現役世代の間には、埋めがたい所得格差が……という話にしてしまうと、どうもあまりおだやかではありません。ここは「ご両親からの思いやり」ということにしておきましょう。

寿陵のメリットとは

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さて、寿陵を建立するメリットには何があるでしょうか。まずその一。いずれ遠くない将来にそのお墓に眠る本人が、納得のいく形でお墓を建てることができる、ということでしょう。その二として、家族のための義務を明確に果たせる、という考え方があります。伝統的な家族感から言えば、「一族のりっぱなお墓を建てる」ということは、長くて自分の孫世代までしか活用できないマイホームの建設よりも、家族に対して大きな貢献だと考えられます。そしてその三ですが、やはり費用面の負担を自分の次の世代に残さない、ということ。若い世代の資産は子育てや日々の生活に費やしてもらい、リタイア世代はこれまで貯蓄してきた資産を投じてりっぱなお墓を建てる。これもある種の世代間相互扶助といえるのではないでしょうか。

順番に見ていきましょう。
まずその一。最近霊園を訪れた方は、さまざまな意匠を凝らした「デザイン墓」とでも呼べる墓石が増えてきたことにお気づきでしょう。サッカーボールやラグビーボール、楽器や楽譜などがデザインされた墓石は、そこに眠る方が生前愛したことを想像させます。このような個人に強く紐づいているお墓も、寿陵として築かれているものが多いのです。「わたしは生涯をラグビーとともに過ごしてきた。だから、ラグビーボール型の墓石の下に眠りたい」。最近では、お墓やお詣りというものは「生者のため」という考え方が主流です。確かに亡くなった方のことを思い出し、その大切な思いを新たにするということは、今も生きる人々のためのこと。デザイン性の高い寿陵は、その思い出にお墓に眠る側からアプローチする試みです。
その二です。戦後の高度成長期に加速した核家族化は、現在では少子化という形をとって、日本人の家族のかたちをどんどんミニマムな存在へと解体していきました。伝統的な家族関係は、一方では自由な生き方を阻害するものともいえますが、また一方では家族というものの求心力を保ち、絆を深めるための礎ともなるものです。お墓を築き、お盆や命日には親類縁者が集まって墓参をする。これは、家族というものの存在や、家族それぞれのお互いにとっての意味を問い直す、確かな意味があることだと言えるでしょう。
その三ですが、これがある意味もっとも現実的な側面といえるのではないでしょうか。その一、その二でも見たように、お墓にはさまざまな意味がありますが、どれも前向きな意味を持つわけではありません。現役世代は、さらに新しい世代を育む子育てという、未来に向けての投資を必要としています。これは子供が生まれてから20年以上におよぶ、長いスパンで行わなければいけないものです。子育てはたいへんやりがいがあり、喜びにあふれたものではありますが、いかんせんたくさんのお金を必要とします。しかも、この投資は直接的な金銭上の見返りがあるわけではないのです。そんな長期投資に立ち向かっていく現役世代に、さらにリタイア世代のお墓の心配をする余裕はあるのか。これはなかなか難しい問題です。そういう意味で、リタイア世代に余裕があるなら寿陵を考えてみるメリットがあるのではないでしょうか。

実は、寿陵にはここまで触れてこなかったメリットもあります。お墓は、民法上「祭祀財産」という形になり、課税対象にはなりません。

つまり、相続財産とは別になりますから、相続税の対象になりません。もし仮に、遺産からお金を出してお墓を建立しようとした場合は、遺産は相続税の対象になりますから、相続税を引かれたところから建立費用を捻出する必要があります。寿陵は、相続税の節税対策になるのです。
祭祀財産とは、お墓をはじめ、仏壇仏具など祖先の霊を祀るためのものを指します。これらは旧民法では「家督相続人」が相続するものと定められていましたが、家督という考え方がなくなった現行民法でも、祭祀財産は他の財産のように相続人同士の間で分割されることはなく、一括して一人が相続することになっています。このように通常の財産とは扱い方が違い、相続税の対象にならないのです。

実際に寿陵を建立するときに

霊園の墓石を見ていると、竿石の裏側に朱文字で名前を刻んであるお墓があります。これが寿陵で、建立者が存命の間は朱色で名前を刻むことになっているのです。建立者が亡くなられると、墨を入れて黒色で上書きします。
寿陵は、どこの霊園でも建立できるわけではありません。寺院霊園であれば問題なく受け入れてもらえる場合が多いでしょうが、公立の霊園ではお骨が納められていないお墓は認められない場合もあります。寿陵を建てる場合は、霊園の管理者に確認し、相談してみるとよいでしょう。

元気なうちにお墓を建てよう〜寿陵〜

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お墓はいつまでに建てるもの?

198d895e836dec537d6658e2643d21d6_s お墓を建てるのは、いつがいいのでしょうか。これには、明確な決まりはありません。納骨の目安としては「四十九日まで」と言われますが、まったくお墓の準備がない状態でお亡くなりになった方のために、四十九日の法要までにお祀りするお墓を準備するのは正直言って無理難題ではないでしょうか。もし霊園や墓石の手配がついたとしても、墓地の基礎工事や墓石の準備など、やはり1〜2ヶ月はかかるもの。すでにあるご家族のお墓にお骨をお納めするとしても、墓石や墓碑に戒名や命日を刻む準備や、法要の準備などを考えるとギリギリでしょう。そんなことから、最近では「一周忌までに納骨できればいいのではないか」という考え方が一般的になりつつあります。

では、先にお墓を立ててしまえばいいのではないか。ということで、最近増えているのが「寿陵」です。もともとは中国の風習で、長寿を願うために生前に自分が入るお墓を建てることをいいます。そういえば、始皇帝陵など中国の皇帝のお墓や、遠くエジプトのピラミッド、そして我が国の古墳に至るまで、かつては権力者の長寿を願うため、として多くの巨大墓が築かれてきました。まあこのような歴史上の巨大な墓は、どちらかといえば権力を誇示するための一大土木事業という側面が大きく、現代のわたしたちが真摯な思いを込めて築くお墓とはかなり趣が違うのですが。

さて、近年増加している寿陵。その大きな理由としては、「自分が亡くなったあとに、お墓のことで子供たちに苦労をかけたくない」という、ご両親の切な願いがあるようです。現在年金を受給しているリタイア世代と、デフレ下でなかなか昇給が見込めない現役世代の間には、埋めがたい所得格差が……という話にしてしまうと、どうもあまりおだやかではありません。ここは「ご両親からの思いやり」ということにしておきましょう。

寿陵のメリットとは

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さて、寿陵を建立するメリットには何があるでしょうか。まずその一。いずれ遠くない将来にそのお墓に眠る本人が、納得のいく形でお墓を建てることができる、ということでしょう。その二として、家族のための義務を明確に果たせる、という考え方があります。伝統的な家族感から言えば、「一族のりっぱなお墓を建てる」ということは、長くて自分の孫世代までしか活用できないマイホームの建設よりも、家族に対して大きな貢献だと考えられます。そしてその三ですが、やはり費用面の負担を自分の次の世代に残さない、ということ。若い世代の資産は子育てや日々の生活に費やしてもらい、リタイア世代はこれまで貯蓄してきた資産を投じてりっぱなお墓を建てる。これもある種の世代間相互扶助といえるのではないでしょうか。

順番に見ていきましょう。
まずその一。最近霊園を訪れた方は、さまざまな意匠を凝らした「デザイン墓」とでも呼べる墓石が増えてきたことにお気づきでしょう。サッカーボールやラグビーボール、楽器や楽譜などがデザインされた墓石は、そこに眠る方が生前愛したことを想像させます。このような個人に強く紐づいているお墓も、寿陵として築かれているものが多いのです。「わたしは生涯をラグビーとともに過ごしてきた。だから、ラグビーボール型の墓石の下に眠りたい」。最近では、お墓やお詣りというものは「生者のため」という考え方が主流です。確かに亡くなった方のことを思い出し、その大切な思いを新たにするということは、今も生きる人々のためのこと。デザイン性の高い寿陵は、その思い出にお墓に眠る側からアプローチする試みです。
その二です。戦後の高度成長期に加速した核家族化は、現在では少子化という形をとって、日本人の家族のかたちをどんどんミニマムな存在へと解体していきました。伝統的な家族関係は、一方では自由な生き方を阻害するものともいえますが、また一方では家族というものの求心力を保ち、絆を深めるための礎ともなるものです。お墓を築き、お盆や命日には親類縁者が集まって墓参をする。これは、家族というものの存在や、家族それぞれのお互いにとっての意味を問い直す、確かな意味があることだと言えるでしょう。
その三ですが、これがある意味もっとも現実的な側面といえるのではないでしょうか。その一、その二でも見たように、お墓にはさまざまな意味がありますが、どれも前向きな意味を持つわけではありません。現役世代は、さらに新しい世代を育む子育てという、未来に向けての投資を必要としています。これは子供が生まれてから20年以上におよぶ、長いスパンで行わなければいけないものです。子育てはたいへんやりがいがあり、喜びにあふれたものではありますが、いかんせんたくさんのお金を必要とします。しかも、この投資は直接的な金銭上の見返りがあるわけではないのです。そんな長期投資に立ち向かっていく現役世代に、さらにリタイア世代のお墓の心配をする余裕はあるのか。これはなかなか難しい問題です。そういう意味で、リタイア世代に余裕があるなら寿陵を考えてみるメリットがあるのではないでしょうか。

実は、寿陵にはここまで触れてこなかったメリットもあります。お墓は、民法上「祭祀財産」という形になり、課税対象にはなりません。

つまり、相続財産とは別になりますから、相続税の対象になりません。もし仮に、遺産からお金を出してお墓を建立しようとした場合は、遺産は相続税の対象になりますから、相続税を引かれたところから建立費用を捻出する必要があります。寿陵は、相続税の節税対策になるのです。
祭祀財産とは、お墓をはじめ、仏壇仏具など祖先の霊を祀るためのものを指します。これらは旧民法では「家督相続人」が相続するものと定められていましたが、家督という考え方がなくなった現行民法でも、祭祀財産は他の財産のように相続人同士の間で分割されることはなく、一括して一人が相続することになっています。このように通常の財産とは扱い方が違い、相続税の対象にならないのです。

実際に寿陵を建立するときに

霊園の墓石を見ていると、竿石の裏側に朱文字で名前を刻んであるお墓があります。これが寿陵で、建立者が存命の間は朱色で名前を刻むことになっているのです。建立者が亡くなられると、墨を入れて黒色で上書きします。
寿陵は、どこの霊園でも建立できるわけではありません。寺院霊園であれば問題なく受け入れてもらえる場合が多いでしょうが、公立の霊園ではお骨が納められていないお墓は認められない場合もあります。寿陵を建てる場合は、霊園の管理者に確認し、相談してみるとよいでしょう。