葬儀とお墓の風習~九州編

投稿日:

b3c84680c0e0179eff51585852a19d0d_s九州は大陸にもほど近く、古来から中国の進んだ文物を積極的に取り入れてきた、いわば日本の玄関口。特に古い時代は古墳や遺跡など、当時の最先端のものが数多くありました。また、九州や本州とはまったく違う文化圏である沖縄も、中国の影響を強く受けながら長く独自の文化をはぐくんできました。

さて、九州のお墓・お葬式の話です。
まず福岡県です。福岡の郊外を歩いていると気づくのが、いわゆる「墓場」が少ないこと。お寺は他の土地と変わらずあるのですが、そのお寺の境内にあるはずの寺院墓地が見当たらないことがあるのです。
お墓がないとすれば、亡くなった方はどこに……?pixta_4888551_S福岡のお寺には、隣接して大きな納骨堂を備えているところが多いのです。お寺の檀家はそれぞれ納骨堂に入る権利を持っているかたちです。納骨堂はお寺の本堂から直接入れるようになっていることが多く、内部は各家ごとに間仕切りがつけられており、お位牌が安置されたお仏壇のようなスペースになっています。お寺に一言ご挨拶をすれば誰でも入ることができるので、いつでもお参りすることができます。納骨堂の空きがなかったり、お寺側の準備が整わなかった場合は、一般の霊園にお骨をお納めしておき、空きが出たところでお墓のお引越しをすることになります。
また、福岡の霊園を見ていると気が付くことがあります。それは、関東圏のお墓では当たり前にある「卒塔婆」がないこと。逆に福岡で生まれ育って上京した人には、関東のお墓に林立している卒塔婆を見て「あれって今でもあるんだ!ドラマかアニメの世界の出来事だと思ってた」と感想を述べる人もいるとか。宗派による違いでは……という意見もありますが、同じ曹洞宗でも関東では卒塔婆あり、福岡では卒塔婆なしが一般的。真宗大谷派など、卒塔婆を用いない宗派もあります。

福岡や熊本などでは、故人の親戚が通夜に出る際には「通夜見舞い」として飲食物を差し入れる風習があります。これは通夜の際に遺族が故人の思い出を語り明かすときに飲み食いするためのもの。そのためかどうか、九州のお通夜はしんみりとしたもの、というよりはなごやかに個人を悼むというスタンスのものが多いようです。

さて、北海道と並んで日本の他の地域とは一線を画す文化圏に所属する沖縄。まず大きいのが、お寺はあるが檀家制度が存在しないこと。このブログでも何度か触れましたが、江戸時代にお寺は現在の役場の戸籍係のような、住民管理の役割を果たしていました。檀家というのもその仕組みの名残なのですが、明治維新まで江戸幕府の力が及ばない独立国だった沖縄にはこの制度はありません。なので、お葬式をする場合も自分の好みでお寺を選ぶことができるのです。
pixta_2034984_Sそしてなによりも沖縄が独特なのは、お墓の形でしょう。亀甲墓や破風墓と呼ばれる切り石を積み上げて作った大きな墓は、小さな家ほどのサイズがあります。17世紀に作られた王族や豪族の墓が今でも現存しています。明治維新後は庶民も亀甲墓を作ることが認められたために多くの亀甲墓が建立されますが、太平洋戦争末期の沖縄戦では多くの被害を受け、また沖縄を占領した米軍が基地建設のために多くの亀甲墓を破壊してしまいました。現在では伝統的な亀甲墓に加えて、家形墓という小型の墓も作られるようになっています。

葬儀とお墓の風習~九州編

投稿日:

b3c84680c0e0179eff51585852a19d0d_s九州は大陸にもほど近く、古来から中国の進んだ文物を積極的に取り入れてきた、いわば日本の玄関口。特に古い時代は古墳や遺跡など、当時の最先端のものが数多くありました。また、九州や本州とはまったく違う文化圏である沖縄も、中国の影響を強く受けながら長く独自の文化をはぐくんできました。

さて、九州のお墓・お葬式の話です。
まず福岡県です。福岡の郊外を歩いていると気づくのが、いわゆる「墓場」が少ないこと。お寺は他の土地と変わらずあるのですが、そのお寺の境内にあるはずの寺院墓地が見当たらないことがあるのです。
お墓がないとすれば、亡くなった方はどこに……?pixta_4888551_S福岡のお寺には、隣接して大きな納骨堂を備えているところが多いのです。お寺の檀家はそれぞれ納骨堂に入る権利を持っているかたちです。納骨堂はお寺の本堂から直接入れるようになっていることが多く、内部は各家ごとに間仕切りがつけられており、お位牌が安置されたお仏壇のようなスペースになっています。お寺に一言ご挨拶をすれば誰でも入ることができるので、いつでもお参りすることができます。納骨堂の空きがなかったり、お寺側の準備が整わなかった場合は、一般の霊園にお骨をお納めしておき、空きが出たところでお墓のお引越しをすることになります。
また、福岡の霊園を見ていると気が付くことがあります。それは、関東圏のお墓では当たり前にある「卒塔婆」がないこと。逆に福岡で生まれ育って上京した人には、関東のお墓に林立している卒塔婆を見て「あれって今でもあるんだ!ドラマかアニメの世界の出来事だと思ってた」と感想を述べる人もいるとか。宗派による違いでは……という意見もありますが、同じ曹洞宗でも関東では卒塔婆あり、福岡では卒塔婆なしが一般的。真宗大谷派など、卒塔婆を用いない宗派もあります。

福岡や熊本などでは、故人の親戚が通夜に出る際には「通夜見舞い」として飲食物を差し入れる風習があります。これは通夜の際に遺族が故人の思い出を語り明かすときに飲み食いするためのもの。そのためかどうか、九州のお通夜はしんみりとしたもの、というよりはなごやかに個人を悼むというスタンスのものが多いようです。

さて、北海道と並んで日本の他の地域とは一線を画す文化圏に所属する沖縄。まず大きいのが、お寺はあるが檀家制度が存在しないこと。このブログでも何度か触れましたが、江戸時代にお寺は現在の役場の戸籍係のような、住民管理の役割を果たしていました。檀家というのもその仕組みの名残なのですが、明治維新まで江戸幕府の力が及ばない独立国だった沖縄にはこの制度はありません。なので、お葬式をする場合も自分の好みでお寺を選ぶことができるのです。
pixta_2034984_Sそしてなによりも沖縄が独特なのは、お墓の形でしょう。亀甲墓や破風墓と呼ばれる切り石を積み上げて作った大きな墓は、小さな家ほどのサイズがあります。17世紀に作られた王族や豪族の墓が今でも現存しています。明治維新後は庶民も亀甲墓を作ることが認められたために多くの亀甲墓が建立されますが、太平洋戦争末期の沖縄戦では多くの被害を受け、また沖縄を占領した米軍が基地建設のために多くの亀甲墓を破壊してしまいました。現在では伝統的な亀甲墓に加えて、家形墓という小型の墓も作られるようになっています。