お墓ディレクター

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「お墓のプロ」を見定めるための「お墓ディレクタ―検定試験」

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お墓のプロフェッショナル、というと皆さんどのような人物像を想像するでしょうか。お寺のお坊様? そうですね、確かに日常的にお墓に接することが多い方々ですが、ご自分の宗派以外のお墓や法要にはあまりお詳しくないのではないでしょうか。神道の神主様、キリスト教の神父様や牧師様も同じ。皆様、ご自分の宗教宗派のお墓や葬儀、儀式の専門家ではいらっしゃるでしょうが、「お墓全般」についてお詳しいことはないと思います。
では、霊園の管理運営をしている会社はどうでしょう。さまざまな宗教宗派のお墓、さらに特定の宗教にかかわらないお墓を日常から見る機会がある職業ですね。墓石や墓域のメンテナンスについても幅広い経験があると考えられます。しかし、基本的にはお墓を建ててからがお仕事の中心。建墓の前のプロセスはどちらかというと専門外ではないでしょうか。
そういう意味では、やはり「お墓のプロフェッショナル」といえるのは石材店のスタッフが多いと考えられます。石材店のスタッフは、墓石の材質から形状、工法など建墓にかかわること、開眼法要や納骨式など墓石をお墓にするための法要、その後の日々のお参りやお手入れなど、幅広く経験や知識を積み重ねております。
とはいえ、その知識や経験を客観的に判断していただくための基準はないか? というところから、日本石材産業協会が行っている資格検定が「お墓ディレクタ―検定試験」です。この検定試験は、「日本のお墓文化の発展とお墓の正しい理解と普及を図るため、お墓についての幅広い知識、教養を備えた方々を審査し、その活動の円滑化と支援を図ること」を目的としています(日本石材産業協会HPより)。検定には1級と2級があり、1級受験のためにはお墓およびお墓関連業での3年以上の実務経験と2級資格取得が必要。2級は実務経験は問われませんが、お墓およびお墓関連業に携わっている必要があります。まず2級を取ってから1級、という順番ですね。
「お墓およびお墓関連業」は、以下の業種になります。

墓石小売業、墓石加工業、採石業(墓石関連)、墓石卸業、墓石輸入・輸出業、墓石文字彫り業、墓石クリーニング業、墓石施工業、石材運送業(墓石関連)、機械工具・ダイヤモンド・コンピュータなどの墓石関連メーカー、卸、商社、墓葬品メーカー、卸、商社(墓地関連商品の取り扱い業者)、出版業(墓石関連)、石を販売している業者(建築環境石材業者、造園業者、仏壇業者、葬祭業者、墓地管理者、農協、生協など)

墓石の販売から加工、彫刻、採石や輸入などお墓と墓石にかかわる幅広い業種に携わる人に受験資格があるということになります。

せっかくですから、ちょっと問題を見てみましょうか(日本石材産業協会のHPにアップされている第11回お墓ディレクタ―検定試験問題から抜粋しています)。

まず、1級の問題から。正誤問題(正しければ正、間違っていれば誤の位置を塗りつぶすマークシート問題)です。

●ネアンデルタール人による「埋葬」は確実に 6 万年前まではさかのぼり、この人々の出現時期からすれば、人類が墓を造り始めたのは、可能性としては 20 万年前まで遡ることが考えられる。

●弥生時代における支石墓や甕棺などは東日本を代表する葬制ですが、西日本では、壺を用いた再葬がよく知られる墓制です。そして、これは旧石器時代以来の伝統的葬制といえるものである。

いかがでしょう、なかなか難しいですね! このブログでも、埋葬やお墓の歴史はそれなりに扱ってきましたが、歴史というより考古学の分野まで踏み込んだ知識が求められます。

● 曹洞宗の主な経典は般若心経、(   )、修証義です。
①法華経  ②観無量寿経  ③観音経  ④大日経

●宝篋印塔の名は塔中に「宝篋印陀陀羅尼経」を納めることから出たもので、中国を経て日本に伝わった密教系の石塔です。この宝篋印塔は(   )中期から、五輪塔と並んでさかんに造られました。
①平安時代  ②鎌倉時代  ③室町時代  ④江戸時代

bd3c7abbe3c11325a73e6632151068ab_sこちらは選択肢問題、「あてはまるものを以下から選べ」というパターンです。お墓を取り扱う上では欠かせない、仏教関係の知識も要求されています。

●夏と冬、晴天と雨天とで条件は違いますが、エポキシ系接着剤も変成シリコーン系接着剤も、完全に固まるまでには(   )かかるといわれています。
① 1 日~ 3 日  ② 2 日~ 5 日  ③ 3 日~ 1 週間  ④ 5 日~ 10 日

●次の①~④の中で、花崗岩に分類されるものを選びなさい。
①大谷石  ②六方石  ③白河石  ④稲田石
こちらは実践的な、石材や施工についての問題です。他にも、墓石を加工する際のノミなどの工具についての設問、墓地にかかわる基本的な法律の一つ墓埋法(墓地、埋葬などに関する法律)の知識を問う設問もあります。非常に実際的で、お墓にかかわる事柄を幅広く網羅している問題ですね。

しかしさすがにこれではレベルが高すぎる……ということで、今度は2級の問題も見てみましょう。

●神道式の三段墓には正面に「○○家奥津城」と彫ってある場合が多いです。
●天台宗・真言宗・禅宗の主な経典の一つに般若心経があります。
●鎌倉時代、東大寺大仏殿の再興のために中国から優れた石工技術を持つ、伊行末らが日本に招かれました。

まずは正誤問題。これくらいなら、勉強すればなんとかなりそうですね! 先ほどの1級の問題に比べると、こちらは初歩的という印象です。

●2011 年における厚生労働省データによると日本の火葬率は(   )% です。
① 99.89   ② 75.43   ③ 52.42   ④ 25.65

●「御影石」(=みかげ石)とは(   )県に産出された花崗岩を、その地域の名称にちなんで「御影石」(=みかげ石)と呼ぶようになったことを語源としています。
① 兵庫  ②愛知  ③香川  ④茨城

こちらは選択肢問題。やはり基礎知識というイメージです。また、初級ならではの設問として、墓石や位牌のイラストを見て宗派を答えさせたり、墓石に彫刻する文字の字体を答えさせたりするイラスト問題もあります。

全般的にとっつきやすい印象もあり、楽しく勉強できそうです。お墓や関連業界なら、2級ならば新入社員研修のカリキュラムのひとつとして受験してみてもよいのではないでしょうか。お墓にまつわる文化や風習、歴史も学べるので、2級は一般からも受験できるようになってほしいものです。特に最近は資格受験ブームでもあります。お墓のあり方も曲がり角を迎えている時期ですから、幅広い層にアピールできるかもしれません。

明治以降に広まった現代日本のお墓文化は、家族制度の変容と共に大きく変わろうとしています。お墓に入る単位も強固にまとまった「家」から、夫婦など入りたい同士で入る「個人の集合体」へと変わりました。そんな歴史の転換点だからこそ、これまでのお墓の歴史や伝統を、しっかり振り返って見られるこのような検定試験はたいへん重要だと思います。関連業界で働いている人はもちろん、そうでない人にも門戸が開かれるといいですね。

73f0bdbf8dbcf3b21bb9fd3e9ddf5129_sそして、このような試験をクリアして、名刺に「お墓ディレクター1級」と書いている石材店スタッフや関連業界の方を見かけたら、その方はお墓にかかわる仕事をする上で確かな知識と経験を持っているという証です。墓石のことだけにとどまらず、お墓にかかわるさまざまな疑問、質問をぶつけてみましょう。きちんとした答えが返ってくるはずです。

お墓ディレクター

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「お墓のプロ」を見定めるための「お墓ディレクタ―検定試験」

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お墓のプロフェッショナル、というと皆さんどのような人物像を想像するでしょうか。お寺のお坊様? そうですね、確かに日常的にお墓に接することが多い方々ですが、ご自分の宗派以外のお墓や法要にはあまりお詳しくないのではないでしょうか。神道の神主様、キリスト教の神父様や牧師様も同じ。皆様、ご自分の宗教宗派のお墓や葬儀、儀式の専門家ではいらっしゃるでしょうが、「お墓全般」についてお詳しいことはないと思います。
では、霊園の管理運営をしている会社はどうでしょう。さまざまな宗教宗派のお墓、さらに特定の宗教にかかわらないお墓を日常から見る機会がある職業ですね。墓石や墓域のメンテナンスについても幅広い経験があると考えられます。しかし、基本的にはお墓を建ててからがお仕事の中心。建墓の前のプロセスはどちらかというと専門外ではないでしょうか。
そういう意味では、やはり「お墓のプロフェッショナル」といえるのは石材店のスタッフが多いと考えられます。石材店のスタッフは、墓石の材質から形状、工法など建墓にかかわること、開眼法要や納骨式など墓石をお墓にするための法要、その後の日々のお参りやお手入れなど、幅広く経験や知識を積み重ねております。
とはいえ、その知識や経験を客観的に判断していただくための基準はないか? というところから、日本石材産業協会が行っている資格検定が「お墓ディレクタ―検定試験」です。この検定試験は、「日本のお墓文化の発展とお墓の正しい理解と普及を図るため、お墓についての幅広い知識、教養を備えた方々を審査し、その活動の円滑化と支援を図ること」を目的としています(日本石材産業協会HPより)。検定には1級と2級があり、1級受験のためにはお墓およびお墓関連業での3年以上の実務経験と2級資格取得が必要。2級は実務経験は問われませんが、お墓およびお墓関連業に携わっている必要があります。まず2級を取ってから1級、という順番ですね。
「お墓およびお墓関連業」は、以下の業種になります。

墓石小売業、墓石加工業、採石業(墓石関連)、墓石卸業、墓石輸入・輸出業、墓石文字彫り業、墓石クリーニング業、墓石施工業、石材運送業(墓石関連)、機械工具・ダイヤモンド・コンピュータなどの墓石関連メーカー、卸、商社、墓葬品メーカー、卸、商社(墓地関連商品の取り扱い業者)、出版業(墓石関連)、石を販売している業者(建築環境石材業者、造園業者、仏壇業者、葬祭業者、墓地管理者、農協、生協など)

墓石の販売から加工、彫刻、採石や輸入などお墓と墓石にかかわる幅広い業種に携わる人に受験資格があるということになります。

せっかくですから、ちょっと問題を見てみましょうか(日本石材産業協会のHPにアップされている第11回お墓ディレクタ―検定試験問題から抜粋しています)。

まず、1級の問題から。正誤問題(正しければ正、間違っていれば誤の位置を塗りつぶすマークシート問題)です。

●ネアンデルタール人による「埋葬」は確実に 6 万年前まではさかのぼり、この人々の出現時期からすれば、人類が墓を造り始めたのは、可能性としては 20 万年前まで遡ることが考えられる。

●弥生時代における支石墓や甕棺などは東日本を代表する葬制ですが、西日本では、壺を用いた再葬がよく知られる墓制です。そして、これは旧石器時代以来の伝統的葬制といえるものである。

いかがでしょう、なかなか難しいですね! このブログでも、埋葬やお墓の歴史はそれなりに扱ってきましたが、歴史というより考古学の分野まで踏み込んだ知識が求められます。

● 曹洞宗の主な経典は般若心経、(   )、修証義です。
①法華経  ②観無量寿経  ③観音経  ④大日経

●宝篋印塔の名は塔中に「宝篋印陀陀羅尼経」を納めることから出たもので、中国を経て日本に伝わった密教系の石塔です。この宝篋印塔は(   )中期から、五輪塔と並んでさかんに造られました。
①平安時代  ②鎌倉時代  ③室町時代  ④江戸時代

bd3c7abbe3c11325a73e6632151068ab_sこちらは選択肢問題、「あてはまるものを以下から選べ」というパターンです。お墓を取り扱う上では欠かせない、仏教関係の知識も要求されています。

●夏と冬、晴天と雨天とで条件は違いますが、エポキシ系接着剤も変成シリコーン系接着剤も、完全に固まるまでには(   )かかるといわれています。
① 1 日~ 3 日  ② 2 日~ 5 日  ③ 3 日~ 1 週間  ④ 5 日~ 10 日

●次の①~④の中で、花崗岩に分類されるものを選びなさい。
①大谷石  ②六方石  ③白河石  ④稲田石
こちらは実践的な、石材や施工についての問題です。他にも、墓石を加工する際のノミなどの工具についての設問、墓地にかかわる基本的な法律の一つ墓埋法(墓地、埋葬などに関する法律)の知識を問う設問もあります。非常に実際的で、お墓にかかわる事柄を幅広く網羅している問題ですね。

しかしさすがにこれではレベルが高すぎる……ということで、今度は2級の問題も見てみましょう。

●神道式の三段墓には正面に「○○家奥津城」と彫ってある場合が多いです。
●天台宗・真言宗・禅宗の主な経典の一つに般若心経があります。
●鎌倉時代、東大寺大仏殿の再興のために中国から優れた石工技術を持つ、伊行末らが日本に招かれました。

まずは正誤問題。これくらいなら、勉強すればなんとかなりそうですね! 先ほどの1級の問題に比べると、こちらは初歩的という印象です。

●2011 年における厚生労働省データによると日本の火葬率は(   )% です。
① 99.89   ② 75.43   ③ 52.42   ④ 25.65

●「御影石」(=みかげ石)とは(   )県に産出された花崗岩を、その地域の名称にちなんで「御影石」(=みかげ石)と呼ぶようになったことを語源としています。
① 兵庫  ②愛知  ③香川  ④茨城

こちらは選択肢問題。やはり基礎知識というイメージです。また、初級ならではの設問として、墓石や位牌のイラストを見て宗派を答えさせたり、墓石に彫刻する文字の字体を答えさせたりするイラスト問題もあります。

全般的にとっつきやすい印象もあり、楽しく勉強できそうです。お墓や関連業界なら、2級ならば新入社員研修のカリキュラムのひとつとして受験してみてもよいのではないでしょうか。お墓にまつわる文化や風習、歴史も学べるので、2級は一般からも受験できるようになってほしいものです。特に最近は資格受験ブームでもあります。お墓のあり方も曲がり角を迎えている時期ですから、幅広い層にアピールできるかもしれません。

明治以降に広まった現代日本のお墓文化は、家族制度の変容と共に大きく変わろうとしています。お墓に入る単位も強固にまとまった「家」から、夫婦など入りたい同士で入る「個人の集合体」へと変わりました。そんな歴史の転換点だからこそ、これまでのお墓の歴史や伝統を、しっかり振り返って見られるこのような検定試験はたいへん重要だと思います。関連業界で働いている人はもちろん、そうでない人にも門戸が開かれるといいですね。

73f0bdbf8dbcf3b21bb9fd3e9ddf5129_sそして、このような試験をクリアして、名刺に「お墓ディレクター1級」と書いている石材店スタッフや関連業界の方を見かけたら、その方はお墓にかかわる仕事をする上で確かな知識と経験を持っているという証です。墓石のことだけにとどまらず、お墓にかかわるさまざまな疑問、質問をぶつけてみましょう。きちんとした答えが返ってくるはずです。