法事法要とは

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法要、法事という言葉をこのブログでも何度も使ってきましたが、この二つに違いがあるということを皆さんはご存じでしょうか。なんとなく「お坊様を呼んでお経を上げていただくことを法事や法要っていうんでしょう?」という方もたいへん多いかと思います。
そこで今回は、まずこの二つの言葉の定義づけからはじめましょう。

法要とは

さて、先に「お坊様を呼ぶ儀式なら法要や法事でしょう」という言い方をしましたが、実はこれ決して「0点」の回答ではありません。大ざっぱにいえば合っている面もあるのです。例えて言えば、「祝日も休日も、お休みになるんだから一緒でしょう」というようなもの。これ、間違ってはいませんが、「正解!」とはいいづらいですよね。

法要は、仏教儀式の総称です。お葬式から回忌法要などおなじみのものから、たとえば新しい仏像を安置すれば開眼法要を行いますし、仏教式の結婚式も法要のひとつです。

198d895e836dec537d6658e2643d21d6_s実際の仏前結婚式は、父母や親族の着座が整うと、新郎新婦が入堂し、合掌、礼拝という形ではじまります。そして、仏様の徳をたたえるおつとめが行われ、新郎新婦の誓いの言葉、記念念珠の授与、新夫婦の門出を祝う司婚者の祝辞(法話)のあと、列席者全員で合掌、礼拝でしめくくるというもの。衣装は和装が多いようですが、純白のウェディングドレスも、ひときわ映えます。どちらにするかはもちろん自由です。また、新郎、新婦をはじめ列席者全員が念珠を持参する必要があるのは、仏前式ならではですね。

このように、極端な言い方をすればお坊様が読経される儀式はすべて法要、といえるでしょう。もうすこし定義めいたお話をすると、葬儀や告別式の後に、故人を偲んで供養や回向を行う行事のこと、となるでしょうか。

法事とは

では、法事とはなんでしょう。法要ではなく法事という言葉を使う場合、儀式そのものだけでなく、その前後まで含みます。つまり、お車を出してお坊様をお呼びして、法要を終えてお斎を差し上げてお布施やお車代をお渡しし、参会してくださった方々に引き出物をお渡ししてお帰りいただくまでの一連の流れを含む、行事としての呼び名です。法要の内容については、基本的にはお坊様やお寺様におまかせし、ご指示をいただく通りに動けば問題はありません。しかし法事のそれ以外の部分、つまりお斎やお車でのお迎えお送り、引き出物の熨斗がけなどは主催する側が気をつけなければいけないことがいくつかあります。法要と法事の違い、というお話をするときに、一番注意するべきところはこのあたりでしょうか。

お斎について

お斎にも、地域によってさまざまな風習があります。
たとえば長野県では、県内の地方別に以下のようなしきたりがあります。

●長野地区(長野県北部)
「お斎(とき)」と呼ばれ、親戚、隣組、会社関係、友人などにお願いして出席して頂きます。
料理は「会席膳」が主流です。また、食事の最後にお蕎麦が出されることが多いです。
菩提寺などの僧侶が必ず同席され、法話や献杯を行ないます。
「北信流」と呼ばれる儀式を行なう地区が多くあります。

※北信流とは
長野県松代に伝わる、盃ごとの場で行われる儀式です。

  1. 宴席の参会者(招かれた側)から「本日は盛大な会を催していただき、誠にありがとうございました。この席をお借りして、本日ご苦労頂きました方々にお杯を差し上げたいと存じますがいかがでしょうか?」と提案がなされる。
  2. 拍手で賛同が得られると提案者は「差し上げる方などは私にお任せ下さい」とお願いし、さらに拍手で賛同を得、「杯をもらう人」「差し上げる人」「介添え役」「お毒味役」「お肴を出す人」を指名します。
  3. 指名された人は座の中央または上座に出て並ぶ。介添え役がお毒味役に酒を注ぐ。
  4. お毒味役は杯を干し「結構なお酒でございます」と答える。
  5. 介添え役は「杯をもらう人」「差し上げる人」の間の脇に座る。
  6. お酒を「差し上げる人」は「もらう人」に空の杯を手渡し、介添え役が酒を注ぐ。
  7. 「もらった人」が酒をいただくと、お肴を出す。ここで謡いを謡う。
  8. 酒を干したら、「重ねて」ともう一度お酒を注ぐ。
  9. 杯をいただいた人は「皆様、ただ今はありがとうございました」と礼を述べ、席を立つ。
  10. 座を下がったら「つきましては、今、いただいた方々に杯を差し上げ、皆々様に差し上げたものとご了解下さい」とあいさつし、先ほどの「差し上げる人」「もらう人」が入れ替わりお返しをする。お肴を出す人も交代するのが本筋であるが、変えない事が一般的だそうです。

23efdeb4627309b4eafd6b7b8bed3e08_s
中信地区(松本市を中心とした、長野県中部)
会葬者全員が「会食」の席に呼ばれます。「忌中払い」「棚あげ」とも呼ばれます。
お料理は「盛り込み」になることが多く、油揚げ・こんにゃく・ひじきの煮しめ、のりまん等、地域独特の料理が出され、最後に「うどん」が出されます。

同じ県内でも、これだけ違うというのがよくわかります。長野県だからお蕎麦かと思いきや、長野県中部ではお斎の後にはおうどんを食べるんですね。

また福島県も、法事には独特の風習があります。葬儀でも、以下のようなことが行われています。

   福島県は関東と東北の文化が融合、共存する県です。 たとえば東北地方全域で広く行われている「骨葬」(火葬→葬儀)も、福島県では行う地域と行わない地域、つまり一般的な「葬儀→火葬」の手順が定着している地域とに分かれています。
一部地域では出棺の際に玄関の脇に仮門をって、そこをくぐって出棺するという風習が残っています。 仮門とは、竹をアーチのように曲げた儀礼用の門で、出棺の後はすぐに壊して燃やします。 仮門は冥土の入り口で、すぐ壊してしまうのは死者が戻ってきても入り口が無いのでこの世に帰ることができない……ということを願ってのものです。これは迷わず成仏してほしいという気持ちがこめられた風習です。

fdf321b7a67ee57b7a791dfbff4b1aa2_s福島県では、近隣組織である「隣組」や「念仏講」と呼ばれる10軒件程度の家が単位となっている組織が喪家を手伝います。戦前にあった「隣組」や、現代の町内会に近い働きがあります。この地域では「遺族は参列者の接待をしない」という考え方があり、参列者への接待は隣組や他の関係者があたることになっています。これは、「遺族は故人の供養に専念すべき」という考え方があるからです。 「念仏講」の人たちが通夜・葬儀の事務的な作業を手分けして受け持ちます。
福島県内には、不幸の報せは、2人が1組となって伝えられるしきたりが残されています。 地域によって「告人」(つげと)、「角折」(かくせつ)、「わざふ」と違った名で呼ばれています。

   さてこのように、法事とは「法要を含めた、イベント全体」ということになりますね。法要自体は、基本的に宗教宗派による違いはさておき儀式としてはお坊様にお任せし、こちらが気を配るべきところはありません。法事の風習はその土地土地によって違いますから、よく調べて準備をし、参会者やお坊様が納得してお勤めやお参りをすまされるような法事にしましょう。

法事法要とは

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法要、法事という言葉をこのブログでも何度も使ってきましたが、この二つに違いがあるということを皆さんはご存じでしょうか。なんとなく「お坊様を呼んでお経を上げていただくことを法事や法要っていうんでしょう?」という方もたいへん多いかと思います。
そこで今回は、まずこの二つの言葉の定義づけからはじめましょう。

法要とは

さて、先に「お坊様を呼ぶ儀式なら法要や法事でしょう」という言い方をしましたが、実はこれ決して「0点」の回答ではありません。大ざっぱにいえば合っている面もあるのです。例えて言えば、「祝日も休日も、お休みになるんだから一緒でしょう」というようなもの。これ、間違ってはいませんが、「正解!」とはいいづらいですよね。

法要は、仏教儀式の総称です。お葬式から回忌法要などおなじみのものから、たとえば新しい仏像を安置すれば開眼法要を行いますし、仏教式の結婚式も法要のひとつです。

198d895e836dec537d6658e2643d21d6_s実際の仏前結婚式は、父母や親族の着座が整うと、新郎新婦が入堂し、合掌、礼拝という形ではじまります。そして、仏様の徳をたたえるおつとめが行われ、新郎新婦の誓いの言葉、記念念珠の授与、新夫婦の門出を祝う司婚者の祝辞(法話)のあと、列席者全員で合掌、礼拝でしめくくるというもの。衣装は和装が多いようですが、純白のウェディングドレスも、ひときわ映えます。どちらにするかはもちろん自由です。また、新郎、新婦をはじめ列席者全員が念珠を持参する必要があるのは、仏前式ならではですね。

このように、極端な言い方をすればお坊様が読経される儀式はすべて法要、といえるでしょう。もうすこし定義めいたお話をすると、葬儀や告別式の後に、故人を偲んで供養や回向を行う行事のこと、となるでしょうか。

法事とは

では、法事とはなんでしょう。法要ではなく法事という言葉を使う場合、儀式そのものだけでなく、その前後まで含みます。つまり、お車を出してお坊様をお呼びして、法要を終えてお斎を差し上げてお布施やお車代をお渡しし、参会してくださった方々に引き出物をお渡ししてお帰りいただくまでの一連の流れを含む、行事としての呼び名です。法要の内容については、基本的にはお坊様やお寺様におまかせし、ご指示をいただく通りに動けば問題はありません。しかし法事のそれ以外の部分、つまりお斎やお車でのお迎えお送り、引き出物の熨斗がけなどは主催する側が気をつけなければいけないことがいくつかあります。法要と法事の違い、というお話をするときに、一番注意するべきところはこのあたりでしょうか。

お斎について

お斎にも、地域によってさまざまな風習があります。
たとえば長野県では、県内の地方別に以下のようなしきたりがあります。

●長野地区(長野県北部)
「お斎(とき)」と呼ばれ、親戚、隣組、会社関係、友人などにお願いして出席して頂きます。
料理は「会席膳」が主流です。また、食事の最後にお蕎麦が出されることが多いです。
菩提寺などの僧侶が必ず同席され、法話や献杯を行ないます。
「北信流」と呼ばれる儀式を行なう地区が多くあります。

※北信流とは
長野県松代に伝わる、盃ごとの場で行われる儀式です。

  1. 宴席の参会者(招かれた側)から「本日は盛大な会を催していただき、誠にありがとうございました。この席をお借りして、本日ご苦労頂きました方々にお杯を差し上げたいと存じますがいかがでしょうか?」と提案がなされる。
  2. 拍手で賛同が得られると提案者は「差し上げる方などは私にお任せ下さい」とお願いし、さらに拍手で賛同を得、「杯をもらう人」「差し上げる人」「介添え役」「お毒味役」「お肴を出す人」を指名します。
  3. 指名された人は座の中央または上座に出て並ぶ。介添え役がお毒味役に酒を注ぐ。
  4. お毒味役は杯を干し「結構なお酒でございます」と答える。
  5. 介添え役は「杯をもらう人」「差し上げる人」の間の脇に座る。
  6. お酒を「差し上げる人」は「もらう人」に空の杯を手渡し、介添え役が酒を注ぐ。
  7. 「もらった人」が酒をいただくと、お肴を出す。ここで謡いを謡う。
  8. 酒を干したら、「重ねて」ともう一度お酒を注ぐ。
  9. 杯をいただいた人は「皆様、ただ今はありがとうございました」と礼を述べ、席を立つ。
  10. 座を下がったら「つきましては、今、いただいた方々に杯を差し上げ、皆々様に差し上げたものとご了解下さい」とあいさつし、先ほどの「差し上げる人」「もらう人」が入れ替わりお返しをする。お肴を出す人も交代するのが本筋であるが、変えない事が一般的だそうです。

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中信地区(松本市を中心とした、長野県中部)
会葬者全員が「会食」の席に呼ばれます。「忌中払い」「棚あげ」とも呼ばれます。
お料理は「盛り込み」になることが多く、油揚げ・こんにゃく・ひじきの煮しめ、のりまん等、地域独特の料理が出され、最後に「うどん」が出されます。

同じ県内でも、これだけ違うというのがよくわかります。長野県だからお蕎麦かと思いきや、長野県中部ではお斎の後にはおうどんを食べるんですね。

また福島県も、法事には独特の風習があります。葬儀でも、以下のようなことが行われています。

   福島県は関東と東北の文化が融合、共存する県です。 たとえば東北地方全域で広く行われている「骨葬」(火葬→葬儀)も、福島県では行う地域と行わない地域、つまり一般的な「葬儀→火葬」の手順が定着している地域とに分かれています。
一部地域では出棺の際に玄関の脇に仮門をって、そこをくぐって出棺するという風習が残っています。 仮門とは、竹をアーチのように曲げた儀礼用の門で、出棺の後はすぐに壊して燃やします。 仮門は冥土の入り口で、すぐ壊してしまうのは死者が戻ってきても入り口が無いのでこの世に帰ることができない……ということを願ってのものです。これは迷わず成仏してほしいという気持ちがこめられた風習です。

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福島県内には、不幸の報せは、2人が1組となって伝えられるしきたりが残されています。 地域によって「告人」(つげと)、「角折」(かくせつ)、「わざふ」と違った名で呼ばれています。

   さてこのように、法事とは「法要を含めた、イベント全体」ということになりますね。法要自体は、基本的に宗教宗派による違いはさておき儀式としてはお坊様にお任せし、こちらが気を配るべきところはありません。法事の風習はその土地土地によって違いますから、よく調べて準備をし、参会者やお坊様が納得してお勤めやお参りをすまされるような法事にしましょう。