葬儀とお墓の風習~関西編

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2128e05a00ed260815823422a88bb1a6_s日本の歴史において、悠久ともいえる長い間政治、文化、経済の中心だった近畿地方。その歴史に応じたさまざまな風習が残り、広く日本中に影響を与えています。長らく文化の発信地だった京都・大阪を中心にして、全国に同心円状に言葉や風習が伝わったという研究があります。つまり、東北地方の北部と四国の南西部におなじ古語が方言として残っていたり、お祭りや儀式の手法が似通っていたり、それぞれの地域同士では遠くても「京都・大阪との距離」が同じところに同じものが残っている、ということです。これこそ、近畿地方は名目ともに日本の中心だったことの証明です。

09ca4067f1f7ad5b925bdfc36c40cf5d_sさて、そんな近畿地方の葬儀の風習にはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、友引でもお葬式を行う、ということ。現在、全国的に「友引はお葬式をしない」という慣習になっていますが、実はこれは特別に由来があることではありません。「友引は『友を引く』から、親しい人が亡くなるのではないか」という言われ方をしていますが、これは誤り。もともと六曜での友引は、「共に退く」という意味で、「勝敗がつかず、両者引き分け」ということです。しかし、もともとの意味が不吉なものではなかったとはいえ、今日では気にする方も多いはず。実際、友引には営業しない火葬場や葬儀会場もあります。京都や大阪では、友引にお葬式をする場合にはお棺の中に「供人形」または「いちま人形」という人形を入れます。これを「友に引かれる」ことの身代わりにするのです。
また、和歌山県では友引ばかりではなく、三隣亡(さんりんぼう)にもお葬式を避けます。三隣亡とは六曜や九星以外で暦に書かれている日のひとつで、その名の通り自分の家と両隣三軒まで不幸を呼ぶとされている日です。普通のカレンダーに書かれていることは稀ですが、それでも建築関係では気にする方も多いということです。

04131922_534a654f59581供花にも特徴があります。一般的には菊を使うのですが、近畿地方では樒(しきみ)を使用する場合があります。香りが強く、邪気を払うとされています。また兵庫県の一部では、樒を使ってお棺に水を撒くという習慣もあります。樒は仏教の儀式と密接にかかわっており、弘法大師が儀式に使ったことが始まりとされています。また、鑑真和上が日本にもたらしたという伝承もあります。

不祝儀袋の水引は、一般的には白と黒のものを使います。しかし近畿地方では、黄色と白の水引を使うことが多いのです。黒という色は宮中で使われていたために庶民が使うと紛らわしく、黒の次に喪に服していることを表現する黄色を使う、ということからきているようです。

出棺のとき、兵庫県の一部ではお棺を三度回すというしきたりがあります。これは故人が成仏できずに迷って戻ってこないようにするためだ、ということです。さらにこのとき、故人が使っていた茶碗を割り砕くこともあります。現世との決別、ということを強く意識させる儀式ですね。

葬儀とお墓の風習~関西編

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2128e05a00ed260815823422a88bb1a6_s日本の歴史において、悠久ともいえる長い間政治、文化、経済の中心だった近畿地方。その歴史に応じたさまざまな風習が残り、広く日本中に影響を与えています。長らく文化の発信地だった京都・大阪を中心にして、全国に同心円状に言葉や風習が伝わったという研究があります。つまり、東北地方の北部と四国の南西部におなじ古語が方言として残っていたり、お祭りや儀式の手法が似通っていたり、それぞれの地域同士では遠くても「京都・大阪との距離」が同じところに同じものが残っている、ということです。これこそ、近畿地方は名目ともに日本の中心だったことの証明です。

09ca4067f1f7ad5b925bdfc36c40cf5d_sさて、そんな近畿地方の葬儀の風習にはどのようなものがあるのでしょうか。
まず、友引でもお葬式を行う、ということ。現在、全国的に「友引はお葬式をしない」という慣習になっていますが、実はこれは特別に由来があることではありません。「友引は『友を引く』から、親しい人が亡くなるのではないか」という言われ方をしていますが、これは誤り。もともと六曜での友引は、「共に退く」という意味で、「勝敗がつかず、両者引き分け」ということです。しかし、もともとの意味が不吉なものではなかったとはいえ、今日では気にする方も多いはず。実際、友引には営業しない火葬場や葬儀会場もあります。京都や大阪では、友引にお葬式をする場合にはお棺の中に「供人形」または「いちま人形」という人形を入れます。これを「友に引かれる」ことの身代わりにするのです。
また、和歌山県では友引ばかりではなく、三隣亡(さんりんぼう)にもお葬式を避けます。三隣亡とは六曜や九星以外で暦に書かれている日のひとつで、その名の通り自分の家と両隣三軒まで不幸を呼ぶとされている日です。普通のカレンダーに書かれていることは稀ですが、それでも建築関係では気にする方も多いということです。

04131922_534a654f59581供花にも特徴があります。一般的には菊を使うのですが、近畿地方では樒(しきみ)を使用する場合があります。香りが強く、邪気を払うとされています。また兵庫県の一部では、樒を使ってお棺に水を撒くという習慣もあります。樒は仏教の儀式と密接にかかわっており、弘法大師が儀式に使ったことが始まりとされています。また、鑑真和上が日本にもたらしたという伝承もあります。

不祝儀袋の水引は、一般的には白と黒のものを使います。しかし近畿地方では、黄色と白の水引を使うことが多いのです。黒という色は宮中で使われていたために庶民が使うと紛らわしく、黒の次に喪に服していることを表現する黄色を使う、ということからきているようです。

出棺のとき、兵庫県の一部ではお棺を三度回すというしきたりがあります。これは故人が成仏できずに迷って戻ってこないようにするためだ、ということです。さらにこのとき、故人が使っていた茶碗を割り砕くこともあります。現世との決別、ということを強く意識させる儀式ですね。