広がる埋葬方法の選択肢①樹木葬

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日本人に共通の「お墓」の概念が定着してから、およそ150年。二度の戦争を経、経済の波に翻弄されながら、日本人の価値観は大きく変化してきました。平均寿命が大幅に延びながらも、結婚せずひとりで生きていく「おひとり様」が増えたことで、人生の最後をどう迎えるかという「終活」についての意識も変わってきています。
こうしたニーズに応えるように、フューネラル・ビジネスの内容も非常に充実したものになってきました。特に、自分の最期をきちんと締めくくるために、これまでよく知られていなかった埋葬方法が広く知られるようになり、選択肢が大幅に広がってきています。
今、人々はどんな埋葬方法を選択しているのでしょうか?

樹木葬について

墓石の代わりに樹木を墓標とする埋葬方法のことを「樹木葬」と言います。「自然葬」という埋葬方法の中のひとつです。
主な形態は以下の3種類です。それぞれ違いを見ていきます。

◇公園型
墓石を建てないということ以外は、ほとんど従来の墓地と変わらない埋葬方法です。墓地や霊園の敷地内に設けられている場合が多くあります。
ほとんどの場合ある程度の面積の区画に「シンボルツリー」として1本の樹を植えて、その周りに遺骨を埋めます。周辺の環境に配慮し大きくならない低木を植えるのが一般的で、特に植樹する地域で生育できる点、生態系に悪影響を与えないという点に鑑み、ハナミズキ、サルスベリ、ウメモドキ、エゾアジサイ、桜、ヤマツツジ、薔薇、楠木といった花が咲く樹木や常緑樹が植えられる傾向にあるようです。

◇ガーデニング型
公園型と似ているガーデニング型ですが、違いは規模にあります。すでに存在している墓地や霊園の一画にスペースが設けられ、花壇のような場所の中に納骨するスペースを作るのです。
シンボルツリーの他、景観に合った様々な種類の花に囲まれて眠ることができます。植えられる草木や花は、公園型と同様墓地としての機能を乱さないような種類のものが選ばれます。

◇里山型
前者2つと大きく異なり、埋葬する場所は「墓地」として認められている山です。カロートや骨壷のような人工物を用いず(場所によっては将来還元する素材で作った骨壷を用いることもあるようです)、自生している草木はそのままにし、なるべく自然を残している場所に埋葬します。四季折々の花々に囲まれた、原始的な形での埋葬です。
元々樹木葬の走りのタイプであった「里山型」ですが、実際にはほとんど普及していません。ここには法律の問題が大きく関わっています。次回の記事で詳しくご説明します。

樹木葬の費用

実際に樹木葬を選択肢のひとつとして考えた場合、気になるのは費用です。基本的な費用の内訳を挙げていきます。

・永代使用料
いわゆる一般的な永代使用料と同様で、一定期間経過すると合祀されます。その後さらに一定期間が過ぎると、骨壷から遺骨を出し、合同の墓地に合祀され遺骨を土に返します。
ほとんどの樹木葬で見られる供養形態です。樹木葬が単身者や少数世帯者に人気があるのは、合祀されるのが前提で、後々の管理を心配しなくていいからという理由が大きいようです。

・納骨料
お骨を埋葬してもらうための手数料です。ほとんどの場合、利用する人数分の料金がかかります。
永代使用料に納骨料が含まれていたり、納骨料の代わりに永代使用料が割高になっていたりする料金形態を採っている業者もあるようです。内訳をしっかり確認しましょう。

・銘板彫刻料
「銘板」とは「ネームプレート」のことです。遺骨を埋葬した場所付近に目印として設置する際に必要になります。
シンボルツリーや周辺の植物は年々変化するので、銘板があればきちんと故人に向かってお参りをすることができます。
必須ではなく、オプションにしている業者もあるようです。

・年間管理料
運営費や管理費として提示されることの多い年間管理料ですが、最近は無料にしている霊園も増えているようです。
単身で樹木葬を希望する場合、支払い方法や期間には特に注意が必要です。自分の死後もきちんと埋葬してもらえるよう、事前に確認しましょう。

樹木葬のメリット・デメリット

樹木葬が自分や家族の希望に合うものなのか、イマイチよくわからないという方が多いと思います。特にデメリットがあるなら、きちんと知っておきたいと思いますよね。
簡単ではありますが、よく採り上げられるメリットとデメリットを以下に挙げました。これを元に、樹木葬について検討してみましょう。
また、機会があれば、家族や友人と相談してみても良いかもしれませんね。

◇樹木葬のメリット
・緑豊かで美しい花に囲まれて眠ることができる
・お墓を建てない分石材費がかからず、費用が安くすむ場合が多い
・宗教を問わない場合が多い
・後継者がいなくても管理の心配がない

◇樹木葬のデメリット
・合祀するため改葬ができない
・一代限りで承継できない場合が多い
・環境の関係でアクセスが不便な場合がある
・通常の参拝方法とは異なる(火気厳禁の霊園が多い)

自然豊かな環境に惹かれる方が多い樹木葬ですが、しっかり考える必要があるのが、ほとんどが「永代供養墓」としている点です。メリットをとれば管理不要の面などが、デメリットをとれば合祀による改葬不可の面などがあり、何を重要視するかによってメリットになるかデメリットになるかが変わってきます。
しっかり調べて、自分や家族の希望と照らし合わせ、悔いのない埋葬方法を選びましょう。

さて、樹木葬について学ぶと、自然に還るという点からなんとなく「散骨」に似ている埋葬方法だなあと思いませんか?
ですが、具体的な内容を見ていくと、全く異なっていることがわかります。
次の記事では「散骨」について詳しくご紹介し、樹木葬との違いを見ていきたいと思います。

広がる埋葬方法の選択肢①樹木葬

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日本人に共通の「お墓」の概念が定着してから、およそ150年。二度の戦争を経、経済の波に翻弄されながら、日本人の価値観は大きく変化してきました。平均寿命が大幅に延びながらも、結婚せずひとりで生きていく「おひとり様」が増えたことで、人生の最後をどう迎えるかという「終活」についての意識も変わってきています。
こうしたニーズに応えるように、フューネラル・ビジネスの内容も非常に充実したものになってきました。特に、自分の最期をきちんと締めくくるために、これまでよく知られていなかった埋葬方法が広く知られるようになり、選択肢が大幅に広がってきています。
今、人々はどんな埋葬方法を選択しているのでしょうか?

樹木葬について

墓石の代わりに樹木を墓標とする埋葬方法のことを「樹木葬」と言います。「自然葬」という埋葬方法の中のひとつです。
主な形態は以下の3種類です。それぞれ違いを見ていきます。

◇公園型
墓石を建てないということ以外は、ほとんど従来の墓地と変わらない埋葬方法です。墓地や霊園の敷地内に設けられている場合が多くあります。
ほとんどの場合ある程度の面積の区画に「シンボルツリー」として1本の樹を植えて、その周りに遺骨を埋めます。周辺の環境に配慮し大きくならない低木を植えるのが一般的で、特に植樹する地域で生育できる点、生態系に悪影響を与えないという点に鑑み、ハナミズキ、サルスベリ、ウメモドキ、エゾアジサイ、桜、ヤマツツジ、薔薇、楠木といった花が咲く樹木や常緑樹が植えられる傾向にあるようです。

◇ガーデニング型
公園型と似ているガーデニング型ですが、違いは規模にあります。すでに存在している墓地や霊園の一画にスペースが設けられ、花壇のような場所の中に納骨するスペースを作るのです。
シンボルツリーの他、景観に合った様々な種類の花に囲まれて眠ることができます。植えられる草木や花は、公園型と同様墓地としての機能を乱さないような種類のものが選ばれます。

◇里山型
前者2つと大きく異なり、埋葬する場所は「墓地」として認められている山です。カロートや骨壷のような人工物を用いず(場所によっては将来還元する素材で作った骨壷を用いることもあるようです)、自生している草木はそのままにし、なるべく自然を残している場所に埋葬します。四季折々の花々に囲まれた、原始的な形での埋葬です。
元々樹木葬の走りのタイプであった「里山型」ですが、実際にはほとんど普及していません。ここには法律の問題が大きく関わっています。次回の記事で詳しくご説明します。

樹木葬の費用

実際に樹木葬を選択肢のひとつとして考えた場合、気になるのは費用です。基本的な費用の内訳を挙げていきます。

・永代使用料
いわゆる一般的な永代使用料と同様で、一定期間経過すると合祀されます。その後さらに一定期間が過ぎると、骨壷から遺骨を出し、合同の墓地に合祀され遺骨を土に返します。
ほとんどの樹木葬で見られる供養形態です。樹木葬が単身者や少数世帯者に人気があるのは、合祀されるのが前提で、後々の管理を心配しなくていいからという理由が大きいようです。

・納骨料
お骨を埋葬してもらうための手数料です。ほとんどの場合、利用する人数分の料金がかかります。
永代使用料に納骨料が含まれていたり、納骨料の代わりに永代使用料が割高になっていたりする料金形態を採っている業者もあるようです。内訳をしっかり確認しましょう。

・銘板彫刻料
「銘板」とは「ネームプレート」のことです。遺骨を埋葬した場所付近に目印として設置する際に必要になります。
シンボルツリーや周辺の植物は年々変化するので、銘板があればきちんと故人に向かってお参りをすることができます。
必須ではなく、オプションにしている業者もあるようです。

・年間管理料
運営費や管理費として提示されることの多い年間管理料ですが、最近は無料にしている霊園も増えているようです。
単身で樹木葬を希望する場合、支払い方法や期間には特に注意が必要です。自分の死後もきちんと埋葬してもらえるよう、事前に確認しましょう。

樹木葬のメリット・デメリット

樹木葬が自分や家族の希望に合うものなのか、イマイチよくわからないという方が多いと思います。特にデメリットがあるなら、きちんと知っておきたいと思いますよね。
簡単ではありますが、よく採り上げられるメリットとデメリットを以下に挙げました。これを元に、樹木葬について検討してみましょう。
また、機会があれば、家族や友人と相談してみても良いかもしれませんね。

◇樹木葬のメリット
・緑豊かで美しい花に囲まれて眠ることができる
・お墓を建てない分石材費がかからず、費用が安くすむ場合が多い
・宗教を問わない場合が多い
・後継者がいなくても管理の心配がない

◇樹木葬のデメリット
・合祀するため改葬ができない
・一代限りで承継できない場合が多い
・環境の関係でアクセスが不便な場合がある
・通常の参拝方法とは異なる(火気厳禁の霊園が多い)

自然豊かな環境に惹かれる方が多い樹木葬ですが、しっかり考える必要があるのが、ほとんどが「永代供養墓」としている点です。メリットをとれば管理不要の面などが、デメリットをとれば合祀による改葬不可の面などがあり、何を重要視するかによってメリットになるかデメリットになるかが変わってきます。
しっかり調べて、自分や家族の希望と照らし合わせ、悔いのない埋葬方法を選びましょう。

さて、樹木葬について学ぶと、自然に還るという点からなんとなく「散骨」に似ている埋葬方法だなあと思いませんか?
ですが、具体的な内容を見ていくと、全く異なっていることがわかります。
次の記事では「散骨」について詳しくご紹介し、樹木葬との違いを見ていきたいと思います。