広がる埋葬方法の選択肢②散骨

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「散骨」は自然葬という葬法のひとつで、山や海など自然の中にご遺骨を埋葬する方法のことです。先に採り上げた「樹木葬」や、次の記事のテーマとしている「海洋葬」も自然葬のひとつとして考えられています。
墓石の管理が不要で、自然豊かな中で眠りにつくことができるという点から、散骨を選択肢のひとつとして考える方が多いようですが、実は散骨は非常にデリケートな埋葬方法。特に、埋葬に関する法律をよく知っておく必要があり、何かと準備をしておかなければいけないことが多いのです。
トラブルなく、安心して遺骨を埋葬するために、散骨について学んでいきましょう。

散骨の需要と費用

近年散骨を選択する人が増えていると言います。その中で最も大きな理由として挙げられるのが「費用」です。
基本的に、費用は非常に安く抑えることが可能です。大きな負担を占める墓石の代金はゼロ、墓地・霊園に支払う年間費用などは大幅に抑えることが可能です。遺骨は粉末状にする必要がありますが、3万円程度で業者に依頼することが可能です。
散骨は、ほとんどの場合海上に撒くようで、「海洋葬」「海洋散骨」という名称で埋葬の選択肢のひとつとして定着しています。船のチャーター費は20〜30万円ほどかかるようですが、リスクが軽減できるのが特徴です。土地に散骨する場合、関係する法律に抵触する可能性が高くなり、確認を怠ると民事裁判を起こされることもあるからです。これに関しては次項「散骨と法律」で詳しく見ていきます。
単身世帯・核家族の増加に伴い、お墓は一代限りで継承不要、またお墓自体不要であるという考え方が定着してきた昨今。様々な方が散骨に興味を持ち始めているようですが、メリットのひとつとしてはやはり全体的に低価格に抑えられるという点が大きいようです。

散骨と法律

散骨をする上で気をつけるべきなのは散骨する場所です。遺骨を撒くということは、もともとはご遺体であったものを自然の中に撒くということ。タイムカプセルを埋めるようにするわけにはいきません。厚生労働省のホームページにアクセスすると、「墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)」全文28条項が読めるようになっています。
その中に、以下の文章が書かれています。

第1章 総則
第2条 第5項
この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。

ここでは海上についての言及はなく、土地にのみ限定されて定義されています。つまり、土地での散骨はそもそも法律上グレーゾーンに相当するため、危険を伴う可能性が高いのです。
さらに具体的に検証すると、散骨自体が」刑法190条に抵触する恐れがあります。
刑法190条では遺骨損壊罪および遺骨遺棄罪が以下のように定められています。

第190条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。

つまり、散骨を行う場合遺骨は粉末状にしなければならないため、これが遺骨損壊に当たるという解釈、また遺骨を撒くという行為自体が遺骨遺棄に当たるという解釈が可能であるということです。
実際のところ、日本という国家レベルでは表立っては認めてはおらず、黙認しているというのが現状だと思われます。最終的には自治体判断となるケースが多いので、事前にしっかりと確認をとることが大切です。
ちなみに「樹木葬」の場合は、そもそも「墓地」と認められている場所に遺骨を撒いているので、基本的に言及対象とはならないようです。

散骨の注意点

散骨を行うに当たって、注意しなければいけないことがあります。
現状は法律には触れない埋葬方法であるとお伝えしましたが、だからこそ散骨をする場所選びには慎重を期さなければなりません。公共施設への散骨はできませんし、私有地に撒く場合は当然所有者の許可が必要であり、埋葬が可能な場所は大きく限られます。
海洋葬の場合はもう少し緩和れますが、観光地や漁業区域にかかることのないエリアである必要があり、必ずしも自由に埋葬できるわけではありません。どちらにしろ、個人で行うと大きなトラブルを招きかねませんので、十分に情報収集を行わなければなりません。
また、遺族からの反対意見が出やすい埋葬方法であることも注意しなければなりません。遺骨を粉末状にするということ自体に不快感を抱く人は少なくありません。何より、散骨は一度遺骨を撒いてしまうと、二度と回収することができません。「お墓」の概念がないということは、遺骨が必ずその場所に眠っているという事実がなくなるということです。「心の拠り所がなくなる埋葬なんて…」とご家族が不安に感じることもあります。事前にしっかり話しあって、双方納得がいくように「散骨」という埋葬方法を選択できるようにしたいですね。

次回は、散骨の中でも最もメジャーな選択肢である「海洋葬」について見ていきましょう。

広がる埋葬方法の選択肢②散骨

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「散骨」は自然葬という葬法のひとつで、山や海など自然の中にご遺骨を埋葬する方法のことです。先に採り上げた「樹木葬」や、次の記事のテーマとしている「海洋葬」も自然葬のひとつとして考えられています。
墓石の管理が不要で、自然豊かな中で眠りにつくことができるという点から、散骨を選択肢のひとつとして考える方が多いようですが、実は散骨は非常にデリケートな埋葬方法。特に、埋葬に関する法律をよく知っておく必要があり、何かと準備をしておかなければいけないことが多いのです。
トラブルなく、安心して遺骨を埋葬するために、散骨について学んでいきましょう。

散骨の需要と費用

近年散骨を選択する人が増えていると言います。その中で最も大きな理由として挙げられるのが「費用」です。
基本的に、費用は非常に安く抑えることが可能です。大きな負担を占める墓石の代金はゼロ、墓地・霊園に支払う年間費用などは大幅に抑えることが可能です。遺骨は粉末状にする必要がありますが、3万円程度で業者に依頼することが可能です。
散骨は、ほとんどの場合海上に撒くようで、「海洋葬」「海洋散骨」という名称で埋葬の選択肢のひとつとして定着しています。船のチャーター費は20〜30万円ほどかかるようですが、リスクが軽減できるのが特徴です。土地に散骨する場合、関係する法律に抵触する可能性が高くなり、確認を怠ると民事裁判を起こされることもあるからです。これに関しては次項「散骨と法律」で詳しく見ていきます。
単身世帯・核家族の増加に伴い、お墓は一代限りで継承不要、またお墓自体不要であるという考え方が定着してきた昨今。様々な方が散骨に興味を持ち始めているようですが、メリットのひとつとしてはやはり全体的に低価格に抑えられるという点が大きいようです。

散骨と法律

散骨をする上で気をつけるべきなのは散骨する場所です。遺骨を撒くということは、もともとはご遺体であったものを自然の中に撒くということ。タイムカプセルを埋めるようにするわけにはいきません。厚生労働省のホームページにアクセスすると、「墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)」全文28条項が読めるようになっています。
その中に、以下の文章が書かれています。

第1章 総則
第2条 第5項
この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう。

ここでは海上についての言及はなく、土地にのみ限定されて定義されています。つまり、土地での散骨はそもそも法律上グレーゾーンに相当するため、危険を伴う可能性が高いのです。
さらに具体的に検証すると、散骨自体が」刑法190条に抵触する恐れがあります。
刑法190条では遺骨損壊罪および遺骨遺棄罪が以下のように定められています。

第190条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。

つまり、散骨を行う場合遺骨は粉末状にしなければならないため、これが遺骨損壊に当たるという解釈、また遺骨を撒くという行為自体が遺骨遺棄に当たるという解釈が可能であるということです。
実際のところ、日本という国家レベルでは表立っては認めてはおらず、黙認しているというのが現状だと思われます。最終的には自治体判断となるケースが多いので、事前にしっかりと確認をとることが大切です。
ちなみに「樹木葬」の場合は、そもそも「墓地」と認められている場所に遺骨を撒いているので、基本的に言及対象とはならないようです。

散骨の注意点

散骨を行うに当たって、注意しなければいけないことがあります。
現状は法律には触れない埋葬方法であるとお伝えしましたが、だからこそ散骨をする場所選びには慎重を期さなければなりません。公共施設への散骨はできませんし、私有地に撒く場合は当然所有者の許可が必要であり、埋葬が可能な場所は大きく限られます。
海洋葬の場合はもう少し緩和れますが、観光地や漁業区域にかかることのないエリアである必要があり、必ずしも自由に埋葬できるわけではありません。どちらにしろ、個人で行うと大きなトラブルを招きかねませんので、十分に情報収集を行わなければなりません。
また、遺族からの反対意見が出やすい埋葬方法であることも注意しなければなりません。遺骨を粉末状にするということ自体に不快感を抱く人は少なくありません。何より、散骨は一度遺骨を撒いてしまうと、二度と回収することができません。「お墓」の概念がないということは、遺骨が必ずその場所に眠っているという事実がなくなるということです。「心の拠り所がなくなる埋葬なんて…」とご家族が不安に感じることもあります。事前にしっかり話しあって、双方納得がいくように「散骨」という埋葬方法を選択できるようにしたいですね。

次回は、散骨の中でも最もメジャーな選択肢である「海洋葬」について見ていきましょう。