お墓あれこれ② 〜家紋の種類と決まりごと

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家紋の種類①菊の御紋

 家紋の中で最も有名なものは「十六八重表菊紋」通称「菊の御紋」でしょう。かつて後鳥羽上皇が菊の花を愛好していたことから各代の天皇が使用し、皇室の御紋として正式に定められたのが1869年。姿形が好まれたのはもちろん、長寿を祝う花とされていたことも採用された理由でしょう。
紋の名称の「十六八重表菊紋」は「じゅうろくやえおもてきくもん」と読みます。意味を分解すると、
・菊の花びらが「十六」枚ある
・菊の花を重ねて描くことにより「八重」咲きの菊を表している
・線描で描かれて、明るい部分が多い「表」
「菊」花紋章の一種
となります。さらに1871年発布の皇室儀制令により天皇家しか使用できなくなり、各宮家はこの菊紋に独自の図案を組み合わせたものを用いるようになります。戦後は解禁されましたが、やはり「菊の御紋」ですので使用は控えた方が良いようです。ちなみにパスポートに印刷されている菊紋は「十六一重(ひとえ)表菊紋」であり、菊の御紋より簡略化したもので、両者は明確に区別されています。
左:十六八重表菊紋、右:十六一重表菊紋が印刷された日本国パスポート

家紋の種類②五大家紋

どのくらいの数の家紋が存在しているのか確実な数字はわかりませんが、少なくとも200種以上、それぞれの派生系も合わせて5000を超える家紋が存在すると言われています。その中でも特に多く分布しているのが「藤」「桐」「鷹の羽」「木瓜(もっこう)」「片喰(かたばみ)」という「五大家紋」です。5つのうち4つが植物紋です。

藤紋

 藤の花や葉を図案化したもので、藤原氏から派生した諸氏の流れにより苗字に「藤」が入っている家の多くが藤紋を使っています。そのため派生型が非常に多く存在します。藤は長寿で繁殖力の強い植物であるので、それにあやかる意味もあったようです。
左:上り藤(あがりふじ)紋

桐紋

 菊紋と共に天皇家が用いていましたが、次第に将軍家→家臣→庶民へと波及していった人気の紋です。3枚の花序(かじょ・枝につく花の配列状態を指す)と3枚の葉、花序は中央に5つ、左右それぞれに3つの花がつくいわゆる「五三桐(ごさんのきり)」が基本的な形ですが、派生型を含めると140種以上の図案があります。現在は、日本国政府の紋章として用いられています。
左:五三桐紋

鷹の羽紋

 猛禽類の長と言われる鷹は気高く、力強いというイメージから古くから武将たちに好まれてきました(徳川歴代の将軍は、一部を除き権威発揚の意味を込めてよく鷹狩りを実施していました)。ですが、鷹のヴィジュアルをそのまま描くのではなく、鷹の羽根を意匠化したデザインとなっており、現代人の目には少し可愛らしく映ります。
左:丸に違い鷹の羽(まるにちがいたかのは)紋

木瓜紋

 木瓜紋の歴史は古く唐の時代まで遡り、有職文様(平安時代以降の公家の装束や調度品に使われる伝統的な文様)として用いられてきました。瓜の断面図を意匠化したもので、京都は八坂神社の御神紋は木瓜紋の派生型である「五瓜に唐花(ごかにからはな)」です(きゅうりの断面がこの紋に似ていて恐れ多いということで、京都の人々は祇園祭りの間はきゅうりを食べないとか)。
左:五瓜に唐花紋を染めた旗、右:きゅうりの断面

片喰紋

 非常に繁殖力が強く一度根付くと広く群生するため、「家が絶えない」という縁起を担ぎ子孫繁栄の象徴とされていました。春から秋にかけて黄色い花を咲かせるため、黄金草とも呼ばれるようです。
左:剣片喰(けんかたばみ)紋、右:蔓片喰(つるかたばみ)紋

家紋を調べるということ

五大家紋に明らかなように、家紋の中では「植物紋」が最も種類が多いです。他には天・地・気象・自然物を意匠化した「自然紋」、実在の動物だけでなく架空の動物まで意匠化された「動物紋」、建物や生活用具・工具・楽器・通過など幅広いものを意匠化した、植物紋の次に多い「器物紋」、幾何学的なデザインの「文様紋」、文字そのものを家紋にした「文字紋」があります(名称には差異があります)。
どの家紋も、由来や具体的な意味を調べていくと、意外な発見があって楽しいかもしれませんね。「菊の御紋」を除けば、ほとんど自由に使えるのも家紋の良いところ。
これから新しいお墓を建てる方もそうでない方も、一度、自分の家の家紋を調べてみましょう。自分の家や自分自身について、これまでとは違った見方ができるかもしれませんし、広く捉えればこれも「終活」の一部と言えるのではないでしょうか?

お墓あれこれ② 〜家紋の種類と決まりごと

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家紋の種類①菊の御紋

 家紋の中で最も有名なものは「十六八重表菊紋」通称「菊の御紋」でしょう。かつて後鳥羽上皇が菊の花を愛好していたことから各代の天皇が使用し、皇室の御紋として正式に定められたのが1869年。姿形が好まれたのはもちろん、長寿を祝う花とされていたことも採用された理由でしょう。
紋の名称の「十六八重表菊紋」は「じゅうろくやえおもてきくもん」と読みます。意味を分解すると、
・菊の花びらが「十六」枚ある
・菊の花を重ねて描くことにより「八重」咲きの菊を表している
・線描で描かれて、明るい部分が多い「表」
「菊」花紋章の一種
となります。さらに1871年発布の皇室儀制令により天皇家しか使用できなくなり、各宮家はこの菊紋に独自の図案を組み合わせたものを用いるようになります。戦後は解禁されましたが、やはり「菊の御紋」ですので使用は控えた方が良いようです。ちなみにパスポートに印刷されている菊紋は「十六一重(ひとえ)表菊紋」であり、菊の御紋より簡略化したもので、両者は明確に区別されています。
左:十六八重表菊紋、右:十六一重表菊紋が印刷された日本国パスポート

家紋の種類②五大家紋

どのくらいの数の家紋が存在しているのか確実な数字はわかりませんが、少なくとも200種以上、それぞれの派生系も合わせて5000を超える家紋が存在すると言われています。その中でも特に多く分布しているのが「藤」「桐」「鷹の羽」「木瓜(もっこう)」「片喰(かたばみ)」という「五大家紋」です。5つのうち4つが植物紋です。

藤紋

 藤の花や葉を図案化したもので、藤原氏から派生した諸氏の流れにより苗字に「藤」が入っている家の多くが藤紋を使っています。そのため派生型が非常に多く存在します。藤は長寿で繁殖力の強い植物であるので、それにあやかる意味もあったようです。
左:上り藤(あがりふじ)紋

桐紋

 菊紋と共に天皇家が用いていましたが、次第に将軍家→家臣→庶民へと波及していった人気の紋です。3枚の花序(かじょ・枝につく花の配列状態を指す)と3枚の葉、花序は中央に5つ、左右それぞれに3つの花がつくいわゆる「五三桐(ごさんのきり)」が基本的な形ですが、派生型を含めると140種以上の図案があります。現在は、日本国政府の紋章として用いられています。
左:五三桐紋

鷹の羽紋

 猛禽類の長と言われる鷹は気高く、力強いというイメージから古くから武将たちに好まれてきました(徳川歴代の将軍は、一部を除き権威発揚の意味を込めてよく鷹狩りを実施していました)。ですが、鷹のヴィジュアルをそのまま描くのではなく、鷹の羽根を意匠化したデザインとなっており、現代人の目には少し可愛らしく映ります。
左:丸に違い鷹の羽(まるにちがいたかのは)紋

木瓜紋

 木瓜紋の歴史は古く唐の時代まで遡り、有職文様(平安時代以降の公家の装束や調度品に使われる伝統的な文様)として用いられてきました。瓜の断面図を意匠化したもので、京都は八坂神社の御神紋は木瓜紋の派生型である「五瓜に唐花(ごかにからはな)」です(きゅうりの断面がこの紋に似ていて恐れ多いということで、京都の人々は祇園祭りの間はきゅうりを食べないとか)。
左:五瓜に唐花紋を染めた旗、右:きゅうりの断面

片喰紋

 非常に繁殖力が強く一度根付くと広く群生するため、「家が絶えない」という縁起を担ぎ子孫繁栄の象徴とされていました。春から秋にかけて黄色い花を咲かせるため、黄金草とも呼ばれるようです。
左:剣片喰(けんかたばみ)紋、右:蔓片喰(つるかたばみ)紋

家紋を調べるということ

五大家紋に明らかなように、家紋の中では「植物紋」が最も種類が多いです。他には天・地・気象・自然物を意匠化した「自然紋」、実在の動物だけでなく架空の動物まで意匠化された「動物紋」、建物や生活用具・工具・楽器・通過など幅広いものを意匠化した、植物紋の次に多い「器物紋」、幾何学的なデザインの「文様紋」、文字そのものを家紋にした「文字紋」があります(名称には差異があります)。
どの家紋も、由来や具体的な意味を調べていくと、意外な発見があって楽しいかもしれませんね。「菊の御紋」を除けば、ほとんど自由に使えるのも家紋の良いところ。
これから新しいお墓を建てる方もそうでない方も、一度、自分の家の家紋を調べてみましょう。自分の家や自分自身について、これまでとは違った見方ができるかもしれませんし、広く捉えればこれも「終活」の一部と言えるのではないでしょうか?