お盆のお墓参り

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お盆の送り火と迎え火

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お盆の時期は、誰もがお墓参りをする機会が多くなる時期。故人への思いをあらわすという意味では365日いつ行ってもいいお墓参りですが、お盆となると特別な意味が出てきます。お盆は極楽浄土からご先祖様が現世に戻ってくる時期。ということは、お墓にご先祖様を迎えに行くということになるのです。

そこで、極楽浄土からの道しるべになるのが「送り火」です。先祖の霊をお迎えするのが迎え火、送るのが送り火です。
迎え火は家の門口や玄関で焚く場合もあれば、お墓で行う場合もあるなど、地域や宗派によってその形態はさまざまです。一般には、家の門口や玄関で、焙烙(ほうろく)という素焼きのお皿の上でおがら(麻幹・苧殻)を焚いて、先祖の霊を迎えます。お墓で行う場合は、お墓参りをしたあと、お迎え用の提灯に明かりを灯して、その明かりと共に先祖の霊を家まで導いて帰ります。おがらは麻の皮をはいだあとに残る芯の部分のことです。麻は古来より清浄な植物として考えられてきました。清浄な植物なので悪いものを祓い清め、また燃やすことで清浄な空間を作り出すという意味が込められています。
また先祖の霊は、盆提灯の明かりを目印にして家に帰ってくるといわれています。ですから、お盆には必ず盆提灯を飾ります。盆提灯は、新盆の場合は白、そうでない場合は柄のはいった提灯を使います。
おがらを燃やしたその煙に乗って、先祖の霊が家に帰ってくるともいわれています。
焙烙は仏壇店で、おがらはスーパーや花屋さんで購入できますので、事前に準備をしておきましょう。
お盆が終わる日の夕方には、再び同じ場所で焙烙におがらを折って積み重ね、火をつけて燃やします。これが先祖の霊をお送りする送り火です。
京都の有名な大文字焼き(五山の送り火)も送り火のひとつです。また、海の送り火といえるのが灯籠流し。精霊流しとも呼ばれます。由来や時期などは地域によって変わりますが、おおよそはお盆の時期に行われています。

マンションなどの共同住宅の場合、玄関先やベランダで実際に火を焚くことは難しいものです。その場合は盆提灯が迎え火・送り火の役割となります。
新盆用の白提灯は、玄関や部屋の窓際、仏壇の前などに吊るします。白提灯はローソクの火を灯せるようになっていますが、危ないので火を入れないで、ただお飾りするだけで迎え火とする場合も多いです。最近は安全のために盆提灯用のろうそく型の電灯もあります。

浄土真宗は宗派の教えとして、故人はすべて極楽浄土に往生していると考えるため迎え火・送り火は行いません。お盆の間は盆提灯を飾って、仏さまと先祖に感謝をささげます。

09c558378358f3d10bf2e2ef5cd6ce5e_s浄土真宗は「他力本願」の仏教である、とよく言われますが、他の仏教宗派と大きく違うのはご祈祷などを行わないことです。これは、浄土真宗は出家して修行しているお坊様や熱心な在家の信徒以外の、それまでの仏教のルールから外れた人たちを救うことを目的にした宗派だからです。ただ「南無阿弥陀仏」と阿弥陀如来の名前を口に出して称えるだけで(これを称名念仏・しょうみょうねんぶつといいます)浄土に往生できる、難しい仏教の経典を読んだり、学問として学ばなくても良いというのが浄土真宗の教えです。この考え方はつらく厳しい人生に翻弄されていた当時の一般庶民に広く受け入れられ、「たとえ今生がつらくても、念仏を称えれば来世は極楽に生きることができる」という教えは多くの人々の心を救いました。現代でも浄土真宗の信徒が数多くいるのは、仏教へのハードルを下げた開祖親鸞の教えがあってのことです。

お盆のために花を摘む地方も

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供花だけではなく、決まった花を採ってくる決まりがある地方もあります。だいたいスケジュール的にはご先祖様をお迎えする迎え盆前、だいたい12日頃にとりに行くようです。
キキョウ、ナデシコ、ヤマユリ、オミナエシなど地域によってさまざまですが、これも精霊のいる山に取りに行くことが意味がある、ということなので、やってきたご先祖様に宿っていただく依り代ということなのでしょうか。

お盆につきもの、あの野菜で作る動物とは?

お盆は極楽浄土からご先祖様をお招きする期間ですが、ではご先祖様はどうやって移動してこられるのでしょうか。歩いて?電車やバス?飛行機?……というわけではもちろんなく、ご先祖様には専用の乗り物があり、現世の我々はそれを用意する必要があります。それが精霊馬です。
18239dd8c6d0ea83d3a6611b779d9c50_s一般にはキュウリの馬とナスの牛を作り、それぞれかざります。キュウリの馬には「早く現世のわれわれのところに戻ってきてほしい」という願い、ナスの牛には「極楽浄土にはなるべくゆっくり帰ってほしい、それとお供え物をたくさん積んで帰ってほしい」という願いが込められているといいます。地方によっては、「丁寧にお迎えしたいから牛に乗ってきてほしい」「帰りは滞りなく帰ってほしいから馬で帰ってほしい」と逆の由来がある場合もあるそうです。
お盆の時期が終わったら、精霊馬は川や海に流して処分することになっています。しかし最近では、環境への配慮や都市化の影響のため、自宅で処分することも増えました。この場合は、半紙などに包んで捨てましょう。これは他の供え物も同じで、地域によっては「精霊船」といって小さな船にお盆の供物を載せて海に流す、という行事もあります。

一般的なお盆以外の行事にはこんなものも

ご先祖様をお迎えする以外にも、生きた人の魂を供養する行事を行う場合があります。

●イキミタマ(生御霊)
盆の14日・15日には、親や仲人親、名付け親、親戚や知人など現世に生きている人々を訪問し、挨拶をして贈り物をする行事があります。これを「盆礼」といいます。これは別名「イキミタマ」(生御霊)「イキボン」「ショウボン」(生盆)といい、かつては魚などの生臭ものを送っていたといいます。旧盆の行事を行う地域では、お中元の贈答もお盆の季節に合わせて送ることが多いようです。
●盆礼と正月礼
盆礼は正月の「正月礼」と対応する行事でもあります。お正月に、親戚まわりやあいさつ回りをする家は多いでしょう。一般に「お正月は神事、お盆は仏事」といわれ、お盆はおめでたいこととは関係がないように思われていますが、地方によってはこの一年間にご不幸がなかった家では「結構なお盆でおめでとうございます」とご挨拶をするところがあるともいいます。

ご先祖様を無事極楽浄土にお送りできればお盆の行事は終了ですが、これが全て終わってからようやく盆踊り……という地方もおおいようです。夏の盛りではなく、暑さも山を越えて秋の雰囲気が訪れたころの盆踊りは、今年もお盆の行事を無事終えた人間たちのための娯楽、ということなのではないでしょうか、

お盆のお墓参り

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お盆の送り火と迎え火

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お盆の時期は、誰もがお墓参りをする機会が多くなる時期。故人への思いをあらわすという意味では365日いつ行ってもいいお墓参りですが、お盆となると特別な意味が出てきます。お盆は極楽浄土からご先祖様が現世に戻ってくる時期。ということは、お墓にご先祖様を迎えに行くということになるのです。

そこで、極楽浄土からの道しるべになるのが「送り火」です。先祖の霊をお迎えするのが迎え火、送るのが送り火です。
迎え火は家の門口や玄関で焚く場合もあれば、お墓で行う場合もあるなど、地域や宗派によってその形態はさまざまです。一般には、家の門口や玄関で、焙烙(ほうろく)という素焼きのお皿の上でおがら(麻幹・苧殻)を焚いて、先祖の霊を迎えます。お墓で行う場合は、お墓参りをしたあと、お迎え用の提灯に明かりを灯して、その明かりと共に先祖の霊を家まで導いて帰ります。おがらは麻の皮をはいだあとに残る芯の部分のことです。麻は古来より清浄な植物として考えられてきました。清浄な植物なので悪いものを祓い清め、また燃やすことで清浄な空間を作り出すという意味が込められています。
また先祖の霊は、盆提灯の明かりを目印にして家に帰ってくるといわれています。ですから、お盆には必ず盆提灯を飾ります。盆提灯は、新盆の場合は白、そうでない場合は柄のはいった提灯を使います。
おがらを燃やしたその煙に乗って、先祖の霊が家に帰ってくるともいわれています。
焙烙は仏壇店で、おがらはスーパーや花屋さんで購入できますので、事前に準備をしておきましょう。
お盆が終わる日の夕方には、再び同じ場所で焙烙におがらを折って積み重ね、火をつけて燃やします。これが先祖の霊をお送りする送り火です。
京都の有名な大文字焼き(五山の送り火)も送り火のひとつです。また、海の送り火といえるのが灯籠流し。精霊流しとも呼ばれます。由来や時期などは地域によって変わりますが、おおよそはお盆の時期に行われています。

マンションなどの共同住宅の場合、玄関先やベランダで実際に火を焚くことは難しいものです。その場合は盆提灯が迎え火・送り火の役割となります。
新盆用の白提灯は、玄関や部屋の窓際、仏壇の前などに吊るします。白提灯はローソクの火を灯せるようになっていますが、危ないので火を入れないで、ただお飾りするだけで迎え火とする場合も多いです。最近は安全のために盆提灯用のろうそく型の電灯もあります。

浄土真宗は宗派の教えとして、故人はすべて極楽浄土に往生していると考えるため迎え火・送り火は行いません。お盆の間は盆提灯を飾って、仏さまと先祖に感謝をささげます。

09c558378358f3d10bf2e2ef5cd6ce5e_s浄土真宗は「他力本願」の仏教である、とよく言われますが、他の仏教宗派と大きく違うのはご祈祷などを行わないことです。これは、浄土真宗は出家して修行しているお坊様や熱心な在家の信徒以外の、それまでの仏教のルールから外れた人たちを救うことを目的にした宗派だからです。ただ「南無阿弥陀仏」と阿弥陀如来の名前を口に出して称えるだけで(これを称名念仏・しょうみょうねんぶつといいます)浄土に往生できる、難しい仏教の経典を読んだり、学問として学ばなくても良いというのが浄土真宗の教えです。この考え方はつらく厳しい人生に翻弄されていた当時の一般庶民に広く受け入れられ、「たとえ今生がつらくても、念仏を称えれば来世は極楽に生きることができる」という教えは多くの人々の心を救いました。現代でも浄土真宗の信徒が数多くいるのは、仏教へのハードルを下げた開祖親鸞の教えがあってのことです。

お盆のために花を摘む地方も

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供花だけではなく、決まった花を採ってくる決まりがある地方もあります。だいたいスケジュール的にはご先祖様をお迎えする迎え盆前、だいたい12日頃にとりに行くようです。
キキョウ、ナデシコ、ヤマユリ、オミナエシなど地域によってさまざまですが、これも精霊のいる山に取りに行くことが意味がある、ということなので、やってきたご先祖様に宿っていただく依り代ということなのでしょうか。

お盆につきもの、あの野菜で作る動物とは?

お盆は極楽浄土からご先祖様をお招きする期間ですが、ではご先祖様はどうやって移動してこられるのでしょうか。歩いて?電車やバス?飛行機?……というわけではもちろんなく、ご先祖様には専用の乗り物があり、現世の我々はそれを用意する必要があります。それが精霊馬です。
18239dd8c6d0ea83d3a6611b779d9c50_s一般にはキュウリの馬とナスの牛を作り、それぞれかざります。キュウリの馬には「早く現世のわれわれのところに戻ってきてほしい」という願い、ナスの牛には「極楽浄土にはなるべくゆっくり帰ってほしい、それとお供え物をたくさん積んで帰ってほしい」という願いが込められているといいます。地方によっては、「丁寧にお迎えしたいから牛に乗ってきてほしい」「帰りは滞りなく帰ってほしいから馬で帰ってほしい」と逆の由来がある場合もあるそうです。
お盆の時期が終わったら、精霊馬は川や海に流して処分することになっています。しかし最近では、環境への配慮や都市化の影響のため、自宅で処分することも増えました。この場合は、半紙などに包んで捨てましょう。これは他の供え物も同じで、地域によっては「精霊船」といって小さな船にお盆の供物を載せて海に流す、という行事もあります。

一般的なお盆以外の行事にはこんなものも

ご先祖様をお迎えする以外にも、生きた人の魂を供養する行事を行う場合があります。

●イキミタマ(生御霊)
盆の14日・15日には、親や仲人親、名付け親、親戚や知人など現世に生きている人々を訪問し、挨拶をして贈り物をする行事があります。これを「盆礼」といいます。これは別名「イキミタマ」(生御霊)「イキボン」「ショウボン」(生盆)といい、かつては魚などの生臭ものを送っていたといいます。旧盆の行事を行う地域では、お中元の贈答もお盆の季節に合わせて送ることが多いようです。
●盆礼と正月礼
盆礼は正月の「正月礼」と対応する行事でもあります。お正月に、親戚まわりやあいさつ回りをする家は多いでしょう。一般に「お正月は神事、お盆は仏事」といわれ、お盆はおめでたいこととは関係がないように思われていますが、地方によってはこの一年間にご不幸がなかった家では「結構なお盆でおめでとうございます」とご挨拶をするところがあるともいいます。

ご先祖様を無事極楽浄土にお送りできればお盆の行事は終了ですが、これが全て終わってからようやく盆踊り……という地方もおおいようです。夏の盛りではなく、暑さも山を越えて秋の雰囲気が訪れたころの盆踊りは、今年もお盆の行事を無事終えた人間たちのための娯楽、ということなのではないでしょうか、