お線香の由来と功徳

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pixta_2438356_Sお墓参り、お仏壇、法事……。さまざまな場面で活躍するお線香。他の仏具や供物に比べると、その存在感や親密度は抜群、ではないでしょうか。多くの人々は、子供の頃から、家のお仏壇やお盆やお彼岸のお墓参りでお線香に触れていたはず。そのお線香ですが、日本の仏教ではどのような意味を持っているのでしょうか。

まず、基本的なところから。お線香は、その香りと煙を功徳とする供物です。その香りは手向ける先の仏様に届くのはもちろん、線香を焚く本人、さらには周りのすべての人々に区別なく、幅広く行き渡る徳があるとされています。四方無辺に広がり届くという意味では、仏様の大慈悲心と同じ。これは人間にとっては、深い喜びと尊い信心を呼ぶものです。
またお線香は、一度火をつけると燃え尽きてしまうまで芳しい香りを放ち続けます。これは、命ある限り御仏に信仰を捧げる決意を示すと言われています。線香の香りは、その場所とその時間のすべての不浄を清める徳があります。ですから、身体や心の汚れを祓い清め、清らかな姿で仏様にお参りすることができるのだ、ということです。いわば斎戒沐浴の代わり、ということでしょうか。

お香が我が国に初めて入ってきたのは、仏教伝来と同じ西暦538年のことだといいます。仏像や仏教の経典と一緒に、中国大陸から海を越えてやってきました。この時代のお香は、香木を焚いて煙を起こし、その煙で部屋や衣服に香りをつけるものでした。お香のもととなる香木は、熱帯や亜熱帯の地域の植物です。よく使われる白檀はインド原産、伽羅は東南アジア原産ですから、いずれも日本で栽培することはできません。渡来人といわれる、大陸からやってきた人々がもたらすことがほとんどでした。仏教儀式に欠かせないものとして使われていたお香は、やがて貴族の生活に欠かせないものになっていきます。よい香木は非常に高価で、「どんな香木を持っているか」が貴族のステータスのひとつになったのです。衣服に香をたきしめる「薫物(たきもの)」や、お香の香りを判別しあう「薫物合」(たきものあわせ)、「香合」(こうあわせ)という遊びを生みます。薫物合や香合は、その後「香道」となって現代に伝わっています。

時代は下って戦国時代。香木を細かく砕いて炭の粉などと合わせて練り、細く成形した「線香」が、中国大陸から伝わりました。これにより、上流階級のものだったお香が幅広い階層の人々に親しまれるようになったのです。

現代のお線香は、高価になりすぎないよう、また現代の住宅事情にあうようにさまざまな工夫が凝らされています。特に、屋内の仏壇で使うことも多いお線香は、香りが強すぎず、煙が出過ぎないように調整されています。気密性が高い現代日本の家屋に適応するために、お線香もまた進化しているのです。

お線香の由来と功徳

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pixta_2438356_Sお墓参り、お仏壇、法事……。さまざまな場面で活躍するお線香。他の仏具や供物に比べると、その存在感や親密度は抜群、ではないでしょうか。多くの人々は、子供の頃から、家のお仏壇やお盆やお彼岸のお墓参りでお線香に触れていたはず。そのお線香ですが、日本の仏教ではどのような意味を持っているのでしょうか。

まず、基本的なところから。お線香は、その香りと煙を功徳とする供物です。その香りは手向ける先の仏様に届くのはもちろん、線香を焚く本人、さらには周りのすべての人々に区別なく、幅広く行き渡る徳があるとされています。四方無辺に広がり届くという意味では、仏様の大慈悲心と同じ。これは人間にとっては、深い喜びと尊い信心を呼ぶものです。
またお線香は、一度火をつけると燃え尽きてしまうまで芳しい香りを放ち続けます。これは、命ある限り御仏に信仰を捧げる決意を示すと言われています。線香の香りは、その場所とその時間のすべての不浄を清める徳があります。ですから、身体や心の汚れを祓い清め、清らかな姿で仏様にお参りすることができるのだ、ということです。いわば斎戒沐浴の代わり、ということでしょうか。

お香が我が国に初めて入ってきたのは、仏教伝来と同じ西暦538年のことだといいます。仏像や仏教の経典と一緒に、中国大陸から海を越えてやってきました。この時代のお香は、香木を焚いて煙を起こし、その煙で部屋や衣服に香りをつけるものでした。お香のもととなる香木は、熱帯や亜熱帯の地域の植物です。よく使われる白檀はインド原産、伽羅は東南アジア原産ですから、いずれも日本で栽培することはできません。渡来人といわれる、大陸からやってきた人々がもたらすことがほとんどでした。仏教儀式に欠かせないものとして使われていたお香は、やがて貴族の生活に欠かせないものになっていきます。よい香木は非常に高価で、「どんな香木を持っているか」が貴族のステータスのひとつになったのです。衣服に香をたきしめる「薫物(たきもの)」や、お香の香りを判別しあう「薫物合」(たきものあわせ)、「香合」(こうあわせ)という遊びを生みます。薫物合や香合は、その後「香道」となって現代に伝わっています。

時代は下って戦国時代。香木を細かく砕いて炭の粉などと合わせて練り、細く成形した「線香」が、中国大陸から伝わりました。これにより、上流階級のものだったお香が幅広い階層の人々に親しまれるようになったのです。

現代のお線香は、高価になりすぎないよう、また現代の住宅事情にあうようにさまざまな工夫が凝らされています。特に、屋内の仏壇で使うことも多いお線香は、香りが強すぎず、煙が出過ぎないように調整されています。気密性が高い現代日本の家屋に適応するために、お線香もまた進化しているのです。