新しい線香のカタチ

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日本から200キロ程離れた国・台湾は日本とは友好的関係、仏教が盛んで宗教観念が強いという印象があります。そんな台湾の寺院で「線香の煙で大気汚染が悪化する」というニュースを目にしました。お祭り期間にPM2.5が急増するのだそうです。

▶︎ 線香の煙で大気汚染悪化?変わる参拝作法、台湾寺院(AFP BB NEWS)

寺院側も様々な策で改善を試みているようですが、台湾の伝統思想では、爆竹や線香の数が多ければ多いほど信仰が厚いとされ、運が上がると信じられているため、納得できない参拝者は多いようです。ただし、大気汚染の原因は寺院の煙だけでは無いようですが…

五供の一つ「線香」

線香日本でもお墓参りや法事などで五供(ごくう)の一つとして線香はつきもの。仏様へ届ける香りのため、なるべく良い香りが好ましく、中でも沈香が最高とされてきました。
線香を焚く、それはお供えする我々の心身浄化というお清めの意味や、お香の香りが広くその場で行き渡ることで、万物に平等(無縁)という仏様の大慈悲の心を表しているともいわれてます。その他にも線香の良い香りを故人が冥土の旅となる四十九日までの食べ物としていたり、仏様が迷子にならないように香りを届けるなど多様な意味が込められています。
もちろん、今のようにドライアイスで故人を冷やすことができない時代もありましたから、防虫や臭い消しというもっともな理由もありました。

さらに線香の火を口で消してはいけない、とこれは常識ですが、「人間の口」は嘘を言ったり悪口を言ったりと不浄のものとされているため、そんな不浄の口で仏様の炎を消してはならない、という意味もあります。

線香一つにこれだけの多くの意味が込められていると知っている人は少ないのではないでしょうか。台湾を含め海外の国々に比べると宗教観念は極めて低い日本ですが、古くから故人を大切に思う気持ちは確かにあったということなのだと思います。

現存する伝説の香木「蘭奢待」

奈良県の東大寺正倉院に「蘭奢待(らんじゃたい)」という香木が保存されています。その出自や伝来については謎の多い香木ですが、名香と謳われ、長い年月をかけ権力者の間で広まりステータスとなり、「蘭奢待を持つ者=天下人」であるという伝説が生まれていきます。実際に、足利義政、織田信長、明治天皇という時の権力者たちが「蘭奢待」を切り取り、その切り取った場所には付箋が今も残されています。
さらにその名は実は雅名で、「蘭奢待」という漢字をよく見るとそれぞれの漢字の中には「東大寺」という文字が隠れています。
香の歴史、その楽しみ方はとても興味深くロマンのあるものですね。

新しい「線香」のカタチ

香りを楽しむそもそも初めて香木が日本へやってきたのは595年、淡路島に流れ着いたとされています。香文化はインドから中国を経て仏教とともに伝わるわけですが、茶道や華道など芸道と共に、香道は日本独自のものとして貴族の間で発達していきます。

昔から日本人の中には香りを楽しむ心があり、仏教の中でもその価値を見出していきました。そして現代、これまで表現されたことのなかった向日葵など夏花の香りを線香に使用したり、マッチと線香を融合させ海外へ進出したり、マンション住まいの方用に煙や香りの少ないものを開発し入れ物をスタイリッシュな茶筒型にしたり、と新しい線香のカタチが生まれています。線香の香りに心が落ち着く、空間が浄化されると感じる方もいらっしゃるようで、アロマやお香替わりに線香を焚く女性も増えているのだとか。

仏教の中で大きな意味を持ちつつも静かに在り続けてきた「線香」は、現代、また新しいカタチへと生まれ変わりわたしたちの生活へ根付き、引き継がれていくのだと思います。

新しい線香のカタチ

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日本から200キロ程離れた国・台湾は日本とは友好的関係、仏教が盛んで宗教観念が強いという印象があります。そんな台湾の寺院で「線香の煙で大気汚染が悪化する」というニュースを目にしました。お祭り期間にPM2.5が急増するのだそうです。

▶︎ 線香の煙で大気汚染悪化?変わる参拝作法、台湾寺院(AFP BB NEWS)

寺院側も様々な策で改善を試みているようですが、台湾の伝統思想では、爆竹や線香の数が多ければ多いほど信仰が厚いとされ、運が上がると信じられているため、納得できない参拝者は多いようです。ただし、大気汚染の原因は寺院の煙だけでは無いようですが…

五供の一つ「線香」

線香日本でもお墓参りや法事などで五供(ごくう)の一つとして線香はつきもの。仏様へ届ける香りのため、なるべく良い香りが好ましく、中でも沈香が最高とされてきました。
線香を焚く、それはお供えする我々の心身浄化というお清めの意味や、お香の香りが広くその場で行き渡ることで、万物に平等(無縁)という仏様の大慈悲の心を表しているともいわれてます。その他にも線香の良い香りを故人が冥土の旅となる四十九日までの食べ物としていたり、仏様が迷子にならないように香りを届けるなど多様な意味が込められています。
もちろん、今のようにドライアイスで故人を冷やすことができない時代もありましたから、防虫や臭い消しというもっともな理由もありました。

さらに線香の火を口で消してはいけない、とこれは常識ですが、「人間の口」は嘘を言ったり悪口を言ったりと不浄のものとされているため、そんな不浄の口で仏様の炎を消してはならない、という意味もあります。

線香一つにこれだけの多くの意味が込められていると知っている人は少ないのではないでしょうか。台湾を含め海外の国々に比べると宗教観念は極めて低い日本ですが、古くから故人を大切に思う気持ちは確かにあったということなのだと思います。

現存する伝説の香木「蘭奢待」

奈良県の東大寺正倉院に「蘭奢待(らんじゃたい)」という香木が保存されています。その出自や伝来については謎の多い香木ですが、名香と謳われ、長い年月をかけ権力者の間で広まりステータスとなり、「蘭奢待を持つ者=天下人」であるという伝説が生まれていきます。実際に、足利義政、織田信長、明治天皇という時の権力者たちが「蘭奢待」を切り取り、その切り取った場所には付箋が今も残されています。
さらにその名は実は雅名で、「蘭奢待」という漢字をよく見るとそれぞれの漢字の中には「東大寺」という文字が隠れています。
香の歴史、その楽しみ方はとても興味深くロマンのあるものですね。

新しい「線香」のカタチ

香りを楽しむそもそも初めて香木が日本へやってきたのは595年、淡路島に流れ着いたとされています。香文化はインドから中国を経て仏教とともに伝わるわけですが、茶道や華道など芸道と共に、香道は日本独自のものとして貴族の間で発達していきます。

昔から日本人の中には香りを楽しむ心があり、仏教の中でもその価値を見出していきました。そして現代、これまで表現されたことのなかった向日葵など夏花の香りを線香に使用したり、マッチと線香を融合させ海外へ進出したり、マンション住まいの方用に煙や香りの少ないものを開発し入れ物をスタイリッシュな茶筒型にしたり、と新しい線香のカタチが生まれています。線香の香りに心が落ち着く、空間が浄化されると感じる方もいらっしゃるようで、アロマやお香替わりに線香を焚く女性も増えているのだとか。

仏教の中で大きな意味を持ちつつも静かに在り続けてきた「線香」は、現代、また新しいカタチへと生まれ変わりわたしたちの生活へ根付き、引き継がれていくのだと思います。