神道のお葬式 〜諡「おくりな」について

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神道と仏教の違い

「諡」と書いて「おくりな」と読みます。神道の様式でお葬式を上げると、戒名ではなくこの「諡」が付けられます。
神道は日本古来の宗教、仏教はインド発祥・中国を経由して伝わった外国由来の宗教です。
当然考えにも大きな違いが生じますが、顕著であるのが死生観です。
どのように異なっているのか、「戒名」と「諡」の違いとともに見ていきましょう。

仏教の死生観と「戒名」

「仏教は外国由来の宗教」と前置きをしましたが、現代における仏教は既に日本古来の民俗的・信仰的側面を大きく反映させているため、日本独自の宗教になっていると言っても差し支えないでしょう。
仏教と一口に言っても様々な宗派がありますが、概ね共通しているのは「輪廻転生思想」です。生前の行いの善悪により、「六道(りくどう)」という六つの世界のどこかに生まれ変わり続ける思想です。六道の中には再び人間に生まれ変わる「人間道」や、誰もが最も行きたくないであろう「地獄道」が含まれており、どの道に生まれ変わっても煩悩から解放はされません。煩悩から解放されるためには、「解脱(げだつ)」という悟りの境地に達して極楽浄土に行くしかなく、そのためには仏の弟子となって修行する必要があります。そこで授けられるのが「戒名」です。仏の弟子となり、戒律を守る証として授かるもので、本来は生きている間に授与されるものとされており、これを「生前戒名」と言います。終活の一環としてもよく知られています。
また、戒名はお布施を納めて僧侶の方につけていただくため、お金がかかることも特徴のひとつです。

神道の死生観と「諡」

一方神道は、祖先を崇敬する信仰が基になっています。
氏族の始祖を氏神(うじがみ)として、祖先を自分たちの守り神として崇敬します。あらゆる人は死後、家族や親族を見守る御霊となって、「諡」を付けられて祖先である神々のもとへと戻り、自分の子孫の繁栄を見守り続けるのです。この「諡」が神道独自の考え方によるもので、簡単に言えば、生前の人物の徳やおこないを称え付けられる、いわゆる尊称です。多少時代の傾向がありますが一貫した名付けの規則があり、その規則にのっとって名付けられます。そのため特定の方に付けていただく必要はなく、従ってお布施を納める必要もありません。また、戒名のように生前に付けられることはなく、必ず死後に付けられます。
神道では、仏式の位牌にあたる霊璽(れいじ)および、神道のお墓である奥津城(おくつき)に名前を刻むとき、故人の生前の姓名の下に「諡」を、その下に男女の別に関わらず「命(みこと)」という尊号を付します。
最も有名な「諡」は、天皇陛下のものでしょう。明治天皇の「一世一元の制」の詔(みことのり)により、天皇ひとりにつきひとつの元号に制定されたため、崩御されない限り今上天皇には現在の年号はつきません。

諡一覧

諡の付け方は、年齢・性別によって以下のように異なります。古い日本の神話や文学作品に詳しい方なら馴染みがあるかもしれませんね。
現在はここまで厳密ではないようですが、是非参考にしてみてください。

  年齢        幼年期        少年期      青年期    成人・壮年期     老年期 
  男性   稚郎子(わかいらつこ)  郎(いらつこ)  彦(ひこ)  大人(うし)  翁(おきな)
  女性   稚郎女(わかいらつめ)  郎女(いらつめ)  姫(ひめ)  刀自(とじ)  媼(おうな)

神道のお葬式 〜諡「おくりな」について

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神道と仏教の違い

「諡」と書いて「おくりな」と読みます。神道の様式でお葬式を上げると、戒名ではなくこの「諡」が付けられます。
神道は日本古来の宗教、仏教はインド発祥・中国を経由して伝わった外国由来の宗教です。
当然考えにも大きな違いが生じますが、顕著であるのが死生観です。
どのように異なっているのか、「戒名」と「諡」の違いとともに見ていきましょう。

仏教の死生観と「戒名」

「仏教は外国由来の宗教」と前置きをしましたが、現代における仏教は既に日本古来の民俗的・信仰的側面を大きく反映させているため、日本独自の宗教になっていると言っても差し支えないでしょう。
仏教と一口に言っても様々な宗派がありますが、概ね共通しているのは「輪廻転生思想」です。生前の行いの善悪により、「六道(りくどう)」という六つの世界のどこかに生まれ変わり続ける思想です。六道の中には再び人間に生まれ変わる「人間道」や、誰もが最も行きたくないであろう「地獄道」が含まれており、どの道に生まれ変わっても煩悩から解放はされません。煩悩から解放されるためには、「解脱(げだつ)」という悟りの境地に達して極楽浄土に行くしかなく、そのためには仏の弟子となって修行する必要があります。そこで授けられるのが「戒名」です。仏の弟子となり、戒律を守る証として授かるもので、本来は生きている間に授与されるものとされており、これを「生前戒名」と言います。終活の一環としてもよく知られています。
また、戒名はお布施を納めて僧侶の方につけていただくため、お金がかかることも特徴のひとつです。

神道の死生観と「諡」

一方神道は、祖先を崇敬する信仰が基になっています。
氏族の始祖を氏神(うじがみ)として、祖先を自分たちの守り神として崇敬します。あらゆる人は死後、家族や親族を見守る御霊となって、「諡」を付けられて祖先である神々のもとへと戻り、自分の子孫の繁栄を見守り続けるのです。この「諡」が神道独自の考え方によるもので、簡単に言えば、生前の人物の徳やおこないを称え付けられる、いわゆる尊称です。多少時代の傾向がありますが一貫した名付けの規則があり、その規則にのっとって名付けられます。そのため特定の方に付けていただく必要はなく、従ってお布施を納める必要もありません。また、戒名のように生前に付けられることはなく、必ず死後に付けられます。
神道では、仏式の位牌にあたる霊璽(れいじ)および、神道のお墓である奥津城(おくつき)に名前を刻むとき、故人の生前の姓名の下に「諡」を、その下に男女の別に関わらず「命(みこと)」という尊号を付します。
最も有名な「諡」は、天皇陛下のものでしょう。明治天皇の「一世一元の制」の詔(みことのり)により、天皇ひとりにつきひとつの元号に制定されたため、崩御されない限り今上天皇には現在の年号はつきません。

諡一覧

諡の付け方は、年齢・性別によって以下のように異なります。古い日本の神話や文学作品に詳しい方なら馴染みがあるかもしれませんね。
現在はここまで厳密ではないようですが、是非参考にしてみてください。

  年齢        幼年期        少年期      青年期    成人・壮年期     老年期 
  男性   稚郎子(わかいらつこ)  郎(いらつこ)  彦(ひこ)  大人(うし)  翁(おきな)
  女性   稚郎女(わかいらつめ)  郎女(いらつめ)  姫(ひめ)  刀自(とじ)  媼(おうな)