お墓に彫る文字に決まりはあるのか

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a51e43d31efa56b6eff306441dd2e421_sお墓も、いってみれば石碑の一種。ということは、それが何なのかを表示する必要があります。……なんていう前書きは実際はあまり必要ありませんね、お墓の竿石をツルツルの無地にしておく人はいません。
では何を刻むのか。ちょっと簡単に分類してみましょう。

  • 1)個人名(戒名・俗名)
  • 2)家名
  • 3)念仏・題目など
  • 4)その他

まず、1)の個人名です。ここ100年ほどの間に日本のお墓に関する風習は変化して、個人墓から家族墓が主流になりました。個人墓の時代は、当然「◯◯◯◯◯之墓」というように葬られている故人の名前が刻まれることになります。現在でも、著名人のお墓にはこれに類するものがありますが、騒ぎにならないようにハッキリと個人名を出す形は避けることが多いですね。
2)の家名は、ここしばらく主流となっています。家族墓は、都市部における霊園の土地不足から由来したものとされていますが、明治維新後のいわゆる「家制度」の強化と相まって広く日本社会に定着しました。「◯◯家先祖代々之墓」「◯◯家累代之墓」など、また単純に「◯◯家」とだけ刻まれたものもあります。竿石のサイズや縦横比などによって刻める文字数も変わってきますね。
3)の宗教的な経文を刻むケースも、今でもよく見ることができます。この形式のメリットとしては、家名のお墓と比べて異なる名字のお骨がお納めされていてもあまり違和感がないことでしょうか。戦後に進んだ核家族制においては、名字が異なる人は世代が違う、もしくは婚家が違うなどなにがしかの異質性があることを意味してしまいます。しかし大家族制の場合は、そもそも違う世代の家族が同居していたり、結婚に失敗して出戻ってくる家族がいたりするなど名字にも多様性がありました。それを包含するには、家名よりはもう一段階広い範囲まで含むことができるお題目やお念仏は効果的でしょう。基本的には、大家族はひとつのお寺の檀家である、もしくは同じ宗教・宗派に属するわけですからね。
もちろんこのような事情よりも、信心深さからこのような経文をお墓に刻む場合のほうが多いでしょう。この方式で特徴的なのは、日蓮宗の信徒の方が刻む「南無妙法蓮華経」という題目の字体でしょうか。一般に「髭文字」という、漢字の「はらい」の部分を強調した書体を用います。これは開祖である日蓮上人が創始したといわれ、立派な八文字髭のような左右へのはらいが非常に特徴的です。キリスト教徒の方が聖書の聖句や賛美歌を刻むのも、宗教関係という意味ではこの分類でしょうか。
最後に4)のその他です。これは現在非常に増えているパターンですね。「個性化」が尊ばれる現代ならではの、「その人らしい」文字や言葉を刻みたい、というものです。とはいえ、墓石に刻む言葉というのは数十年にわたって残るもの。あまりポップな言葉……たとえばカタカナ言葉や今現在流行している言葉を刻むのは、たとえお墓を建立する人やお納めする故人がどれだけ好きな言葉だったとしても、やはり避けたほうが無難。となると、結局のところは「愛」「まごころ」など、普遍的に好まれる漢語や和語になっていきますね。

最近では、石材店によってはパソコンを使って彫り込む文字のシミュレートをするサービスもあるようです。どんな文字にしたいかを、墓石の種類や形を踏まえて石材店にご相談ください。

お墓に彫る文字に決まりはあるのか

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a51e43d31efa56b6eff306441dd2e421_sお墓も、いってみれば石碑の一種。ということは、それが何なのかを表示する必要があります。……なんていう前書きは実際はあまり必要ありませんね、お墓の竿石をツルツルの無地にしておく人はいません。
では何を刻むのか。ちょっと簡単に分類してみましょう。

  • 1)個人名(戒名・俗名)
  • 2)家名
  • 3)念仏・題目など
  • 4)その他

まず、1)の個人名です。ここ100年ほどの間に日本のお墓に関する風習は変化して、個人墓から家族墓が主流になりました。個人墓の時代は、当然「◯◯◯◯◯之墓」というように葬られている故人の名前が刻まれることになります。現在でも、著名人のお墓にはこれに類するものがありますが、騒ぎにならないようにハッキリと個人名を出す形は避けることが多いですね。
2)の家名は、ここしばらく主流となっています。家族墓は、都市部における霊園の土地不足から由来したものとされていますが、明治維新後のいわゆる「家制度」の強化と相まって広く日本社会に定着しました。「◯◯家先祖代々之墓」「◯◯家累代之墓」など、また単純に「◯◯家」とだけ刻まれたものもあります。竿石のサイズや縦横比などによって刻める文字数も変わってきますね。
3)の宗教的な経文を刻むケースも、今でもよく見ることができます。この形式のメリットとしては、家名のお墓と比べて異なる名字のお骨がお納めされていてもあまり違和感がないことでしょうか。戦後に進んだ核家族制においては、名字が異なる人は世代が違う、もしくは婚家が違うなどなにがしかの異質性があることを意味してしまいます。しかし大家族制の場合は、そもそも違う世代の家族が同居していたり、結婚に失敗して出戻ってくる家族がいたりするなど名字にも多様性がありました。それを包含するには、家名よりはもう一段階広い範囲まで含むことができるお題目やお念仏は効果的でしょう。基本的には、大家族はひとつのお寺の檀家である、もしくは同じ宗教・宗派に属するわけですからね。
もちろんこのような事情よりも、信心深さからこのような経文をお墓に刻む場合のほうが多いでしょう。この方式で特徴的なのは、日蓮宗の信徒の方が刻む「南無妙法蓮華経」という題目の字体でしょうか。一般に「髭文字」という、漢字の「はらい」の部分を強調した書体を用います。これは開祖である日蓮上人が創始したといわれ、立派な八文字髭のような左右へのはらいが非常に特徴的です。キリスト教徒の方が聖書の聖句や賛美歌を刻むのも、宗教関係という意味ではこの分類でしょうか。
最後に4)のその他です。これは現在非常に増えているパターンですね。「個性化」が尊ばれる現代ならではの、「その人らしい」文字や言葉を刻みたい、というものです。とはいえ、墓石に刻む言葉というのは数十年にわたって残るもの。あまりポップな言葉……たとえばカタカナ言葉や今現在流行している言葉を刻むのは、たとえお墓を建立する人やお納めする故人がどれだけ好きな言葉だったとしても、やはり避けたほうが無難。となると、結局のところは「愛」「まごころ」など、普遍的に好まれる漢語や和語になっていきますね。

最近では、石材店によってはパソコンを使って彫り込む文字のシミュレートをするサービスもあるようです。どんな文字にしたいかを、墓石の種類や形を踏まえて石材店にご相談ください。