墓石と大理石・石材から見たお墓
「石」は人間の文化を支えてきた素材
石は、はるか古代から人間の生活を支えてきました。イギリスのストーンヘンジやエジプトのピラミッドなど、石を使って作られた古代の巨大建造物は世界中にありますね。芸術の分野でも、石は素材として人気を博してきました。古くはミロのヴィーナスやサモトラケのニケ、時代が下ってミケランジェロのダヴィデ像など、特にヨーロッパではさまざまな石像が美術史のページをにぎわせてきました。
ひるがえって日本では、石はあまり人気の高い素材ではありませんでした。日本の高温多湿の環境は、石造りの家に住むには向いていません。芸術分野でもそうです。日本の彫刻でもっとも数が多いのは仏像ですが、素材として使われることが多いのは木。ついで、銅など金属をつかった鋳造仏ですね。ほとんどの仏像は、作られた時には金箔などをつかったきらびやかな装飾を施されますが、石はその加工にはあまり向いていないのです。東大寺の盧舎那仏(奈良の大仏)は銅、上野の西郷隆盛像も銅です。
「像」としてはあまり使われませんでしたが、日本の石工技術は世界的に見ても非常に高いのです。その象徴が、お城の石垣です。特に江戸時代初めには、徳川幕府は自分たちの威光を示すために、江戸城(現在の皇居)をはじめ、日本中に巨大なお城を築きました。全国の大名たちは、幕府の命令に従って、領地から巨大な石を切り出して運び、石垣を築きました。石垣は巨大な石を精密に切って組み合わせ、曲線的な壁を作るものです。その設計と石積みの技術は素晴らしく、石と石の間は紙一枚が入る隙間もない、といわれていました。江戸城の他には、最近大規模改修が終わった姫路城、築城の名手として知られる加藤清正の手になる熊本城、御三家筆頭である尾張徳川家の名古屋城などが、石垣の見事さで知られています。
日本で石材が最も活躍するのは「墓石」
さて、前項では石材が日本でよく使われている分野として「石垣」を挙げました。他に石材が使われているところといえば、やはり「墓石」でしょう。日本人が自分でお金を出して「石」を買うのは、ほとんどが墓石を買う場合ではないでしょうか。風流な庭を作る、という場合は「庭石」を買うこともあるかもしれませんが……。
日本の墓石で最も多く用いられている石はなんでしょうか。大理石? いえ、実は大理石は、近年墓石としてはあまり使われません。価格の面もありますが、何よりも大理石は雨が多い日本の気候には合わないのです。現在、日本の墓石のほとんどを占めている素材は、いわゆる「御影石」。これは石材としての呼び名で、石としては「花崗岩」という名前です。
花崗岩は地中深くで形作られた火成岩で、火山活動によってできたマグマがゆっくりと冷えて固まったものです。含まれている成分によって色が違い、「白御影」「青御影」「桃色御影」「赤御影」などと呼ばれています。「黒御影」は花崗岩ではなく、閃緑岩(せんりょくがん)や斑糲岩(はんれいがん)と呼ばれる別の種類の火成岩です。石材としての御影石は、さらに産地ごとにさまざまな名前で呼ばれます。
近年は輸入石材も増えてきました
さて、ここまで日本の名石材について見てきました。しかし、日本での石材産出は減り、価格もかなり高い高級素材になってしまっています。では、墓石の石材はどこから来ているのでしょうか?
正解は海外からの輸入、最近は中国からたくさんの石が来ているのです。日本に墓石用の御影石が本格的に輸入されるようになったのは昭和40(1971)年からですが、それから30年ほど経った2000年代前半だと、墓石に占める輸入石材の割合は80%を超えていたとされます。当初は未加工の石材をそのまま輸入していましたが、最近の主流は中国の現地工場で墓石としての加工を施し、完成品として輸入。さらに、日本産の石材を中国に輸出し、工場で加工して逆輸入……というケースも増えてきました。彫刻も中国で行うことが増えましたし、さまざまなビジネスシーンと同じく、お墓でも中国の存在は無視できないほど大きくなってきましたね。
中国以外でも、さまざまな国からお墓用の石材が輸入されています。
このように、現在の墓石は日本国内だけでなく世界中の石材から作られています。もちろん石材店ごとに扱いのある石種には限りがありますが、カタログやサンプル、実際の墓石などをよく見て石種を決めましょう。実際の霊園に見学に行くのもいいでしょう。不動産を検討するときと同じように、晴れの日、雨の日、午前中、夕方など条件を変えながら、心ゆくまで検討してください。
墓石と大理石・石材から見たお墓
「石」は人間の文化を支えてきた素材
石は、はるか古代から人間の生活を支えてきました。イギリスのストーンヘンジやエジプトのピラミッドなど、石を使って作られた古代の巨大建造物は世界中にありますね。芸術の分野でも、石は素材として人気を博してきました。古くはミロのヴィーナスやサモトラケのニケ、時代が下ってミケランジェロのダヴィデ像など、特にヨーロッパではさまざまな石像が美術史のページをにぎわせてきました。
ひるがえって日本では、石はあまり人気の高い素材ではありませんでした。日本の高温多湿の環境は、石造りの家に住むには向いていません。芸術分野でもそうです。日本の彫刻でもっとも数が多いのは仏像ですが、素材として使われることが多いのは木。ついで、銅など金属をつかった鋳造仏ですね。ほとんどの仏像は、作られた時には金箔などをつかったきらびやかな装飾を施されますが、石はその加工にはあまり向いていないのです。東大寺の盧舎那仏(奈良の大仏)は銅、上野の西郷隆盛像も銅です。
「像」としてはあまり使われませんでしたが、日本の石工技術は世界的に見ても非常に高いのです。その象徴が、お城の石垣です。特に江戸時代初めには、徳川幕府は自分たちの威光を示すために、江戸城(現在の皇居)をはじめ、日本中に巨大なお城を築きました。全国の大名たちは、幕府の命令に従って、領地から巨大な石を切り出して運び、石垣を築きました。石垣は巨大な石を精密に切って組み合わせ、曲線的な壁を作るものです。その設計と石積みの技術は素晴らしく、石と石の間は紙一枚が入る隙間もない、といわれていました。江戸城の他には、最近大規模改修が終わった姫路城、築城の名手として知られる加藤清正の手になる熊本城、御三家筆頭である尾張徳川家の名古屋城などが、石垣の見事さで知られています。
日本で石材が最も活躍するのは「墓石」
さて、前項では石材が日本でよく使われている分野として「石垣」を挙げました。他に石材が使われているところといえば、やはり「墓石」でしょう。日本人が自分でお金を出して「石」を買うのは、ほとんどが墓石を買う場合ではないでしょうか。風流な庭を作る、という場合は「庭石」を買うこともあるかもしれませんが……。
日本の墓石で最も多く用いられている石はなんでしょうか。大理石? いえ、実は大理石は、近年墓石としてはあまり使われません。価格の面もありますが、何よりも大理石は雨が多い日本の気候には合わないのです。現在、日本の墓石のほとんどを占めている素材は、いわゆる「御影石」。これは石材としての呼び名で、石としては「花崗岩」という名前です。
花崗岩は地中深くで形作られた火成岩で、火山活動によってできたマグマがゆっくりと冷えて固まったものです。含まれている成分によって色が違い、「白御影」「青御影」「桃色御影」「赤御影」などと呼ばれています。「黒御影」は花崗岩ではなく、閃緑岩(せんりょくがん)や斑糲岩(はんれいがん)と呼ばれる別の種類の火成岩です。石材としての御影石は、さらに産地ごとにさまざまな名前で呼ばれます。
近年は輸入石材も増えてきました
さて、ここまで日本の名石材について見てきました。しかし、日本での石材産出は減り、価格もかなり高い高級素材になってしまっています。では、墓石の石材はどこから来ているのでしょうか?
正解は海外からの輸入、最近は中国からたくさんの石が来ているのです。日本に墓石用の御影石が本格的に輸入されるようになったのは昭和40(1971)年からですが、それから30年ほど経った2000年代前半だと、墓石に占める輸入石材の割合は80%を超えていたとされます。当初は未加工の石材をそのまま輸入していましたが、最近の主流は中国の現地工場で墓石としての加工を施し、完成品として輸入。さらに、日本産の石材を中国に輸出し、工場で加工して逆輸入……というケースも増えてきました。彫刻も中国で行うことが増えましたし、さまざまなビジネスシーンと同じく、お墓でも中国の存在は無視できないほど大きくなってきましたね。
中国以外でも、さまざまな国からお墓用の石材が輸入されています。
このように、現在の墓石は日本国内だけでなく世界中の石材から作られています。もちろん石材店ごとに扱いのある石種には限りがありますが、カタログやサンプル、実際の墓石などをよく見て石種を決めましょう。実際の霊園に見学に行くのもいいでしょう。不動産を検討するときと同じように、晴れの日、雨の日、午前中、夕方など条件を変えながら、心ゆくまで検討してください。