お墓選びについて

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『墓石は 冥土の旅の 一里塚』……となるか?

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「冥土の旅の一里塚」という言葉がありますが、自分でお墓を建て、墓石を選ぶというのはある意味で人生にとってのひとつのターニングポイントといえるでしょう(この言葉の元は、『門松や 冥土の旅の 一里塚 めでたくもあり めでたくもなし』という一休宗純の狂歌です。あの『一休さん』ですが、ひねくれ者として知られた一休さんらしい歌ですね)。
いってみれば、自分の手で自分の人生に記念碑を建てる、というようなものです。いつ生まれるか、いつ死ぬかは自分では選べませんが、お墓という人生の記念碑は自分でその姿形を選ぶことができるわけです。

現在、日本で選ぶことができるお墓の形にはどのようなものがあるでしょうか。
まず、運営する主体による分類です。

  • 1)寺院や宗教団体が運営する霊園・墓地
  • 2)民間の霊園・墓地
  • 3)公立の霊園・墓地

osonae_flowerと、上記のような分類が思い浮かびます。ここで注意しておくべきことが一点あります。2)の民間の霊園ですが、現在霊園の運営は営利目的で行うことは禁じられています。ですから、「民間の霊園」といってもやたらに費用がかかるとか、儲け第一主義ではないということです。

順番に見ていきましょう。
1)の寺院や宗教団体による霊園は、近年の日本人にとってもっとも身近な形のものではないでしょうか。お寺の境内や隣接する敷地内にあるものです。明治以前の日本では、ほとんどの人が檀家として地域のお寺に結びつけられていました。明治以降この仕組は崩れましたが、お寺とお墓という関係は根強く残りました。明治以降の「家族墓」の風習も、寺院墓地にあるお墓に先祖代々葬られる……というイメージの形成に一役買っています。寺院霊園に入れるのは、基本的にはそのお寺の檀家だけになります。ただし、お寺側が無縁になったお墓を整理して新たに霊園区画を設ける場合などもありますから、チャンスがないというわけではありません。また、近年ではお寺が新たに土地を取得して霊園を解説する場合も増えています。また、ほとんどの場合寺院霊園では墓石の形にも制限があり、いわゆる和型の墓石がほとんどです。
2)の民間の霊園は、現在全国で数多く開発されています。特定のお寺の名前を出さず、地名やイメージのよいネーミングをされているのが特徴でしょうか。都市部ではまとまった土地を取得するのは難しく、また近隣住民から敬遠されることも多いので、人口密度の低い郊外に大規模な霊園開発を行う例が増えています。霊園は誰にとっても必要な施設ですが、火葬場や葬儀場と同じく「自宅の近所にはあってほしくない施設(英語ではNIMBY=Not In My BackYard:裏庭にはごかんべん)」だ、とされています。どうしてもイメージがよいという施設ではないので、しかたのない面もありますが……。
民間の霊園は、直接明示されていなくても、お寺が関係している場合がほとんどです。1)の寺院霊園ほど縛りは厳しくありませんが、「キリスト教・神道お断り」という場合もあります。検討する際にはよく確認しましょう。また、明治以降に発足した新興宗教を信仰しておられる場合、たとえ仏教系の新興宗教でも、在来仏教のお寺の霊園には入ることができない場合があります。この場合、公立の霊園やその宗教団体が運営している霊園を探されるとよいでしょう。宗教団体によっては、全国に多くの専用霊園を運営しています。
3)の公立霊園ですが、公営という性格上墓域の使用料が1)や2)よりも安い場合がほとんどです。そのため非常に人気が高く、順番待ちをしている霊園もあります。特に東京の場合、都立の青山霊園、谷中霊園、染井霊園など著名な霊園は基本的には新規の造成は終了しており、使用する方がいなくなった場合など空きが出た場合のみ使用することができます。また、公立の場合はすでにご遺骨があることが要求されるなど、寺院・民間のものよりも条件が厳しいことがほとんどです。逆に、宗教宗派による制限はなく、墓石の制限もない場合がほとんどです。

さて、次に霊園の形態で分類してみましょう。これは簡単です。

  • 1)屋外の墓地・霊園
  • 2)屋内の納骨堂

pixta_4888551_S1)については、これは一般的に皆さんがイメージする通りの霊園のことです。屋外に整然と墓石が並び、墓域の大小に応じて墓石のサイズにも区別がある。屋外ですから墓石に汚れもつきますし、墓域には雑草も生えます。このお手入れも供養のうちですから、定期的にお参りに行く必要があります。近年徐々に増えている樹木葬や自然葬なども、このカテゴリに入ります。
2)ですが、近年このスタイルの納骨堂が新規に開発されるケースが増えてきました。最大のメリットはスペースが少なくて済むこと。立体的な構造を取れること、さらに地下に納骨スペースを設けることができれば集積の度合いは高くなり、一柱あたりの必要面積は少なくなります。事前に管理者に連絡しておけば、対面スペースにご遺骨を出しておいていただき、お参りすることができるサービスもあります。永代供養墓や合葬墓はこちらに入るでしょうか。
また、地域によっては伝統的に屋外の霊園よりも納骨堂が好まれることもあります。福岡県の一部では、地区ごとに納骨堂が設けられていたり、お寺の裏に小規模の納骨堂がある場合があります。このような地域では、屋外の霊園には外から転入してきた方が入ることが多いようです。

新たにお墓を選ぼうという場合には、運営主体×形態の組み合わせから選んでいくことになります。先祖代々檀家になっているお寺がある場合は「寺院×屋外」になるでしょうが、そろそろお寺との関係性を考え直したいという場合は「民間×屋外」、都会住まいで遠くまでお墓参りに行くのが難しい場合は「民間×屋内」でしょう。もしお住いの地域に新たに公立の霊園が計画されていれば、抽選で運試しをしてもいいかもしれません。
急な不幸でお墓を選ぶ、というのは心身ともに非常につらいことです。お墓のことを常日頃から考えるという習慣は多くの人にはないでしょうが、いざというときのために少しでも考えを深めたり、情報を集めておいてもいいのではないでしょうか。

お墓選びについて

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『墓石は 冥土の旅の 一里塚』……となるか?

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「冥土の旅の一里塚」という言葉がありますが、自分でお墓を建て、墓石を選ぶというのはある意味で人生にとってのひとつのターニングポイントといえるでしょう(この言葉の元は、『門松や 冥土の旅の 一里塚 めでたくもあり めでたくもなし』という一休宗純の狂歌です。あの『一休さん』ですが、ひねくれ者として知られた一休さんらしい歌ですね)。
いってみれば、自分の手で自分の人生に記念碑を建てる、というようなものです。いつ生まれるか、いつ死ぬかは自分では選べませんが、お墓という人生の記念碑は自分でその姿形を選ぶことができるわけです。

現在、日本で選ぶことができるお墓の形にはどのようなものがあるでしょうか。
まず、運営する主体による分類です。

  • 1)寺院や宗教団体が運営する霊園・墓地
  • 2)民間の霊園・墓地
  • 3)公立の霊園・墓地

osonae_flowerと、上記のような分類が思い浮かびます。ここで注意しておくべきことが一点あります。2)の民間の霊園ですが、現在霊園の運営は営利目的で行うことは禁じられています。ですから、「民間の霊園」といってもやたらに費用がかかるとか、儲け第一主義ではないということです。

順番に見ていきましょう。
1)の寺院や宗教団体による霊園は、近年の日本人にとってもっとも身近な形のものではないでしょうか。お寺の境内や隣接する敷地内にあるものです。明治以前の日本では、ほとんどの人が檀家として地域のお寺に結びつけられていました。明治以降この仕組は崩れましたが、お寺とお墓という関係は根強く残りました。明治以降の「家族墓」の風習も、寺院墓地にあるお墓に先祖代々葬られる……というイメージの形成に一役買っています。寺院霊園に入れるのは、基本的にはそのお寺の檀家だけになります。ただし、お寺側が無縁になったお墓を整理して新たに霊園区画を設ける場合などもありますから、チャンスがないというわけではありません。また、近年ではお寺が新たに土地を取得して霊園を解説する場合も増えています。また、ほとんどの場合寺院霊園では墓石の形にも制限があり、いわゆる和型の墓石がほとんどです。
2)の民間の霊園は、現在全国で数多く開発されています。特定のお寺の名前を出さず、地名やイメージのよいネーミングをされているのが特徴でしょうか。都市部ではまとまった土地を取得するのは難しく、また近隣住民から敬遠されることも多いので、人口密度の低い郊外に大規模な霊園開発を行う例が増えています。霊園は誰にとっても必要な施設ですが、火葬場や葬儀場と同じく「自宅の近所にはあってほしくない施設(英語ではNIMBY=Not In My BackYard:裏庭にはごかんべん)」だ、とされています。どうしてもイメージがよいという施設ではないので、しかたのない面もありますが……。
民間の霊園は、直接明示されていなくても、お寺が関係している場合がほとんどです。1)の寺院霊園ほど縛りは厳しくありませんが、「キリスト教・神道お断り」という場合もあります。検討する際にはよく確認しましょう。また、明治以降に発足した新興宗教を信仰しておられる場合、たとえ仏教系の新興宗教でも、在来仏教のお寺の霊園には入ることができない場合があります。この場合、公立の霊園やその宗教団体が運営している霊園を探されるとよいでしょう。宗教団体によっては、全国に多くの専用霊園を運営しています。
3)の公立霊園ですが、公営という性格上墓域の使用料が1)や2)よりも安い場合がほとんどです。そのため非常に人気が高く、順番待ちをしている霊園もあります。特に東京の場合、都立の青山霊園、谷中霊園、染井霊園など著名な霊園は基本的には新規の造成は終了しており、使用する方がいなくなった場合など空きが出た場合のみ使用することができます。また、公立の場合はすでにご遺骨があることが要求されるなど、寺院・民間のものよりも条件が厳しいことがほとんどです。逆に、宗教宗派による制限はなく、墓石の制限もない場合がほとんどです。

さて、次に霊園の形態で分類してみましょう。これは簡単です。

  • 1)屋外の墓地・霊園
  • 2)屋内の納骨堂

pixta_4888551_S1)については、これは一般的に皆さんがイメージする通りの霊園のことです。屋外に整然と墓石が並び、墓域の大小に応じて墓石のサイズにも区別がある。屋外ですから墓石に汚れもつきますし、墓域には雑草も生えます。このお手入れも供養のうちですから、定期的にお参りに行く必要があります。近年徐々に増えている樹木葬や自然葬なども、このカテゴリに入ります。
2)ですが、近年このスタイルの納骨堂が新規に開発されるケースが増えてきました。最大のメリットはスペースが少なくて済むこと。立体的な構造を取れること、さらに地下に納骨スペースを設けることができれば集積の度合いは高くなり、一柱あたりの必要面積は少なくなります。事前に管理者に連絡しておけば、対面スペースにご遺骨を出しておいていただき、お参りすることができるサービスもあります。永代供養墓や合葬墓はこちらに入るでしょうか。
また、地域によっては伝統的に屋外の霊園よりも納骨堂が好まれることもあります。福岡県の一部では、地区ごとに納骨堂が設けられていたり、お寺の裏に小規模の納骨堂がある場合があります。このような地域では、屋外の霊園には外から転入してきた方が入ることが多いようです。

新たにお墓を選ぼうという場合には、運営主体×形態の組み合わせから選んでいくことになります。先祖代々檀家になっているお寺がある場合は「寺院×屋外」になるでしょうが、そろそろお寺との関係性を考え直したいという場合は「民間×屋外」、都会住まいで遠くまでお墓参りに行くのが難しい場合は「民間×屋内」でしょう。もしお住いの地域に新たに公立の霊園が計画されていれば、抽選で運試しをしてもいいかもしれません。
急な不幸でお墓を選ぶ、というのは心身ともに非常につらいことです。お墓のことを常日頃から考えるという習慣は多くの人にはないでしょうが、いざというときのために少しでも考えを深めたり、情報を集めておいてもいいのではないでしょうか。