お墓参りの仕方

投稿日:

ちょっと知っておきたい、お墓参りのノウハウ

お墓参りには明確な決まりはありません……というのは何度か申し上げてきましたが、それでも「ちょっと知っておくといいこと」というのはあります。ここでお話するのはいってみればプラスアルファの面、知っておくとちょっといいこと、です。こういうことが身についてないからお墓参りにはいけない……というものではありません。そうやって構えてしまってお参りから足が遠のいてしまう、というのが故人やご先祖様にとっていちばんよくないことです。まずはできるだけ足を運ぶ、その上でさらに気にかけることができれば、より充実したお墓参りができるようになる、というものです。

 
6e3265d0dfa98a02011bbebf301cf7c2_s

・お線香のあげ方
お線香の意味や由来についてはすでに申し上げました。(→お線香の由来と功徳)ここでは、仏教の各宗派におけるお線香の取り扱いについて取り上げます。
天台宗・真言宗はお線香を3本(身・口・意、または仏・法・僧に)、禅宗(曹洞宗・臨済宗など)はお線香を1本または2本(戒律・禅定を誓って)、日蓮宗はお線香を1本立てて、浄土宗と浄土真宗(大谷派・西本願寺派)はお線香1本を、それぞれ折って横にします。ただし、決まりのない宗派もあります。もし「正しいやり方で」という人は、菩提寺のお坊さんに尋ねるとよいでしょう。
お線香には、「異臭を消して空気を清浄にする」「眠気を覚ます(座禅のとき)」「時間を計る(座禅のとき)」の効用があります。インドでは「死後は香を食べる」と信じられていました。線香や抹香は、水とともに亡き人への食べ物として大切な供物とも言えるのです。
名号を称える
名号は各宗派のご本尊さまの名前で、墓前で合掌するときに称えます。
いわゆる「ナムアミダブツ」ですね。これは各宗派によって異なります。
  • ・天台宗:「南無阿弥陀仏」(なむあみだぶつ)
  • ・真言宗:「南無大師遍照金剛」(なむだいしへんじょうこんごう)
  • ・禅宗:(曹洞宗・臨済宗など):「南無釈迦牟尼仏」(なむしゃかむにぶつ)
  • ・浄土宗・浄土真宗:「南無阿弥陀仏」(なむあみだぶつ)
  • ・日蓮宗:「南無妙法蓮華教」(なむみょうほうれんげきょう)

    ※日蓮宗の場合は、名号ではなく題目となります。

浄土真宗と日蓮宗以外は、「般若心経」を墓前で称えても構いません。般若心経は大変よく知られているお経で、熱心な仏教の信者でない方でも暗唱したり、写経したりする方がいらっしゃいます。さらに、仏教だけではなく、神道の神社や修験道の山伏でも称えることがあります。日本でも古くから民間信仰の一部として広まり、有名なところでは怪談「耳なし芳一」の中で平家の怨霊から芳一の身を守るために、和尚さんが芳一の全身に書いたのが般若心経です。内容としては、仏教における悟りの真髄を書き記した、仏教にとっての中心的な経典だと言えるでしょう。日本で一般的に読まれているのは、サンスクリット語の原典を唐の僧侶・玄奘三蔵が漢語に訳したもの。玄奘三蔵とは、「西遊記」でもおなじみの三蔵法師のことで、実在の三蔵法師はお話の中同様インドまで尊いお経を探す旅に出かけています。往復に16年間を費やし、657部の経典を持ち帰りました。以後経典の漢語訳に励み、訳聖(経典翻訳の聖人)といわれるほどの功績を残しました。残念ながら孫悟空、猪八戒、沙悟浄といったお供はいなかったようですね。ともかく、この玄奘三蔵や、唐から日本に仏教の教えを広めようと渡海してきた鑑真和上のような偉大な僧の活躍もあって、インドから発した仏教は現代でも多くの人が救いを求める世界的な宗教になったのです。

198d895e836dec537d6658e2643d21d6_s

少し話がそれました。般若心経を用いない浄土真宗と日蓮宗には、それぞれ理由があります。浄土真宗では、「本願他力で阿弥陀如来にお縋りすれば救われる」という考え方なので、念仏(南無阿弥陀仏)を称えれば十分。法華宗では、法華経がもっとも重要な経典であり、他のお経を称える時間があるなら法華経を称えなさい、という考え方だからです。
正しい宗派別の墓前の読経については、菩提寺で尋ねるとよいでしょう。

・お数珠と合掌
お数珠の形や使い方も宗派によって異なります。一般的には左手に持ち、親指と人差し指の間にかけて合掌します。

 

真言宗
お数珠
主玉108個、親玉2個、四天玉4個に、菊房のついたもの。
持ち方
①両手の中指でお数珠を掛けます。 ②そのまま合掌します。 ③房は自然と垂らします。

日蓮宗
お数珠
長い一連の珠数に四十一個の下がり玉の付いた菊房。
持ち方
①数珠の輪を8の字に捻じり、中指に掛けます。 ②右手に二本に房、左手に三本房が来るように持ちます。
③そのまま合掌します。

浄土宗
お数珠
浄土宗の数珠は、2つの輪を一つに繋いだような形状が特徴。
持ち方
①2つある輪の親玉を揃えます。 ②合掌した手の親指に掛け、房は手前に下します。
③また、浄土宗内の宗派によっては、房を外側に下す持ち方をします。

浄土真宗
お数珠
長い一連の珠数を二重にして用いる。
主玉108個、親玉2個、四天玉4個で構成され、片方の房が蓮如結びと呼ばれる結び方をしているのが特徴。
持ち方
* 本願寺派(お西):お数珠を二重にし、合掌した手に掛け、房を下に垂らします。
* 大谷派(お東):二重にしたお数珠の親指と人差し指の間ではさみ、房は左手側に垂らします。

禅宗(臨済宗・曹洞宗)
お数珠
主珠108個の長い一連の珠数が用いられる。曹洞宗と臨済宗のお数珠は基本的に同じだが、曹洞宗用のものには、金属の輪があり、臨済宗のお数珠にはない。
持ち方
①数珠を二輪にし、左手に掛けます。 ②そのまま右手を合わせ、合掌します。

天台宗
お数珠
扁平な平玉(ミカンのような形)が特徴。主玉108個、親玉1個、四天玉4個で構成され、親玉から連なる房には20の平玉と10の丸玉が付いている。
持ち方
①お数珠を、人差し指と中指の間に掛けます。 ②そのまま合掌します。
合掌の仕方
合掌はインド由来の仏教の礼法です。これには二通りのやり方があります。密教(天台宗や真言宗)以外の宗派では、二つの掌(右が仏さま、左が自分)の指と掌をすき間なくぴったりと合わせます。これが最も一般的な方法です。密教では、十二合掌といって、二つの手の指をそれぞれの間へ交互にぴったり組み合わせて合掌します。
神道の神社に参拝するときには柏手を打ちますが、正しくはその後は手を両脇に下ろし、お辞儀して礼拝します。なんとなく柏手を打った流れでそのまま合唱して一礼してしまいますが、これは違うのです。

まとめ

寺院墓地であれば、正しいお墓参りの方法はお寺に聞くことができます。しかし民営や公営の霊園の場合は聞くのは難しいですから、ご法事などでお坊様にお会いする機会があったときに、きちんとうかがっておきましょう。

お墓参りの仕方

投稿日:

ちょっと知っておきたい、お墓参りのノウハウ

お墓参りには明確な決まりはありません……というのは何度か申し上げてきましたが、それでも「ちょっと知っておくといいこと」というのはあります。ここでお話するのはいってみればプラスアルファの面、知っておくとちょっといいこと、です。こういうことが身についてないからお墓参りにはいけない……というものではありません。そうやって構えてしまってお参りから足が遠のいてしまう、というのが故人やご先祖様にとっていちばんよくないことです。まずはできるだけ足を運ぶ、その上でさらに気にかけることができれば、より充実したお墓参りができるようになる、というものです。

 
6e3265d0dfa98a02011bbebf301cf7c2_s

・お線香のあげ方
お線香の意味や由来についてはすでに申し上げました。(→お線香の由来と功徳)ここでは、仏教の各宗派におけるお線香の取り扱いについて取り上げます。
天台宗・真言宗はお線香を3本(身・口・意、または仏・法・僧に)、禅宗(曹洞宗・臨済宗など)はお線香を1本または2本(戒律・禅定を誓って)、日蓮宗はお線香を1本立てて、浄土宗と浄土真宗(大谷派・西本願寺派)はお線香1本を、それぞれ折って横にします。ただし、決まりのない宗派もあります。もし「正しいやり方で」という人は、菩提寺のお坊さんに尋ねるとよいでしょう。
お線香には、「異臭を消して空気を清浄にする」「眠気を覚ます(座禅のとき)」「時間を計る(座禅のとき)」の効用があります。インドでは「死後は香を食べる」と信じられていました。線香や抹香は、水とともに亡き人への食べ物として大切な供物とも言えるのです。
名号を称える
名号は各宗派のご本尊さまの名前で、墓前で合掌するときに称えます。
いわゆる「ナムアミダブツ」ですね。これは各宗派によって異なります。
  • ・天台宗:「南無阿弥陀仏」(なむあみだぶつ)
  • ・真言宗:「南無大師遍照金剛」(なむだいしへんじょうこんごう)
  • ・禅宗:(曹洞宗・臨済宗など):「南無釈迦牟尼仏」(なむしゃかむにぶつ)
  • ・浄土宗・浄土真宗:「南無阿弥陀仏」(なむあみだぶつ)
  • ・日蓮宗:「南無妙法蓮華教」(なむみょうほうれんげきょう)

    ※日蓮宗の場合は、名号ではなく題目となります。

浄土真宗と日蓮宗以外は、「般若心経」を墓前で称えても構いません。般若心経は大変よく知られているお経で、熱心な仏教の信者でない方でも暗唱したり、写経したりする方がいらっしゃいます。さらに、仏教だけではなく、神道の神社や修験道の山伏でも称えることがあります。日本でも古くから民間信仰の一部として広まり、有名なところでは怪談「耳なし芳一」の中で平家の怨霊から芳一の身を守るために、和尚さんが芳一の全身に書いたのが般若心経です。内容としては、仏教における悟りの真髄を書き記した、仏教にとっての中心的な経典だと言えるでしょう。日本で一般的に読まれているのは、サンスクリット語の原典を唐の僧侶・玄奘三蔵が漢語に訳したもの。玄奘三蔵とは、「西遊記」でもおなじみの三蔵法師のことで、実在の三蔵法師はお話の中同様インドまで尊いお経を探す旅に出かけています。往復に16年間を費やし、657部の経典を持ち帰りました。以後経典の漢語訳に励み、訳聖(経典翻訳の聖人)といわれるほどの功績を残しました。残念ながら孫悟空、猪八戒、沙悟浄といったお供はいなかったようですね。ともかく、この玄奘三蔵や、唐から日本に仏教の教えを広めようと渡海してきた鑑真和上のような偉大な僧の活躍もあって、インドから発した仏教は現代でも多くの人が救いを求める世界的な宗教になったのです。

198d895e836dec537d6658e2643d21d6_s

少し話がそれました。般若心経を用いない浄土真宗と日蓮宗には、それぞれ理由があります。浄土真宗では、「本願他力で阿弥陀如来にお縋りすれば救われる」という考え方なので、念仏(南無阿弥陀仏)を称えれば十分。法華宗では、法華経がもっとも重要な経典であり、他のお経を称える時間があるなら法華経を称えなさい、という考え方だからです。
正しい宗派別の墓前の読経については、菩提寺で尋ねるとよいでしょう。

・お数珠と合掌
お数珠の形や使い方も宗派によって異なります。一般的には左手に持ち、親指と人差し指の間にかけて合掌します。

 

真言宗
お数珠
主玉108個、親玉2個、四天玉4個に、菊房のついたもの。
持ち方
①両手の中指でお数珠を掛けます。 ②そのまま合掌します。 ③房は自然と垂らします。

日蓮宗
お数珠
長い一連の珠数に四十一個の下がり玉の付いた菊房。
持ち方
①数珠の輪を8の字に捻じり、中指に掛けます。 ②右手に二本に房、左手に三本房が来るように持ちます。
③そのまま合掌します。

浄土宗
お数珠
浄土宗の数珠は、2つの輪を一つに繋いだような形状が特徴。
持ち方
①2つある輪の親玉を揃えます。 ②合掌した手の親指に掛け、房は手前に下します。
③また、浄土宗内の宗派によっては、房を外側に下す持ち方をします。

浄土真宗
お数珠
長い一連の珠数を二重にして用いる。
主玉108個、親玉2個、四天玉4個で構成され、片方の房が蓮如結びと呼ばれる結び方をしているのが特徴。
持ち方
* 本願寺派(お西):お数珠を二重にし、合掌した手に掛け、房を下に垂らします。
* 大谷派(お東):二重にしたお数珠の親指と人差し指の間ではさみ、房は左手側に垂らします。

禅宗(臨済宗・曹洞宗)
お数珠
主珠108個の長い一連の珠数が用いられる。曹洞宗と臨済宗のお数珠は基本的に同じだが、曹洞宗用のものには、金属の輪があり、臨済宗のお数珠にはない。
持ち方
①数珠を二輪にし、左手に掛けます。 ②そのまま右手を合わせ、合掌します。

天台宗
お数珠
扁平な平玉(ミカンのような形)が特徴。主玉108個、親玉1個、四天玉4個で構成され、親玉から連なる房には20の平玉と10の丸玉が付いている。
持ち方
①お数珠を、人差し指と中指の間に掛けます。 ②そのまま合掌します。
合掌の仕方
合掌はインド由来の仏教の礼法です。これには二通りのやり方があります。密教(天台宗や真言宗)以外の宗派では、二つの掌(右が仏さま、左が自分)の指と掌をすき間なくぴったりと合わせます。これが最も一般的な方法です。密教では、十二合掌といって、二つの手の指をそれぞれの間へ交互にぴったり組み合わせて合掌します。
神道の神社に参拝するときには柏手を打ちますが、正しくはその後は手を両脇に下ろし、お辞儀して礼拝します。なんとなく柏手を打った流れでそのまま合唱して一礼してしまいますが、これは違うのです。

まとめ

寺院墓地であれば、正しいお墓参りの方法はお寺に聞くことができます。しかし民営や公営の霊園の場合は聞くのは難しいですから、ご法事などでお坊様にお会いする機会があったときに、きちんとうかがっておきましょう。