広がる埋葬方法の選択肢④納骨堂

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現代の私たちが持っている「お墓」や「埋葬」のイメージを大きく変えたもののひとつが納骨堂です。
もともとは火葬された遺骨を一時保管するための設備でしたが、現在は大きく役割を変え、納骨堂自体をお墓として運用する動きが活発化しています。
現代のライフスタイルに合わせやすいということで、近年ますます人気が高まっていく納骨堂での埋葬。以前の記事では納骨堂の種類や管理形態についてご紹介しましたので、今回はなぜ納骨堂という埋葬方法に人気があるかをご紹介します。

なぜ納骨堂を選ぶのか 〜納骨堂ならではのメリットとは?

これまで様々な種類の埋葬方法をご紹介してきましたが、なかでも納骨堂は最もよく選ばれる埋葬方法です。
納骨堂が従来のお墓と最も異なっているのは、屋内で「お墓まいり」ができるということです。空調設備が整った建物のなかで天候を気にせずにお参りができますし、お墓の掃除が不要なので荷物もほとんど必要ありません。納骨堂は、忙しい現代人のライフスタイルに合致した、まさに時代に求められているお墓まいりを可能にしてくれていると言えます。
また、ほとんどの納骨堂は宗教・宗派を問いません。神道やキリスト教徒の方を受け入れてくれるところもあります。すべての人々に平等に開かれた埋葬方法であるというのは、多様性を認め合いたい現代社会に特に必要とされる考え方です。
これらをまとめてみると、納骨堂の一番の魅力は個を尊重してくれる埋葬方法だということです。納骨堂は基本的にカロートに比べて骨壷の収容面積が少ないため、少人数分の納骨しか対応できません。逆に言えば、単身世代や夫婦のみのお墓を考えている方には非常に身近に感じられる埋葬方法なのです。
また、納骨堂は最終的に永代供養に切り替わる契約形態となっており、お墓の後継者に悩む方の精神的ストレスを減らしてくれるのも、選ばれる大きな理由のひとつとなっています。

自動搬送式納骨堂が選ばれる理由

納骨堂には、主に3種類の形態のものが存在します。
コンパクトかつリーズナブルな面が魅力のロッカー式納骨堂
「お参りをする」というお墓らしさをしっかりと演出してくれる仏壇式納骨堂
そして今非常に需要が高いのが、しっかりした設備・機能で管理された自動搬送式納骨堂です。
まず納骨堂に到着すると、受付でICカードを1枚渡されます。お参りで必要なのはこれだけです。
カードをタッチパネルにかざすと、「厨子(ずし)」と呼ばれる骨壷を納めた箱が、個別に仕切られた参拝室に機械によって運ばれてきます。この厨子は、コンピュータで制御された大きな保管庫の中に入っています。厨子が運ばれてくると、立体駐車場のような機械式で参拝室に墓石が現れ、お参りできるという仕組みです。完全ではありませんが、参拝室内には仕切りがいくつか設けられており、各人・各世帯ごとにプライバシーを確保した上でのお参りを可能にしています。
厨子がどのような仕組みで運ばれるのでしょうか? ここで採用されているのは、工場や物流センターでおなじみの「ピッキング」というシステムを基に開発されたものです。商品や部品などをコンピュータの指示通りに取り出し、決められた場所に運び出すという構造になっています。当然大きなキャパシティを必要としますが、裏を返せば、それだけ多くの骨壷を収蔵できるということ。収蔵庫を地下に設けて、参拝室を地上階に設けることでスペース不足を解消できるため、都内のなかでも非常に利便性の高い場所に建てられるため、参拝しやすいのも大きなメリットです。
限られたスペースを有効活用するため、通常のお参りでお供えをするお花やお線香、故人の好きなものといったものは置くことができません。ですが、これも裏を返せば、手ぶらでお墓参りをしても構わないということです。仕事帰り、買い物帰りにコーヒーを片手にお墓参り。そんな方も増えているようです。
お墓まいりは本来、お盆やお彼岸だけでなく、いつ行っても構わないもの。だからこそ、こうしてカジュアルにお参りできる自動搬送式納骨堂は、本来のお墓まいりのあり方を私たちに示してくれているような気がします。

改葬・墓じまいについて

実際に納骨堂への埋葬を決めた場合、多くの方が行わなければならない手続きがあります。
それは改葬、もしくは墓じまいです。
現在いきている自分、もしくは身近な家族のために購入するだけならば納骨堂の契約をするだけですが、すでにお墓に入っている方の遺骨と一緒に納骨堂に埋葬してほしい方、自分は納骨堂に入るので後のお墓の管理ができなくなるので、これを機械に墓じまいをしてしまおうという方の方が多いと思います。
現在、霊園にお墓をお持ちの方は、*以下の手順で改葬・墓じまいを行う必要があります。見ていきましょう

①改葬先になる墓地・納骨堂と契約し、「受入証明書(墓地使用許可書)」を受け取る。
②現在の墓地がある役所から、故人ひとりにつき1枚ずつ「改葬許可申請書」を発行してもらう。
③「改葬許可申請書」に必要事項を記入し、現在の墓地の管理者から「埋蔵証明書」を発行してもらう。
④現在の墓地がある役場へ「受入証明書」「改葬許可申請書」「埋蔵証明書」の3種類を提出する。受理されると「改葬許可証」が発行される。
⑤現在の墓地の管理者に「改葬許可証」を提示し、遺骨を取り出し(閉眼法要)、墓地の整備を行う。
⑥新しい墓地・納骨堂に「改葬許可証」を提出し、納骨する。

非常に煩雑な内容となっていますが、なかでも最も大変なのは②の手順であるという声が多いようです。何故ならば、「改葬許可申請書」は、各故人毎に必要なものなので、そのお墓に眠っている方すべての生年月日・死亡年月日・本籍地といった諸情報が必要であるため、昔の方ほど調査するのが非常に難しくなるからです。
いざ改葬・墓じまいとなった時に慌てて調べると、精神的な負担が大きくなるばかりです。余裕がある時に調べておき、いざという時に備えておきたいですね。
また、骨壷をカロートから取り出す際、骨壷から遺骨が散らばってしまっていたり、湿気を含んでしまい良くないコンディションになってしまっていてショックを受けてしまう方も少なくないようです。霊園のお墓は屋外にあるため、震災や水害の影響を受けやすく、カロートに安置していても必ずしも安全ではないのが現実です。
その点、納骨堂なら屋内で温度・湿度管理も万全、清潔な空間のなかに遺骨を収めることができます。この世からいなくなっても、そんな風に眠りにつくことができたらどんなにか安心できるでしょうか。納骨堂が選ばれる理由は、こんなところにもあるのではないでしょうか。

*井上理律子『いまどきの納骨堂 変わりゆく供養とお墓のカタチ』(小学館、2018年10月発行、参照)「第1章 墓じまいと本音」を大幅に引用しつつ、部分的に簡略化して記載致しました。

広がる埋葬方法の選択肢④納骨堂

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現代の私たちが持っている「お墓」や「埋葬」のイメージを大きく変えたもののひとつが納骨堂です。
もともとは火葬された遺骨を一時保管するための設備でしたが、現在は大きく役割を変え、納骨堂自体をお墓として運用する動きが活発化しています。
現代のライフスタイルに合わせやすいということで、近年ますます人気が高まっていく納骨堂での埋葬。以前の記事では納骨堂の種類や管理形態についてご紹介しましたので、今回はなぜ納骨堂という埋葬方法に人気があるかをご紹介します。

なぜ納骨堂を選ぶのか 〜納骨堂ならではのメリットとは?

これまで様々な種類の埋葬方法をご紹介してきましたが、なかでも納骨堂は最もよく選ばれる埋葬方法です。
納骨堂が従来のお墓と最も異なっているのは、屋内で「お墓まいり」ができるということです。空調設備が整った建物のなかで天候を気にせずにお参りができますし、お墓の掃除が不要なので荷物もほとんど必要ありません。納骨堂は、忙しい現代人のライフスタイルに合致した、まさに時代に求められているお墓まいりを可能にしてくれていると言えます。
また、ほとんどの納骨堂は宗教・宗派を問いません。神道やキリスト教徒の方を受け入れてくれるところもあります。すべての人々に平等に開かれた埋葬方法であるというのは、多様性を認め合いたい現代社会に特に必要とされる考え方です。
これらをまとめてみると、納骨堂の一番の魅力は個を尊重してくれる埋葬方法だということです。納骨堂は基本的にカロートに比べて骨壷の収容面積が少ないため、少人数分の納骨しか対応できません。逆に言えば、単身世代や夫婦のみのお墓を考えている方には非常に身近に感じられる埋葬方法なのです。
また、納骨堂は最終的に永代供養に切り替わる契約形態となっており、お墓の後継者に悩む方の精神的ストレスを減らしてくれるのも、選ばれる大きな理由のひとつとなっています。

自動搬送式納骨堂が選ばれる理由

納骨堂には、主に3種類の形態のものが存在します。
コンパクトかつリーズナブルな面が魅力のロッカー式納骨堂
「お参りをする」というお墓らしさをしっかりと演出してくれる仏壇式納骨堂
そして今非常に需要が高いのが、しっかりした設備・機能で管理された自動搬送式納骨堂です。
まず納骨堂に到着すると、受付でICカードを1枚渡されます。お参りで必要なのはこれだけです。
カードをタッチパネルにかざすと、「厨子(ずし)」と呼ばれる骨壷を納めた箱が、個別に仕切られた参拝室に機械によって運ばれてきます。この厨子は、コンピュータで制御された大きな保管庫の中に入っています。厨子が運ばれてくると、立体駐車場のような機械式で参拝室に墓石が現れ、お参りできるという仕組みです。完全ではありませんが、参拝室内には仕切りがいくつか設けられており、各人・各世帯ごとにプライバシーを確保した上でのお参りを可能にしています。
厨子がどのような仕組みで運ばれるのでしょうか? ここで採用されているのは、工場や物流センターでおなじみの「ピッキング」というシステムを基に開発されたものです。商品や部品などをコンピュータの指示通りに取り出し、決められた場所に運び出すという構造になっています。当然大きなキャパシティを必要としますが、裏を返せば、それだけ多くの骨壷を収蔵できるということ。収蔵庫を地下に設けて、参拝室を地上階に設けることでスペース不足を解消できるため、都内のなかでも非常に利便性の高い場所に建てられるため、参拝しやすいのも大きなメリットです。
限られたスペースを有効活用するため、通常のお参りでお供えをするお花やお線香、故人の好きなものといったものは置くことができません。ですが、これも裏を返せば、手ぶらでお墓参りをしても構わないということです。仕事帰り、買い物帰りにコーヒーを片手にお墓参り。そんな方も増えているようです。
お墓まいりは本来、お盆やお彼岸だけでなく、いつ行っても構わないもの。だからこそ、こうしてカジュアルにお参りできる自動搬送式納骨堂は、本来のお墓まいりのあり方を私たちに示してくれているような気がします。

改葬・墓じまいについて

実際に納骨堂への埋葬を決めた場合、多くの方が行わなければならない手続きがあります。
それは改葬、もしくは墓じまいです。
現在いきている自分、もしくは身近な家族のために購入するだけならば納骨堂の契約をするだけですが、すでにお墓に入っている方の遺骨と一緒に納骨堂に埋葬してほしい方、自分は納骨堂に入るので後のお墓の管理ができなくなるので、これを機械に墓じまいをしてしまおうという方の方が多いと思います。
現在、霊園にお墓をお持ちの方は、*以下の手順で改葬・墓じまいを行う必要があります。見ていきましょう

①改葬先になる墓地・納骨堂と契約し、「受入証明書(墓地使用許可書)」を受け取る。
②現在の墓地がある役所から、故人ひとりにつき1枚ずつ「改葬許可申請書」を発行してもらう。
③「改葬許可申請書」に必要事項を記入し、現在の墓地の管理者から「埋蔵証明書」を発行してもらう。
④現在の墓地がある役場へ「受入証明書」「改葬許可申請書」「埋蔵証明書」の3種類を提出する。受理されると「改葬許可証」が発行される。
⑤現在の墓地の管理者に「改葬許可証」を提示し、遺骨を取り出し(閉眼法要)、墓地の整備を行う。
⑥新しい墓地・納骨堂に「改葬許可証」を提出し、納骨する。

非常に煩雑な内容となっていますが、なかでも最も大変なのは②の手順であるという声が多いようです。何故ならば、「改葬許可申請書」は、各故人毎に必要なものなので、そのお墓に眠っている方すべての生年月日・死亡年月日・本籍地といった諸情報が必要であるため、昔の方ほど調査するのが非常に難しくなるからです。
いざ改葬・墓じまいとなった時に慌てて調べると、精神的な負担が大きくなるばかりです。余裕がある時に調べておき、いざという時に備えておきたいですね。
また、骨壷をカロートから取り出す際、骨壷から遺骨が散らばってしまっていたり、湿気を含んでしまい良くないコンディションになってしまっていてショックを受けてしまう方も少なくないようです。霊園のお墓は屋外にあるため、震災や水害の影響を受けやすく、カロートに安置していても必ずしも安全ではないのが現実です。
その点、納骨堂なら屋内で温度・湿度管理も万全、清潔な空間のなかに遺骨を収めることができます。この世からいなくなっても、そんな風に眠りにつくことができたらどんなにか安心できるでしょうか。納骨堂が選ばれる理由は、こんなところにもあるのではないでしょうか。

*井上理律子『いまどきの納骨堂 変わりゆく供養とお墓のカタチ』(小学館、2018年10月発行、参照)「第1章 墓じまいと本音」を大幅に引用しつつ、部分的に簡略化して記載致しました。