累代のお墓を修理するには

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dbe68a0a09ebb696e68df145a4cfd600_sお墓は石造りですから、建ててしまえばメンテナンスフリー……だと思っているなら、残念ながらそれは大きな間違いと言わざるを得ません。墓石は屋外に建っていますから、日本の高温多湿で風雨の強い環境に常にさらされます。近年主に使われている御影石(花崗岩)は比較的風雨に強いのですが、明治〜昭和初期までよく使われていたのは大谷石は、凝灰岩の一種。これは地質学的にいうと堆積岩で、水の中に火山灰が溜まり、長い年月の中で圧縮されて岩になったものです。その成り立ちから、軽量で加工には向いていますが、水分を多く含んでいるので長年雨風にさらされると「溶ける」ことがあります。こうなってしまうと、墓石が欠けたり表面に刻まれた文字が読みづらくなってしまいます。また墓石だけでなく、墓域も地盤の緩みによって傾いたりしてしまうことがあり、整備が必要なこともあるのです。

まずは外見から、「墓石の研磨」

pixta_7390764_S建てられたばかりのお墓は、そのつやつやした輝きで霊園の中でも特に目立ちます。御影石は大谷石などと比べれば劣化は遅いのですが、それでも表面のつやは徐々に失われてしまうもの。そこで、お手入れをしておすすめしたいのが墓石の洗浄や研磨です。日々のお手入れとして墓石は水洗いしたり磨いたりしますが、やはりプロの手にかかれば見違えるほどきれいになります。
墓石の洗浄は5,000〜1万円、墓石の研磨は20〜30万円ほどです。洗浄はともかく研磨はあまり頻繁にする価格帯ではないでしょうから、例えば「祖父の十三回忌に合わせて……」など、節目節目に行ってみてはいかがでしょうか。研磨に合わせて、彫り込んだ文字の墨入れを改めて行うと、外見上はほぼ新品という雰囲気になりますよ。どのようなお手入れができるか、石材店にご相談ください。

一番多い補修は「墓石の目地」

さて、お墓の補修でもっとも多いのは目地の修復です。竿石と台石は、ただ石を重ねてあるわけではもちろんなく、接着剤で隙間を埋めてあります。石と石の隙間を「目地」といい、そこを埋めるものが「目地材」です。
目地材として、古くはモルタルを使っていました。モルタルとは砂とセメントに水を加えて練ったもので、以前は壁材としても使われていました。日常目にすることは少ないのですが、昔の映画やドラマなどでレンガを積む時に、コテでレンガとレンガの間を埋めているところを見たことがありませんか。あのペースト状のものがモルタルです。モルタルの登場以前は、レンガには漆喰を目地材として使っていました。
モルタルはどうしても経年劣化を起こし、ひび割れたり欠けたりしてしまいます。墓石の隙間を埋める目地に割れや欠けができると、そこから雨水が入り込んでカビたり、石材自体にダメージを与えたり、安定性を失ってグラつきが出る場合があります。そのような事態を防ぐために、目地の補修は欠かせないのです。
近年、墓石の目地にはシリコン系のコーキング剤を使うことが増えてきました。これは防水性が高く劣化が少ないだけでなく、耐震性や耐衝撃性にも優れており、仮に地震に遭遇した場合でも墓石が倒れにくくなります。
目地の補修は、まず劣化した目地材を砕いて取り除き、改めて新しい目地材を充填します。個人で行う方もおられますが、やはりプロである石材店にご依頼いただくのが万全です。

目地の補修だけなら、費用は5万円ほどで可能です。

ずれた墓石をどうするか

a51e43d31efa56b6eff306441dd2e421_s目地の補修をせずに長い時間が経ってしまった場合、また地震や地盤のゆるみなどがあった場合は墓石がずれたり、傾いてしまうことがあります。台石から傾いてしまっている場合は大幅な手入れが必要ですが、竿石だけがずれている場合はそこだけ修繕することも可能です。その場合、まず竿石を外し、台石との接合面をきれいに研磨します。目地が傷んでしまっていた場合は雨風が吹き込んで汚れやカビ、苔がついてしまっている場合がありますし、また墓石自体も水を吸って剥がれたり欠けたりしている場合があります。これを改めて研磨して、キレイな平面にするのです。そして、新たに目地材としてシリコン系コーキング剤を使い、しっかり竿石を固定します。
ここまでの作業で、およそ10〜30万円程度でしょうか。

お墓の土台から傾きやずれがある場合は対処が大変です。もともと霊園自体の地盤が軟弱だった場合、大雨や土砂崩れの影響で地盤に含まれる水分が大幅に増え、その影響が出た場合などさまざまなケースが考えられます。意外に多いのが、霊園内に植樹されている木の根が影響しているケース。地下にどれだけ根が張っているかはわかりませんから、墓石が傾いたり敷石が盛り上がったりして初めて分かるケースがほとんどです。地上からは気がつかないうちに、納骨しようとカロートを開いてみたら木の根が張っていた……というケースもあるといいます。
このような場合は、お墓をいったん全て解体し、墓所内をきれいに地ならしする必要があります。さらに、場合によっては基礎として砕石を敷き、鉄筋を入れ、コンクリートを流し入れるなどの工事が有効なこともあります。ここまで手を入れると、費用的にはそれなりになりますが、それによって購える安心は段違い。ぜひご検討ください。
基礎から工事となると、やはり100〜200万円程度の予算は見ていただく必要があります。

お墓を補修しないとどうなるか

お墓を修繕しないとどうなるか、もちろんお墓が痛む……それは当然です。問題なのは、補修をしなかったお墓が倒れたり崩れたりして、他のお墓や居合わせた人に被害を与えた場合です。これは大きな問題になってしまいます。たとえば阪神淡路大震災や東日本大震災のような大きな地震の場合は、これは避けられなかったこととして責任を問われることはありません。しかし、そこまで大きな地震ではないのにお墓が崩れてしまった場合、つまり補修をしなかったために他者に被害を与えたと認定されてしまった場合は、その損害はすべて賠償する責任が発生しますし、原状回復も行わなければなりません。このような状態を避けるためにも、お墓には手入れを欠かさず、またお参りをして様子は見ておかなければいけません。遠隔地にお墓があって頻繁なお守りやお参りが難しい場合は、改葬(※リンク)することも考えておきましょう。

ここまでお話してきたのは、住宅で言えばリフォームにあたること。もしお墓があまりにも古かったり、痛みが激しかったりした場合には、新たに建てなおす必要も出てきます。この場合、かかる費用や手続きなどはお墓を新たに入手する場合と同じです。また、古いお墓に納められているお骨を新しいお墓に納め直すわけですから、改葬と同様の手続きも必要になります。通常のお墓の新規建立と改葬、それにまつわる手続き・費用・法要、さらに古いお墓の撤去費用も発生します。お墓も一種の不動産といえますが、やはり長い時間が経つと維持するための費用はどうしてもかかってしまうものですね。

累代のお墓を修理するには

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dbe68a0a09ebb696e68df145a4cfd600_sお墓は石造りですから、建ててしまえばメンテナンスフリー……だと思っているなら、残念ながらそれは大きな間違いと言わざるを得ません。墓石は屋外に建っていますから、日本の高温多湿で風雨の強い環境に常にさらされます。近年主に使われている御影石(花崗岩)は比較的風雨に強いのですが、明治〜昭和初期までよく使われていたのは大谷石は、凝灰岩の一種。これは地質学的にいうと堆積岩で、水の中に火山灰が溜まり、長い年月の中で圧縮されて岩になったものです。その成り立ちから、軽量で加工には向いていますが、水分を多く含んでいるので長年雨風にさらされると「溶ける」ことがあります。こうなってしまうと、墓石が欠けたり表面に刻まれた文字が読みづらくなってしまいます。また墓石だけでなく、墓域も地盤の緩みによって傾いたりしてしまうことがあり、整備が必要なこともあるのです。

まずは外見から、「墓石の研磨」

pixta_7390764_S建てられたばかりのお墓は、そのつやつやした輝きで霊園の中でも特に目立ちます。御影石は大谷石などと比べれば劣化は遅いのですが、それでも表面のつやは徐々に失われてしまうもの。そこで、お手入れをしておすすめしたいのが墓石の洗浄や研磨です。日々のお手入れとして墓石は水洗いしたり磨いたりしますが、やはりプロの手にかかれば見違えるほどきれいになります。
墓石の洗浄は5,000〜1万円、墓石の研磨は20〜30万円ほどです。洗浄はともかく研磨はあまり頻繁にする価格帯ではないでしょうから、例えば「祖父の十三回忌に合わせて……」など、節目節目に行ってみてはいかがでしょうか。研磨に合わせて、彫り込んだ文字の墨入れを改めて行うと、外見上はほぼ新品という雰囲気になりますよ。どのようなお手入れができるか、石材店にご相談ください。

一番多い補修は「墓石の目地」

さて、お墓の補修でもっとも多いのは目地の修復です。竿石と台石は、ただ石を重ねてあるわけではもちろんなく、接着剤で隙間を埋めてあります。石と石の隙間を「目地」といい、そこを埋めるものが「目地材」です。
目地材として、古くはモルタルを使っていました。モルタルとは砂とセメントに水を加えて練ったもので、以前は壁材としても使われていました。日常目にすることは少ないのですが、昔の映画やドラマなどでレンガを積む時に、コテでレンガとレンガの間を埋めているところを見たことがありませんか。あのペースト状のものがモルタルです。モルタルの登場以前は、レンガには漆喰を目地材として使っていました。
モルタルはどうしても経年劣化を起こし、ひび割れたり欠けたりしてしまいます。墓石の隙間を埋める目地に割れや欠けができると、そこから雨水が入り込んでカビたり、石材自体にダメージを与えたり、安定性を失ってグラつきが出る場合があります。そのような事態を防ぐために、目地の補修は欠かせないのです。
近年、墓石の目地にはシリコン系のコーキング剤を使うことが増えてきました。これは防水性が高く劣化が少ないだけでなく、耐震性や耐衝撃性にも優れており、仮に地震に遭遇した場合でも墓石が倒れにくくなります。
目地の補修は、まず劣化した目地材を砕いて取り除き、改めて新しい目地材を充填します。個人で行う方もおられますが、やはりプロである石材店にご依頼いただくのが万全です。

目地の補修だけなら、費用は5万円ほどで可能です。

ずれた墓石をどうするか

a51e43d31efa56b6eff306441dd2e421_s目地の補修をせずに長い時間が経ってしまった場合、また地震や地盤のゆるみなどがあった場合は墓石がずれたり、傾いてしまうことがあります。台石から傾いてしまっている場合は大幅な手入れが必要ですが、竿石だけがずれている場合はそこだけ修繕することも可能です。その場合、まず竿石を外し、台石との接合面をきれいに研磨します。目地が傷んでしまっていた場合は雨風が吹き込んで汚れやカビ、苔がついてしまっている場合がありますし、また墓石自体も水を吸って剥がれたり欠けたりしている場合があります。これを改めて研磨して、キレイな平面にするのです。そして、新たに目地材としてシリコン系コーキング剤を使い、しっかり竿石を固定します。
ここまでの作業で、およそ10〜30万円程度でしょうか。

お墓の土台から傾きやずれがある場合は対処が大変です。もともと霊園自体の地盤が軟弱だった場合、大雨や土砂崩れの影響で地盤に含まれる水分が大幅に増え、その影響が出た場合などさまざまなケースが考えられます。意外に多いのが、霊園内に植樹されている木の根が影響しているケース。地下にどれだけ根が張っているかはわかりませんから、墓石が傾いたり敷石が盛り上がったりして初めて分かるケースがほとんどです。地上からは気がつかないうちに、納骨しようとカロートを開いてみたら木の根が張っていた……というケースもあるといいます。
このような場合は、お墓をいったん全て解体し、墓所内をきれいに地ならしする必要があります。さらに、場合によっては基礎として砕石を敷き、鉄筋を入れ、コンクリートを流し入れるなどの工事が有効なこともあります。ここまで手を入れると、費用的にはそれなりになりますが、それによって購える安心は段違い。ぜひご検討ください。
基礎から工事となると、やはり100〜200万円程度の予算は見ていただく必要があります。

お墓を補修しないとどうなるか

お墓を修繕しないとどうなるか、もちろんお墓が痛む……それは当然です。問題なのは、補修をしなかったお墓が倒れたり崩れたりして、他のお墓や居合わせた人に被害を与えた場合です。これは大きな問題になってしまいます。たとえば阪神淡路大震災や東日本大震災のような大きな地震の場合は、これは避けられなかったこととして責任を問われることはありません。しかし、そこまで大きな地震ではないのにお墓が崩れてしまった場合、つまり補修をしなかったために他者に被害を与えたと認定されてしまった場合は、その損害はすべて賠償する責任が発生しますし、原状回復も行わなければなりません。このような状態を避けるためにも、お墓には手入れを欠かさず、またお参りをして様子は見ておかなければいけません。遠隔地にお墓があって頻繁なお守りやお参りが難しい場合は、改葬(※リンク)することも考えておきましょう。

ここまでお話してきたのは、住宅で言えばリフォームにあたること。もしお墓があまりにも古かったり、痛みが激しかったりした場合には、新たに建てなおす必要も出てきます。この場合、かかる費用や手続きなどはお墓を新たに入手する場合と同じです。また、古いお墓に納められているお骨を新しいお墓に納め直すわけですから、改葬と同様の手続きも必要になります。通常のお墓の新規建立と改葬、それにまつわる手続き・費用・法要、さらに古いお墓の撤去費用も発生します。お墓も一種の不動産といえますが、やはり長い時間が経つと維持するための費用はどうしてもかかってしまうものですね。